34「エルフの女王と会いました」②
「――え? いらないんですか!? エルフの女王なんですけど?」
「いえ、そういうのいいんでー」
サミュエル・シャイトは妻、婚約者は多いが、ちゃんと恋愛し、愛情を持って結婚したい派である。
謝罪を兼ねて身を捧げると言われて、「ありがとうございます!」と喜ぶような趣味はない。
「別にそちらの態度を気にしていませんから、口調なんかも元に戻していただいて結構ですよ」
「……さすがダフネの選んだ方じゃな。――てっきり、可愛らしい男の子だから手を出されたと思っておったが」
「今なんて言った!?」
「いえいえ、なんでも。しかし、本当によろしいのかのう?」
「ええ、気にするほどではありませんでしたし」
「いやいや、そうではなくての」
「えっと、じゃあなにを?」
「エルフの女王であり、清い身体を二千年以上守ってきたわしを嫁にせんでもいいのか?」
「せんでもいいから!」
出かけるたびに嫁や婚約者を増やすと、ただでさえ好色であるという噂が流れて困っているのに、否定しづらくなってしまう。
サムがはっきり断ると、エステルは残念そうに肩を落とした。
「そうか。なかなか可愛らしい顔をしておるし、レプシー様の後継者なら良き物件かと思ったんじゃが。いずれどこかで縁があれば、そのときにでも」
「……そんな日が来れば、ですが」
とりあえず、エルフの女王は面倒なので話を適当に相手にすることに決めた。
今回は、ダフネの里帰りでも、観光でもなく、あくまでもダークエルフと会うことだ。なぜエルフに話を通すのかわからないが、そちらの話を早く進めたい。
エルフの里のまともな部分を観光するのはその後でいいのだ。
「ダフネよ」
顔をあげたエルフたちのひとり、ダフネの父が娘の名を呼んだ。
「はい」
「……お前が魔王様とどのような関係でも文句は言わない。だが、一度、顔を出しなさい。お母さんも会いたがっている」
「……考えておきます」
やはり淡々とした父と娘の言葉のやりとりに、サムは心配になってダフネを見る。彼女はなんでもないとばかりに笑顔を浮かべて小さく首を横に振った。
無理に事情を聞こうとは思わない。ダフネが話したくなったら真剣に耳を傾ければいいのだから。
「さてと、いろいろ慌ただしくしてしまったんじゃが、魔王様方はなにをしにエルフの里にきたのかのう? 観光ですかな?」
「――ダークエルフに会うための許可を」
友也が応え、ようやく本来の話に軌道が戻ったと安心するサムと薫子。
しかし、エルフたちは言葉を失っていた。
女王エステルに至っては、反射的に立ち上がっていた。
「本気か!? いや、正気か!?」
「本気ですし、正気です」
「遠藤友也殿……あなたはかつて切り干し大根のように乾涸びてしまったのをお忘れか!」
「なーにがあったんだよー」
「……この世界にも切り干し大根ってあるんだ」
エステルたちエルフは真顔だったが、言葉からさっするにきっとしょうもないことだとサムは推測した。
薫子も少し斜めのことで驚いているようだ。
そんなサムと薫子が見えていないのか、緊張した顔をして友也が頷く。
「はい。僕たちはダークエルフと会わなければならないんです。ご許可をください!」
〜〜あとがき〜〜
別にダークエルフさんが搾り取ってくる(意味深)わけではないです。
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