66「友子の危機と出会いです」④
(馬鹿な!? マクナマラ・ショーンの妹、そして甥と姪ならば、カリアン・ショーンの娘と孫になるだろう!? スカイ王国に? この王都にいるのか!?)
友子が調べた限り、カリアン・ショーンに血のつながった娘はひとりしかいない。
(父親の養女を妹と言っているのか? いや、だが)
思考がまとまらず、混乱が大きくなっていくばかりだ。
このままでは埒があかないので、友子は現状を利用して問い続ける。
「あの、騎士様は」
「マクナマラで構わない。騎士と言っても、戦うことしかできない女だ。偉ぶるつもりはない」
「で、では、マクナマラ様」
「うむ」
「妹さんにお会いに来たとおっしゃられていましたが、わざわざ外国から来るなんて仲がよろしいのですね」
友子のさりげない疑問に、マクナマラは表情に翳りを見せた。
「マクナマラ様?」
「……仲がいい、か。幼い頃はそうだった。私と同じ、母譲りの黒髪で、少々大人しい子だった。だが、今は私のことを覚えているかどうかさえ危うい」
「どういうことですか?」
黒髪はスカイ王国では珍しい。
幾人の顔が友也の脳裏に浮かんだ。
「幼い頃に生き別れてしまったのだ」
「……失礼なことをお聞きして申し訳ございません」
「いや、構わない。どこにでもありふれた良くある話だ。だが、私は幸せなほうだ。魔族との戦いで妹は死んだと思っていたが、実は生きているという。あまり幸福な生い立ちをしていなかったが、今は子供と夫がいるそうだ」
笑顔を保ちながら、友子は内心で納得した。
初耳なことが多いが、死んだと思っていたのなら調べても出てこなかったのは無理もない。
ただ、なぜ今になってマクナマラの妹の存在が明らかになったのか不思議だ。
「それはよかったです。お尋ねしていいのか迷いますが、妹さんの存在はいつからご存じでしたか?」
「実を言うと、生きているのではないかという推測はずっと以前からあった。ちゃんと生存を確かめたのは、恥ずかしながら先日のことだ」
「……可能性があったのに探さなかったのですか?」
「私の国は、少々面倒な国でな。いい国なのは間違いないのだが、国外で生まれ育つと価値観の違いで苦労してしまう。ならば、生きていてくれさえすればそれでいいと思っていた。だが、結局、一目会いたくて来てしまった」
友子は驚いた。
神聖ディザイア国で仮にも聖騎士の地位にいるマクナマラ、まさか自国を「面倒な国」と言うとは思いもしなかった。
(……まさか、彼女は女神を盲信しているわけではないのですか?)
友子は、目に見えない女神などを信じない。
転生する際、実際に女神に会っている身となれば、本当にいるかどうかも怪しく、いても人間しか愛さないような「俗っぽい」女神に用はない。
信仰は自由だが、その信仰のせいで駆逐された魔族たちはたまったものではないだろう。
万が一だが、マクナマラは女神を盲信していないのではないかと考えてしまう。
(しかし、どう切り出すべきか。順番にひとつずつ、解決しましょう。まず、彼女の縁者がなにものか知るところからですね)
気持ちを切り替え、友子はあくまでも親切を装って尋ねた。
「ご苦労があるのですね。ところで、マクナマラ様のお会いに来た方は、どなたですか? 私の知っている方であれば、ご案内します」
「おお、それは助かる。私の妹の名は、メラニー」
「――え?」
「今は、メラニー・ティーリングという」
「……ば、馬鹿な」
目を見開く友子に気づいたマクナマラが、肩をすくめる。
「やはり知っているようだな。メラニーはさておき、息子のサミュエル・シャイトは夢偉人のようだからな」
「……まさか、マクナマラ様は」
「うむ。メラニー・ティーリングの姉であり、サミュエル・シャイトの伯母だ」
〜〜あとがき〜〜
もう少し続きますわ!
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