65「友子の危機と出会いです」③
(マクナマラ・ショーンですって!? カリアン・ショーンの娘じゃないですか! しかも、神聖ディザイア国に十人しかいない聖騎士がなぜスカイ王国に!?)
神聖ディザイア国のカリアン・ショーンと先日邂逅してから、彼や彼の国のことは調べてある。
マクナマラ・ショーンも名前が上がっていた。
もともと神聖ディザイア国の聖騎士は魔族と戦うために、何度も投下されているので存在は誰もが知っていたが、名前と枢機卿との関係まで以前は知らなかった。
最近になって、ようやく名がわかったところに、まさか目の前に現れるとは友也も想像していなかった。
(殺しますか?)
今後のためを考えると、ひとりでも戦力を削っておきたい。
聖騎士とは言え、所詮は人間だ。
戦えば勝てる自信があるし、現状なら殺意も敵意も把握されずに彼女の胸を貫くこともできる。
友也くらいになれば、呼吸するよう自然に命は奪える。
(戦力をひとり削っても、そのせいで大きな戦争に発展すると困る。スカイ王国は人間の国だが、あの狂信者たちなら明確な敵対行動を取れば何をするのかわからない)
狂った人間、狂った魔族なら幾人も見てきたので行動も把握できる。だが、狂信者だけは理解が及ばない。
彼らは突如として、範疇を超えた言動を普通に行うのだ。それが怖い。
(懐柔……できれば都合がいいのですが……無理でしょうね。神聖ディザイア国は生まれながらに魔族は悪として教えられる。いわば刷り込みです。よほど劇的ななにかが起きない限り、変わることなどできない)
友子としても、神聖ディザイア国の人間をすべて皆殺しにしようなどとは考えていない。
敵対してくるのならば容赦するつもりはないが、それでも一般市民にまで手を出そうとは思わない。
魔王となった友子がすべきことは、自分が生きている間に女神が復活すれば殺すこと、神聖ディザイア国を潰すこと、人間と魔族を共存させること、素敵な結婚をすること、ラッキースケベを取り除くことだ。
そのためなら、どんなことでもする覚悟はある。
「あ、あの」
「待て、移動中に口を開くと舌を噛む。どこか静かな場所に移動しよう。話はそれからでもいい」
あくまでも友子のことを気遣う言葉をかけてくれるマクナマラに、本当に狂信者の国の聖騎士かと疑ってしまった。
しばらく屋根の上を移動すると、神殿の裏手に着地する。
「ここならば大丈夫だろう。……偽りの女神を祀る神殿は忌々しいが、あのよくわからない女性たちから身を隠すにちょうどいい」
「ありがとうございます」
「礼なら不要だ。騎士として困っている人間は助ける、当たり前のことだ」
(人間じゃないんですけどねぇ。しかし、魔族だとわかっていないようですね。聖力を得るには魔力を捨てるといいますが、その弊害でしょうか?)
魔力探知は、魔法使いでも得意不得意があるのでなんともいえないが、どちらにせよ自分の正体が気づかれていないのはいいことだと思った。
「それでも、助かりました。どうもありがとうございます」
「うむ。礼儀のいい子は好きだ」
「ところで、王都では見かけないお顔ですが、国外の方ですか?」
「ああ。遠い国から来た。大陸西側も、存外いいところだ。足早にスカイ王国に来たことをもったいなかったと思っている。機会があれば各地を見て回りたい」
「スカイ王国にはどのようなご用で? あ、観光ですか?」
普通の少女だと思われている現状を利用し、情報を得ようと質問を重ねる。
マクナマラは嫌な顔ひとつせず、友子の質問に答えていく。
「君は、この国の王都に住んでいるのかな?」
「はい」
「よかった。ちょうどいい、できれば案内を頼みたい。私は、ここスカイ王国に暮らす、妹と甥と姪に会いにきたのだ」
「――っ」
想像さえしていなかったマクナマラの言葉に、友子はかつてない驚愕を露わにした。
〜〜あとがき〜〜
友子ちゃんびっくりですわ!
※紛らわしかったので、間話から本編としました。
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