4「重大報告です」①





 ダフネと一緒に食堂に着くと、リーゼたちが気づき駆け寄ってきてくれた。


「サム!」


 リーゼ、アリシア、ステラ、花蓮、水樹、フランに心配かけたことを謝罪して抱きしめる。

 オフェーリアがついリーゼたちに続こうと椅子から立ち上がったが、赤面して椅子に座り直していたのをサムは見逃さなかった。


「心配かけてすみません。ちょっと疲れてしまっただけですから、心配しないでくださいね」

「ならよかったわ。でもせめて食事くらいしてね」


 リーゼが心配と嗜めるようか声を出すと、アリシアたちがうんうんと同意するように肯いた。

 サムは、「すみません」ともう一度謝罪した。

 昨晩は、不思議と眠たくてしかたがなかったが、その理由はわからない。

 聖力にあてられたのか、それとも成長期なのか。魔王に成長期があるのかわからないが、背が伸びるのは大歓迎だ。


「おはようございます、サム」

「おはよう、友也」

「……元気そうで安心しましたよ。ぱっと見た感じ、異常はないようですね」

「変態魔王君、僕の妻を視姦しないでいただきたいね」

「してません!」


 ウォーカー伯爵家の食堂で、我が家のようにお茶を飲んでいる友也とギュンターの仲のいい掛け合いが響く。

 サムは肩を竦め、リーゼたちは苦笑した。


「他のみんなは?」


 サムの疑問に、ステラが答えた。


「エヴァンジェリン様はお仕事です。フランベルジュ様は、今もお部屋でおやすみです。ジェーン様、ゾーイ様はご用事があるようでカル様の転移魔法で一時的にお戻りになりました。ボーウッド様はアーリー様とご一緒に街のパトロールをしております」

「ロボちゃんは、お部屋でのんびりしていますわ」

「竜王様たちは観光中です。灼熱竜様はまだ帰ってきておりませんが、子竜たちは元気です。メルシーちゃんがいいお姉さんをしてくださっていますので心配はありません」

「ありがとう」


 それぞれ忙しいようだ。

 ゾーイとは最近、交換日記を始めているので彼女の日々を知っているので、顔を合わせずとも安心だ。つい先日はゾーイに即発されたのがジェーンも交換日記を求めてきたので応じた。

 ふたりとも達筆なので、サムはこっそり字を綺麗に書く練習をしようと思っている。

 カルは相変わらず自由だ。部屋に勝手に入っていることもある。気さくな友人という感じがして心地よさを覚えている。彼女は結婚すると息巻いているが、本当にその気があるのかと疑問に思うこともある。


「おおっ、みんな揃っているな」


 サムも椅子に座り、暖かいスープを飲んでいるとジョナサンとグレイスが現れる。

 かつては立ち上がり礼をしたが、今では家族なのでその必要はなく、ふたりもサムに求めていない。

 席についたジョナサンとグレイスがサムを見て、笑顔を浮かべた。


「昨晩は疲れていたようだが、顔色もいいようだね」

「安心しましたよ、サム」

「ご心配おかけしました。すっかり元気です」

「ならばよかった。では、大事な話をしたい。食事の手を止めずに構わないので聞いてほしい」


 ジョナサンがやや緊張した様子で、声を改めたので、サムは食事する手を止めて背筋を伸ばした。

 リーゼたちも同様だ。

 いつも通りなのは、友也とギュンターだけ。


(――神聖ディザイア国についてなにか知っているのかな?)


 サムもどのような話が飛び出てくるのか待っていると、ジョナサンが一度咳払いをしてからゆっくり口を開いた。




「――妻が、グレイスが妊娠した」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る