25「交流を深めます」②





「も、申し訳ございません! ただ、その後学のために」

「後学って」


 オフェーリアは謝罪してくれたが、股間を見ることがどのように今後につながるのかサムにはいまいち理解ができなかった。


「とてもよい勉強になりました。まるで大蛇のように……」

「ストーップ! 説明しなくていいですから!」


 ジェーンに至っては説明しようとするので、慌てて止めた。

 サムにだって羞恥心はある。

 リーゼたちに見られることだって、まだ慣れていないし、恥ずかしくてたまらないのに、先日顔を合わせたばかりの人が股間を見ていたという事実に脳が沸騰しそうだ。


「わ、忘れてください。俺も忘れますから」


 懇願するように頼んでみると、「無理です!」とオフェーリアが叫んだ。


「お父様とは全然違うこのような……」


 手で、大きさを表そうとするオフェーリア。

 これにはリーゼたちも苦笑いだ。


「わ、わたくし、サミュエル様のお顔を直視できませんわ! これにて失礼致します!」


 深々と頭を下げたオフェーリアは脱兎の如く逃げ出してしまった。

 これにはサムも言葉がない。

 ステラに言われて、オフェーリアと会話をしようと思っていたのだが、その前に逃げられてしまった。

 困った顔をしてステラを見つめると、彼女もサム同様に困惑していた。


「……きっと時間が解決してくれます」

「そうだといいなぁ」


 年下の少女に股間を見られていた事実と、大人びていたオフェーリアの初心な反応に、サムはどうしていいのかわからず、ステラの言うように時間が解決してくれることを祈ることにした。


「おい、サム! しみったれたツラしてないで、こっちで付き合えよ」

「俺、未成年なんで」

「――は? この国は成人前に酒を飲むことはできないのか? 待て待て、魔王なんだからそういうのに囚われずにだな」


 成人まであと一ヶ月ほどのサムだが、根が日本人なこともあり、成人前にお酒を飲むことになんとなく抵抗があった。

 ダグラスはそんなサムに笑みを深める。


「やはりサムは面白い男だ。強い力を持ちながら奢らず、魔王になりながら人の枠で生きようとしている。その精神のあり方が、俺にはわからない。悪い意味ではないぞ。いい意味で、わからない奴だ」

「サム! 今日は許す! 存分に飲んで呑まれるといい!」

「呑まれちゃ駄目ですって」


 胃痛から解放されたジョナサンだったが、今度は急性アルコール中毒かなにかで倒れそうだ。

 酒を浴びるほど飲みたくなるほど、ストレスが溜まっているんだな、とサムは義父の心労に涙した。


「飲まないなら飲まないでいいんだが、それでもこっちにきて付き合ってくれ」

「それはもちろん」


 リーゼたちにいってらっしゃいと送り出されて、飲んだくれふたりの隣の席に座る。

 ごっごっごっ、とジョッキを傾けてビールを飲み干したダグラスが、サムの肩に手を回して酒臭い息を吐く。


「サムの嫁さんたちとも挨拶させてもらった。いい子たちだな。ジェーンの奴も、魔王の娘や準魔王関係なく接してもらっているのが新鮮なんだろう。喜んでいるぜ」

「……そうなんだ」


 サムの目には、ジェーンは特に変わらず礼儀正しく淡々としているようにしか見えない。

 父親ゆえに娘の些細な違いに気付けるのだろう。

 サムもいずれ父になるが、子供たちの良き親になりたいと思う。


「お前さんの嫁たちとの相性もいい。どうだ、ジェーンを嫁にするか?」

「困りますぅー」




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