24「交流を深めます」①
「はははははははは! 眼が覚めたか、サム! お前もこっちで飲め!」
「サム! 飲もうではないか! 胃痛から解放された、ジョナサン・ウォーカーの真髄を見せてやろう!」
「義父様……めちゃくちゃご機嫌ですね」
ステラと一緒に食堂に入ったサムは、豪快にジョッキを掲げるダグラスとジョナサンの笑い声に歓迎された。
どうやらふたりは向かい合って飲み明かしているようで、いい感じにできあがっている。
普段なら、適量ワインを嗜むほどのジョナサンだが、今日は豪快にビールを煽っていた。
「お父様ったら、久しぶりに胃痛から解放されたからって……飲み過ぎだと注意しているのだけど、いつまた胃が痛くなるかわからないから飲めるときに飲んでおくってきかないのよ」
サムに気づき、リーゼが近づいてくる。
ジョナサンたちから若干距離を取って、リーゼたちとジェーン、オフェーリアは食事をしながら談笑中のようだ。
「ステラ、ありがとう。食事を用意してあるから食べてね」
「お礼なんていいのですわ。リーゼだって、ずっと看病していたじゃありませんか」
労い合うステラとリーゼに、サムは礼を伝えた。
「看病してもらってありがとうございました」
「妻の役目ですもの。私たちは、サムが目を覚すのを待っていただけよ。ジェーン様が回復魔法をかけてくださったのだから、お礼を言う相手が違うわ」
そう言われ、サムの登場と共に席を立っていただろうジェーンに気づき、深く頭を下げる。
「どうもありがとうございました。おかげさまで、大事にならなかったようです。心から感謝します」
「いいえ。同じ魔王様同士のちょっとした諍いで、ご夫婦の営みに大きな影響を与えることにならなくてよかったです」
「あ、あははははは、本当に!」
超速再生を得たサムだが、自然に再生するわけではない。
あくまでもサムが再生しようと思うことで、再生が始まるのだ。
ダグラスやロボも自分の意思で再生をするようだが、レプシーは勝手に身体が治っていくらしいので、サムもいずれ本当の意味で再生能力を取得できるはずなのだが、先は長そうだ。
不意打ちで股間に爪先をえぐり込まれてしまったサムは、ジェーンのおかげで夫婦生活を守られたと言っても過言ではない。
現時点で、サムの彼女への好感度はかなり高い。
対して、よくわからない事情で股間を蹴るという暴挙を行った魔王の好感度は、いきなり襲いかかってきたときのロボよりも低かった。
「んで、俺の大切な息子を蹴り上げた魔王はどこにいるのかなー?」
「フランベルジュ様は、お休みです」
「まだ寝てんのかよ! とんだお寝坊さんだな!」
「あの方は、放っておけばずっと寝ていますので、あまりお気にされない方がよいかと思われます」
ジェーンの説明を受けて、サムは頬を引きつらせる。
「あのさ、ダグラス」
「ん? なんだ?」
「なんでフランベルジュとかいう魔王を連れてきたのかな?」
「……魔王全員に会いたいかと思ってな」
「こんな目に遭わされるなら会いたくなかったよ!」
「はははははは、些細なことだ! 気にするな!」
豪快に笑い、ジョナサンと乾杯してビールを流し込むダグラスはフランベルジュと公有もあるようなので気にしていないようだ。
器がでかいのか、それとも気にしていないのかわからない。
もしかしたら、自分が気にしすぎなのか、とも思う。
「御神体が無事だったからよかったよ。ほら、サムもご飯食べよう」
「水樹までそんな、御神体なんて」
「サムの御神体はご立派だった。なむー」
「花蓮……拝まないで」
食事を終えてお茶を飲んでいた水樹と花蓮がそろって手を合わせて拝んでくるので、脱力してしまう。
「ふふ。みんなでからかっているだけよ。さ、サムも食事を取りましょう」
フランが微笑み、サムとステラに席を引いてくれる。
礼を言い、座ると、視線を感じた。
「ん?」
顔を向けると、なにやらぼうっとした様子でこちらを見ているオフェーリアと視線が合った。
「オフェーリアさん?」
「は、はははい」
「えっとなにかありましたか?」
なぜ熱い視線を送られているのかわからず、尋ねてみると、彼女は顔を真っ赤にした。
「べ、べべべべべ、べつにサミュエル様のお顔を見て、サミュエル様の御神体を思い出したわけではありませんわ!」
「――あんたも見てたのかよ!」
「わたくしも拝見させていただきました」
「ジェーンさんまで!? もう、お嫁にいけない!」
顔を覆って泣くサムを見て、酔っ払いふたりが爆笑した。
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