21「スースーしていたようです」




「な、なななななななな、なんでぇええええええええええ!?」


 サムが絶叫すると、ぽっ、と頬を赤く染めたステラが股間をちらちら見ながら教えてくれる。


「フランベルジュ様が、サム様の御神体を蹴り上げましたのは覚えていらっしゃいますか?」

「御神体て……ええ、まあ、そういえば……痛みを思い出しました」

「気絶なされた後、ジェーン様が回復魔法を施してくださったのですが……」

「ですが?」

「万が一のことがあってはいけないと思いましたので、みんなで確認をしたのです」

「みんなって誰!?」


 問いただせば、リーゼ、アリシア、ステラ、フラン、花蓮、水樹の勢揃いだった。

 なにをどう確認したのか怖くて聞けない。

 せめてサムにできたことは、


「どうりでスースーすると思ったよ!」


 いつもと違う目覚めの違和感に早く気づけばよかったと後悔の叫びを放った。


「ご安心ください。サム様の御神体は相変わらずご立派でした!」

「……喜べばいいのか、ステラもなんだかんだスカイ王国っ子だなぁと嘆けばいいのか悩ましいね」


 雪のように儚げだったステラも、すっかり元気なスカイ王国っ子だ。

 サムは、素直に喜ぶことにした。

 とりあえずパンツを手渡されて履く。


「そういえばダグラスはどうしていますか?」

「ダグラス様なら、久しぶりに胃痛から解放されたジョナサン様と酒盛り中です」

「……俺の記憶が確かならダグラスも一撃もらっていたような気がしたんだけどなぁ。やっぱり俺はまだまだだな。いや、股間を蹴り上げられた俺のほうがダメージでかくね?」


 未だ、フランベルジュに金的攻撃をされた理由がよくわからない。

 もしまた会ったときに股間を蹴り上げられたら、と思うと身震いがする。

 あの時、間違いなく彼女の爪先が股間を潰していた。

 回復しているはずにもかかわらず、痛むような気がした。


「ところで、サム様」

「はい?」

「オフェーリア様とお話をしてあげてください」

「えっと、どうしてですか?」

「もっと会話が必要だと思ったのです」

「……今日出会ったばかりですもんね」


 会話が足りていないと言う意味ではその通りだろう。

 サムが納得していると、そうではない、とステラが首を振った。


「オフェーリア様はしっかりした子ですが、それでもまだ十二歳の子供です。親が決めた結婚に不安も抱えているでしょう。おそらく、弱い一面を表に出したくない強い子なのだと思います」

「俺よりも、ステラたちのほうがいいじゃないですか?」

「わたくしたちは気にしませんが、オフェーリア様が気にしているのです」


 よく考えれば、ステラは王女であるし、リーゼたちも年上だ。

 相談しにくいこともあるだろう。

 あの母親を持つ子ならば、なんでも自分で解決できることはしてきただろうし、弱みを見せるということは相手を信頼すると言うことだ。

 残念ながら、ステラやリーゼたちと交流がなかったこともあり、時間が必要なのだろう。


「同い年のクリーさんがいらっしゃれば、また違ったのでしょうけど」

「あの子が相談相手になったら、とんでもない方向にオフェーリアさんが進化しそうだから、それはなしでお願いします!」

「まあ、サム様ったら、言い過ぎですわ」

「あれぇ? ま、まあ、あの子はギュンターに任せておけばいいか。付き添ってくれていてありがとうございます。俺たちも、ダグラスたちのところへいきましょう」


 ここでステラとのんびり話しているのもいいのだが、せっかく遊びにきてくれたダグラスと喧嘩して終わりというのも申し訳ない。

 ジョナサンが相手をしてくれているようだが、いつストレスで胃が破裂するかわからないし、サムは部屋からベッドから降りて部屋から出ようとする。


「お待ちください、サム様」

「はい?」

「ズボンを履き忘れています」




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