44「帰りましょう」
魔王遠藤友也に連れられて、ダニエルズ兄妹と戦い、世界の意思と邂逅し、魔王に至った。
竜王と再会、竜王候補の玉兎との戦い。
これが一日の出来事だったことを、思い返すとびっくりする。
「あー、疲れた」
体力気力が普段有り余っているサムだが、さすがに今回の慌ただしいイベントの連続に疲労を覚えた。
「サム、僕があとでマッサージをしてあげよう」
「あ、すみません。いらないです」
「……その他人行儀な反応はやめて欲しいかな、心にきてしまう」
さりげなくギュンターが隣に陣取り、馴れ馴れしく肩に手を回してきたので、振り払う。
ぞんざいな扱いを受けても、変態はニコニコ顔を絶やさない。
「さ、みんな。帰ろう」
「おー!」
元気よく返事をしたのは、サムに抱えられたままのメルシーだった。
彼女が人の姿になって現れたのは驚いたが、想像していた以上に強くなっていることにも驚きを隠せない。
このまま成長すれば、玉兎に匹敵するか、それ以上になるんじゃないかな、なんてちょっと家族びいきのことを考えてしまう。
「サムよ」
「クライド様」
「そなたはいつもこのように、慌ただしく戦い、傷つき、乗り越えてきたのだな。そなたがスカイ王国にいてくれることを、そなたのようなどこまでもまっすぐな少年が娘の夫であることに心から感謝したい」
「……なんですか、急に?」
「レプシーの一件だけではない。今までそなたばかり戦わせてきたことをすまないと思っているのだ」
「そう言ってくれるだけで嬉しいです。でも、気にしないでください。強いやつと戦うのは嫌いじゃないので」
「そなたは、本当にウルのような子だな」
「最高の褒め言葉です」
クライドと笑顔を浮かべ合い、サムは握手を交わした。
サムは、スカイ王国が好きだ。
亡き師匠が生まれ育った、王都が、そして王都の人たちが好きだ。
ならば、国を守るために戦うことに苦などない。
「だけど、まあ、なんというか……あまり怪我ばかりして帰るとリーゼたちに心配かけるので、これからはもっとスマートに勝ちたいですね」
「ははははは! 違いない! 夫の身を案じない妻はおらぬからな!」
クライドの笑い声が響く。
「では、スカイ王国に戻りましょう。僕の近くに来てください」
「……ラッキースケベしないよね?」
「あのですね。サムにはさっき言ったじゃないですか、ギュンター君の結界のおかげで今は防げているんですって!」
いまいち信用がない友也の周りに、みんなが集まっていく。
しかし、竜王と青牙、青樹だけが動かなかった。
そんな三人に、サムは手招きし、
「――早く来いよ!」
一緒にスカイ王国に行こうと声をかけた。
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