21「またまたまたビンビンです」②
ゾーイ・ストックウェルは、激情に身を任せて言葉を吐き出し続けた。
ビンビンとは何かという質問に、ゾーイの知る限りのビンビンが説明された。
サムたちは絶句し、竜王は興味深そうに耳を傾ける。
続いて、なぜエヴァンジェリンが愛の女神なのかという質問にも、口調こそ激しいがすべて語った。
「はぁーっ、はぁーっ、これで全部だ! 理解したか!?」
約十五分にもおよぶ、ゾーイの説明を受けた竜王炎樹は深く頷いた。
続いて、クライド・アイル・スカイに視線を向け、ギュンターを一瞥し、サムを見て頷いてからゾーイに視線を戻すと一言。
「つまり、スカイ王国は大陸一番の変態国家であり、我が娘エヴァンジェリンも変態ゆえに馴染んだと?」
「そうだ! その通りだ! それで正解だ!」
いい加減、このしょうもない話を終わらせたかったのだろう。
ざっくりとした竜王の言葉を肯定してしまった。
変態王国に崇められながら、変態に区分わけされたくないエヴァンジェリンが抗議の声を上げるが、
「ちょ、ママ!? それだと私まで変態みたいになるんだけど!」
「黙れエヴァンジェリン! これ以上話が面倒になったらお前が責任を取れるのか!?」
「はい、すみません」
殺気立ち、怒声を浴びせるゾーイの剣幕に怯えて、素直に謝罪した。
「よし、これでくだらん話は終わりだ! では、真面目にいくぞ!」
「待て、ゾーイ・ストックウェルよ」
「……なんだ、竜王?」
「お前の説明はわかりやすかった。感謝する。だが、まだ私は、クライド・アイル・スカイにビンビンであるかと問われたことに対し、返事をしていない」
「律儀か! というか、もうする必要はないだろう! まだ続けるのか、この不毛な話を!?」
「私は竜王炎樹だ。問われたことから逃げることはない」
「そうではなくて、いちいち相手にする必要がないと言っているのだ!」
「魔王レプシー・ダニエルズの一番の眷属であるゾーイ・ストックウェルよ。一言で終わる、待つといい」
「……さっさとしろ」
炎樹は、この場の空気のせいで気まずそうにしているクライドに顔を向けると、整った唇で告げた。
「――私もビンビンだ」
ゾーイ、絶句。
サムたちも、まさかの展開に、口をパクパクさせている。
エヴァンジェリンもまさか母から「ビンビンだ」などという言葉が出てくるとは思いもしていなかった。
「いや、言葉が足りず誤解を招いてしまうな。はっきりと言おう。私の心はサムへの気持ちでビンビンだ」
「えー?」
サムとしては、なぜ竜王の好感度が高いのか理解に苦しむ。
ゾーイたちも、「お前、何したの?」という目で見てくるが、まったく心当たりがない。
「うむ! すばらしいビンビンである! 我が国は、私は、竜王殿を心から歓迎しよう!」
クライドは、竜王のビンビン発言に感動し、涙をこぼさんばかりに感極まると、勝手に歓迎を始めてしまう。
「いや、あの、クライド様、竜王炎樹さんを歓迎するのはいいんですけど」
サムは戸惑いながら、王に声をかけた。
「そろそろ、その炎樹さんのお子さんたちが――爆発しそうです」
サムの言葉通り、ギュンターの結界に閉じ込められ、置いてきぼりにされ、放置されていた竜王の子供、青牙と青樹が竜の本性を半分剥き出しにして結界を破ろうとしていた。
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