3「魔王が語り始めました」②
「なんというか、言葉がありませんね」
わかりやすい展開だと思う。
ラッキースケベをして許されているだけでも羨ましいのに、女子からも人気なのだ。他の男子からすれば、とくに思春期の異性に興味津々の男子などには相当面白くなかったはずだ。
「あはははは。実を言うとあまり気にしていなかったんです。小中学生の友情なんて長続きしないと考えていましたから」
「ドライ!」
中学生でその思考は冷めているな、と思う。
だが、実際、小中学校時代から友情が継続しているのは数人だろう。いない人間だっている。
実際、サムも前世では小中学生時代の友人はふたりほどだ。
「話を続けますと、男子だけなら良かったんですが、女子も嫌な感じになってしまって」
「……なっちゃったんですかぁ」
「なっちゃったんですよ」
きっかけは、ひとりの少女と付き合ったことだった。
友也も年頃の少年だ。
年相応に誰かと恋愛して、甘酸っぱい青春を送りたいと言う願望があった。
初めてできた恋人とは、中学生らしい初々しい交際であり、割といい感じだったようだ。しかし、その間にも友也のラッキースケベは続いていく。
そして、新たな女性と親しくなってしまい、恋人が嫉妬する。
はじめこそ可愛いしっとだったが、次第に束縛が強くなり、辟易するようになっていった。
そんな友也を見かねた女子が注意するも、注意した女子がそもそも友也に恋心を抱き、恋人の立場を羨んでいたので――ギスギスとし始めてしまう。
(――聞いているだけでお腹が痛くなる)
「僕も好きでラッキースケベをしているわけじゃないんですけどね。まあ、周りも僕がわざとやってないのはわかってくれていたので責めることもなかなかできない。そんな女子の矛先が、付き合っていた子に向かってしまったのは、残念でした」
「で、結局どうなったんですか?」
「当時の恋人は、最終的に僕を殺して自分も死のうとしました」
「狂気っ! なんでそうなったんですか!?」
サムの質問に、はぁぁぁぁ、と友也が大きなため息を吐いた。
「それがわかっていたら苦労しませんよ」
「まさか、彼女に刺されて死んでしまって、異世界に?」
「いえ、そこは他の女子に守ってもらいました。学校でのできごとだったので」
「……情けな」
「返す言葉もありません。まあ、その子は転校してしまい、残念な結果にはなってしまいましたが、彼女とはそれ以来です。これで終わればよかったんですが」
「ラッキースケベがまだまだ続くと?」
暗い顔をして友也が頷き、サムも困惑を隠せない。
異世界に来る前なのに、イベントがありすぎる。
「その後も、生徒だけではなく女性教師にラッキースケベをしてしまいました。なんというか、若くて美人で人気の先生にです」
「うわぁ」
「もちろん、男子だけではなく、男性教師たちも面白くなくなりました。人事だとわかって笑っていたのが、笑えなくなったみたいです」
「ま、まあ、先生も人間ですからね。そりゃ面白くなかったんでしょう。いや、よう知らんけど」
所帯を持つ男性はさておき、独身の男性教師には面白くなっただろう。
実際、彼への当たりがきつくなったそうなので、わかりやすい。
男性教師をフォローするつもりはないが、美人の同僚にラッキースケベを起こした挙句、その女性教師が友也に好意を抱くようになれば、それはもう不満もたまるだろう。
教師といえ、聖人ではないのだ。
「女子たちと女性教師の間でギスギスが生まれ、すごく通い辛い学園生活になってしまったのはまだよかった部類なのですが」
「それよかった部類なの!?」
「……はい。今まではまだよかったんです」
「俺はこれからまだなにかあることに驚きを禁じ得ないよ」
なにがあれば、こんな体質とイベントに恵まれるのだろうか。
正直、コミックなどで起きるようなラッキースケベとはかけ離れすぎていて、笑いえない。
「ついには、男子生徒と男子教師にまでラッキースケベを起こすようになってしまったのです」
「それ呪われてね!?」
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