ダンジョンができた世界で1人ゲームをする者~SPの取得方法が俺だけ違った件

色葉

第1話 

「はぁ、今日もゲームして寝て、こんなはずじゃなかったのにな」

 二年と少し前にさかのぼる

 この世界がダンジョン化して冒険者という職業ができてから、人々の多くは働くことをやめダンジョン攻略へと勤しんだ。ご多分に漏れず、俺、多川悠人たがわゆうとも冒険者となった。初めてのダンジョン攻略は、初心者冒険者3人パーティーでの攻略が義務づけられていた。初心者が3人集まるまでダンジョン前で待機するのである。まるで、アトラクションの順番待ちである。悠人達のパーティーは大野弘樹おおのひろき神田光かんだみつるの3人となった。

 ダンジョンに潜ること数分、スライムと遭遇した。ゲームで見たことのあるそれとは異なり、理科の実験で作るようなスライムであることに驚きながらも、戦闘を開始した。戦闘は危なげなく進み、スライムが粒子化し消滅するとともに「レベルアップしました」という無機質な音声が脳内に響く。

「「「レベルアップだ!!」」」

 レベルアップでSPを取得する。ここまでが、初心者パーティーで行うことである。皆が自分のステータスを確認しスキル選択をはじめたとき、俺はあることに気づく。

 多川悠人

 レベル1

 HP 20

 MP 12

 SP 0

 職業:初心者冒険者

 物攻:12

 物防:13

 魔攻:12

 魔防:11

 速さ:12

 運:16

 スキル:なし

 称号:???

「SPが取得できていない・・?」そう独り言をつぶやいたとき後ろから弘樹に声をかけられる。

「おい、悠人は取得するスキル決めたのか」

「いや、それが・・」

「聞いてください、僕は剣術スキルをとることに決めました」

 悠人がSPを取得できていないことを話そうとしたとき光が話しかけてきた。

「てことは、光は剣士のジョブをとったのか」と弘樹が返し、俺の話はそこで終わった。


 ダンジョンを出ると弘樹が俺たちでこれからも冒険をしていかないかと提案をしたが、俺はSPが取得できなかったこと、これからも取得できないかもしれないことを話し、冒険者は諦めると伝えた。弘樹と光はそんなことは気にせずもう少し続けてみようといったが、今日は5レベルまで上げて弘樹と光がSPを15獲得しているのに対し、俺は0。そもそも、0レベルから1レベルになることでSPが1獲得でき、2レベルになると、SPが2獲得できるという風にレベルと同数のSPが獲得できることは常識なのである。SPが獲得できないことがおかしいというのに、5レベルまで上げてもSPが0、スキルが取得できない俺では、この先どうしても足手まといになると告げて家に帰った。


 それから2年間家で自堕落にゲームをする日々が続いたのである。

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