16》♠︎パーティーの真の目的〜礼装と疑問〜♠︎

 ここは、トパタパス村の村長の屋敷。


 夜になり屋敷の大広間では既に、パーティーの準備がととのい、村の者たちがちらほらと集まりはじめていた。


 トウマとウッピィは屋敷に到着すると、ハミルから渡された手紙を門の入口に立っている小柄な男にみせる。


 するとその小柄な男は、その手紙を持ち屋敷の中へと向かい、ハミルを連れ戻ってきた。


 ハミルはトウマをみると会釈をする。


「これはトウマ様。お越しいただきありがとうございます」


「ハミルさん。今日はパーティーに、お招きいただきありがとうございます」


 トウマは挨拶をすると会釈をした。


 その後トウマは屋敷の中に入り、ハミルが部屋を案内する。そして部屋に着くとトウマは、ハミルからパーティー用の服を受けとる。


 トウマは服を持ち部屋の奥へと向かう。


 その間ハミルは部屋を出て、ラガのもとへ向かった。


 そしてウッピィは、誰かきたらトウマに知らせるため、扉ごしで見張っている。


 “今のところ、足音が聞こえてきません。なので、急いでください”


「うん。ウッピィごめん。急いで着がえる」


 トウマは鏡の前で着がえはじめた。


 ゴシック風の白いブラウスに袖を通しボタンをとめると、白いフリルのリボンを襟元えりもとにつける。


 するとすその丸みを帯びた切り込み部分に、草花や蔦もようの、刺繍が縁取られたクリーム色のスラックスを履いた。


 そして、グレイに黒が混じった色の、千鳥格子のベストを羽織り、

 前側が短く後ろが長めの、草花や蔦もようの、刺繍であしらわれたクリーム色のジャケットに袖をとおす。


 袖口の丸みを帯びた切り込み部分は、草花や蔦もようの刺繍で縁取られている。


 そしてベストの胸元とジャケットの胸ポケットには、刺繍であしらわれたロイズ家の紋章が記されている。


 着がえがおわるとトウマは、グレイの靴を履いた。そしてトウマは鏡を見ながら、鏡台の上においてあるアクセサリーを襟元のフリルのリボンにつける。


「ん〜ウッピィ。どうかな?」


 “まぁ、いいと思いますよ。というか。その服装って、パーティー衣装というより、礼装って感じですね”


「礼装かぁ。ん?そうだとしたらおかしくないか」


 トウマは不思議に思いウッピィの方を向く。


 “そういえば変ですねぇ。確か今日のパーティーは、マリエスを助けたお礼って言ってたはずです”


「うん。それだけなら、こんな服に着がえなくてもいいと思うんだよなぁ」


 “そうですね。もしかしたら。それ以外にも、お祝い的な何かが行われるのではないでしょうか”


「そうだな。そのための礼装なら納得できる」


 トウマとウッピィがそう話をしていると、廊下を歩く足音が扉の向こうから聞こえてきた。


 ウッピィはそれに気づき、トウマの方へと向かう。


 “トウマ。誰か来ます”


 ウッピィがそう思念をおくるとトウマは頷く。


 すると、トントンとノックし扉が開き、この屋敷のメイドが「失礼します」と言い部屋の中に入ってきた。


 そしてメイドはトウマの側までくると。


「トウマ様。髪をととのえますのでお座りくださいませ」


 そうメイドに言われトウマは戸惑った。


「あ、えーっとぉ。どうしても髪をととのえないとダメかな?それに、人にしてもらうのは苦手なんだけど」


 そう言いトウマは、メイドを見ながらごめんと手を合わせる。



 だがトウマがそう言った本当の理由は他にあった。そうトウマは、鏡に映った右目をみられるのが嫌だったからだ。



「ですが。このままでは、パーティーに出席することは出来ませんが?」


 メイドは困惑の表情を浮かべる。


「そういう事なら。仕方ないけど。自分でやっちゃ駄目かな?」


「それは構いませんが。お一人で大丈夫でしょうか?」


 メイドの一言があまりにも子供あつかいしていたので、トウマは言い返しそうになるが堪えていた。


「……う、うん。大丈夫だよ。それと、準備が出来たら声かけるから、廊下で待ってて欲しいんだけど」


「承知いたしました。では、廊下で待機させていただきます」


 そう言いメイドは、トウマに一礼をすると部屋をでる。


 その後トウマは台の上にある丸い容器のフタを開けた。するとその中にはクリーム状の物があり、トウマはそれを手にとり鏡をみながら髪をととのえる。


 トウマは右目が隠れるように前髪の一部を残し、他は後ろに流しととのえた。


 するとトウマは、扉の向こうのメイドに聞こえないぐらいの声で話しだす。


「……なんか。この髪型やだなぁ」


 “プッ!トウマ。すごく。に、似合いますよ”


 ウッピィは笑いを堪えている。


 トウマはそれをみ見て不機嫌になり。


「ウッピィ!オレだって、こんな髪型にしたくない。だけど男が整髪する場合は、こんな感じにしないといけないって教わった」


 “そうなのですね。ウチは、こういう場にはでたことがありませんので、知りませんでした”


 そうこう話をしたあとトウマは、準備がととのったため、ウッピィを肩に乗せ扉を開けると、廊下にでてメイドに声をかけた。


 するとメイドは、トウマを案内するためラガが待つ部屋へと歩きだす。


 そしてトウマは、ドキドキしながらメイドの後を追った。

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