9》♠︎ 村長の娘を助ける〜取引〜♠︎

 山賊のボスは不敵な笑みを浮かべ、トウマを見ていた。


(このガキを捕らえるのは容易じゃねぇ。だが、みた限りこのガキ、人を殺す事ができねぇみてぇだ。

 そうなると、手っ取り早くすませるには、取引した方がいいんだろうが。ただ、何と引き換えにする?

 ん〜ん?そうか!両方つかまえる必要はねぇ。そうだなぁ。どっちかといやぁ。このガキの方が金になりそうだ!

 そうすりゃ、わざわざ村長の娘を拐わなくてすむ!ただし、上手くいく補償はねぇがな)


 他の山賊たちがマリエスへと迫りくる中、トウマはどうこの場を切り抜けるか考えていた。


(助けたいけど。マリエスのところまでは、かなり距離があるし……。だけど、どうしよう)


 山賊のボスは、剣を鞘におさめると、ニヤニヤしながらトウマの方へと歩きだした。


 トウマは、その様子を見て不思議に思った。


(……何で剣をおさめた?警戒している様子もない。これって、どういう事なんだ?何をしようとしている!)


 そう思いながらトウマは、鞘におさまったままの剣を持ちなおし身構えると、山賊のボスを待ち構えた。


「おい!俺と取引しねぇか?」


 山賊のボスはそう言いながら、トウマの側まできた。


「……取引?」


「ああ。お前だけここに残れば、その女は逃してやる。どうだ?そうすりゃお前以外、傷つく者は出ねぇ」


「……はぁ?って、おい!言ってる事が理解できない!オレがここに残れば、あの人マリエスを逃してくれる?……いや、それはありか?」


(確かにその方が、コイツらを楽に倒せる。だけど、それだとオレはどうなる?

 この様子だと、オレを捕まえたいみたいだけど。そもそも、オレを捕まえてどうするつもりだ?)


 トウマは疑問に思い、山賊のボスに問いかけた。


「あの人じゃなく、何でオレなんだ?」


 山賊のボスは、トウマを見下すような目でみると、


「そりゃ決まってるだろう!お前を捕まえて、貴族に売りとばす」


「なるほどなぁ。だけど、オレなんか売っても、高く買ってもらえるとは限らないんじゃないのか?」


「いや間違いなく、お前はいい値がつく!俺の見たては、滅多にハズレた事はねぇ」


 山賊のボスにそう言われ、トウマは頭を抱えた。


(……どうする?マリエスを助ける為とはいえ。このままコイツの言う通り、捕まっていいのか?いや、それは違うだろう!)


 トウマは、色々と模索したあげく、ある事を思いついた。


(そうか!でも、これをやるにしても、今のオレの力じゃ。どうする?

 “どうするって?それは、お前じゃ無理だろう。まぁ俺なら、上手くやれると思うがな”

 ……いや、だめだ!あークソォ!こんな時に出てくるなぁ〜。

 “まぁいい。せいぜい頭を抱え悩んでろ!”

 ああ。そうするよ!)


 トウマは、もう一人の自分にやりこめられそうになり、焦りをみせ始めていた。


(危なかった。だけど、自分で思っているより、結構おい込まれてるのか?)


 トウマがそうこうやっていると、山賊のボスは痺れをきらせ口を開いた。


「おい!さっきっから、何をやってやがる!いい加減、返事を聞かせてもらおうか!」


 山賊のボスはそう言い詰めよると、トウマは咄嗟に後ろに退いた。


(仕方ない。やるしかないよな!)

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