2》♠︎確認と噂♠︎

 ここは王都へと続く街道。あれからトウマとウッピィは、クリオネアとこれからの事を話し合った後、王都に向かっていた。


 トウマは歩きながら色々な事を考えていた。


(これからはウッピィと一緒かぁ。あの屋敷を出てから独りだったけど、楽しくなりそうだな)


 そう思っているとウッピィがトウマの左肩の上に乗り話し出した。


「トウマ。クリオネアに言われた事、ちゃんと覚えてまふますよね?」


「うん!最低でも一日一回は定期連絡をいれる。それに、話せる事が知られると面倒だから、他の人たちの前ではウッピィとは会話をしない」


ほうでふそうです。うちが会話ひたいしたい時はひねん思念を送るので、トウマはほれにそれに無言で対応ひてしてはいさい


 ウッピィがそう言うとトウマは少し考えた後、


「……無言でって。どうやればいいか、いまいち分からないんだよなぁ」


ひかた仕方ありまへんねせんね。では、歩きながられんひゅう練習ひまひょうしましょう


 そう言いウッピィとトウマは、もしもの時の為に無言での対応の仕方を練習しながら、王都へ向け歩き続けた。




 時を同じくして、ここ王都クリスティスの城の執務室では国王デルシェ・C・クリスティスが、大臣オルタニス・フォンテと各隊の隊長を呼び話をしていた。


「まだか!いまだ紫の勇者は、この王都に来ておらぬ。アルベルト・ルディは何をしている!」



 クリスティス国の王デルシェ・C・クリスティス、35歳。


 キラキラひかる銀色で短めの髪。性格は誠実で穏やかであるが、若干疑り深い所がある。



「流石に3年も音沙汰がないのは変です。ルディ家で何かあったのかもしれません」



 大臣のオルタニス・フォンテ、52歳。黒まじりの銀色で長い髪を軽く縛っている。



「うむ。それはあり得るかもしれぬ。だが何故、なんの連絡もしてこない?」


 そう言いデルシェは各隊の隊長たちを見た後、オルタニスを見た。


 すると、青黒い髪の男が待ってましたとばかりに会話に入って来た。


「陛下。その件でパープリアルの領主アルベルト・ルディ伯爵について、お耳に入れておきたき事があります」



 この男はエルヴ・ティンク、特殊工作部隊の隊長である。因みに、この世界の特殊工作部隊は情報集めが主な仕事である。



「もしや、アルベルトの身に何かあったというのか?」


「いいえ。あったと言うより、何やら良からぬ事を企てているようなのです」


 エルヴがそう言うと隣にいた紫の髪の男が驚きの表情を見せた後、


「それは本当なのですか!?信じられません。確かにあの方は口数の少ない人ではありますが……」



 この男はセルジオ・フォレ、20歳、銃士隊の副隊長である。隊長は急な病により、代わりに副隊長のセルジオがこの話し合いに参加している。


 銃士隊の中で最も若いながら、副隊長になるほどの強者で、洞察力に優れている。


 殆ど裏表がない性格、元はパープリアルの出身で、アルベルトとは何度か会い会話を交わしていた。そして唯一、アルベルトが本音で話せる者の一人である。



「セルジオ。お前がアルベルト様を慕っている事は知っている。だが現に、パープリアルだけではなく他の領土でも、不穏な動きが見え隠れし噂も流れている」


 エルヴはセルジオを横目で見ながらそう言い放った。


(……エルヴは何を考えている?確かに、ここ最近この王都でも、アルベルト様の嫌な噂が耳に入ってきた。だがあのお方に限って……)


「だとしても、噂だけを信じるのは……」


「確かに、セルジオの言う通りだ。噂だけではアルベルトが、悪事を策略しているという証にはならぬな」


 そう言いデルシェは、セルジオを見た後、エルヴの方へ視線を向けた。


「では我が隊にて、アルベルト様の悪事の証拠を突き止めて参りたいと思います」


「うむ。エルヴ、その件はお前に任せる」


 その後も話し合いは長時間に渡り続いた。


 そしてその間セルジオは、アルベルトの事やまだ現れぬ紫の勇者の事を思い、考えをめぐらせていた。

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