想い出と共に歩む少女たち ~ダンジョンができた世界で生き抜く物語~

雪風 セツナ

幕間の章

幕間 クリスマス記念 ~中学3年生のクリスマス~

ダンジョンができて数日、世界中で慌ただしくなってきてはいるがクリスマスというのは変わらずに訪れて来る日だった。



瑞希と凛華の通う中学校もちょうど24日までが登校日ということで、2人は朝から終業式と成績表配布のために中学校に向かわなければならなかった。




「…おはよう」


「おはよう、瑞希。今日まで学校で明日から休みだけど、何か予定はあるのかな?」



 瑞希は朝起きてニュースを見ながら朝食を取っていると母親からそう聞かれた。


「う~ん、どうかな…。もしかしたら凛ちゃんと出かけるかもしれないけど、それ以外に予定はないかも…。受験がどうなるかわからないし、今のうちに勉強しておかないと私立高校の入試に支障が出るかもしれないから」


「なるほどね。行きたい高校とはあるの? 私立高校もそうだし公立高校も含めてね。もしも勉強に不安があってどこかの塾の冬期講習だけでも受けたいとかあるなら早めに相談してほしいし」


「それなら大丈夫だよ。過去問も買ってもらったし、教科書とか問題集だけでもなんとかなってるから。凛ちゃんに誘われたらわからないけど」



 瑞希の学力であれば受けようとしてる私立高校と公立高校の偏差値は余裕でクリアしているので、つまらないミスをしなければ合格はできると思っていた。



彼女が所属しているのは美術部で、週に3回しかない部活だった。土日も基本的に休みで、作品を出品しなくてはならない時期以外は本当に緩い部活動だった。あめ、部活動を引退するのもそこそこ早く、勉強に割く時間は多くあったのだ。


 しかし、凛華もそうなのかと言われればそういうわけではない。彼女は剣道部に在籍しており、1年生の時に出場した大会から毎年優勝を重ね、全国大会に出場するほどの実力者だった。



 そのため、中学3年生の夏まで部活を継続しており、他の人より高校の受験勉強を始めるのが遅くなってしまったのだ。



 それを置いといたとしても凛華は勉強をそこまで得意としておらず、試験の度に瑞希に試験範囲の要点を纏めてもらい、それだけを勉強して平均点前後を出しているという状態だった。


 短期間の試験勉強だけでそれを出せる凛華がすごいのか、それだけの点数が取れる内容に纏めた瑞希がすごいのかはわからないが、それは中学校の試験だから通用したことで入試にまで通用するとは限らなかった。



 部活動を引退してから凛華は本格的に勉強を始めたが、1人ではうまくいかず瑞希に助けを求め一緒に勉強をしていた。凛華の親はそれを申し訳なく思い、塾に入れて勉強をさせた方がいいかと悩んでいたらしいが、凛華自身と話し合い、瑞希の負担にならない程度に見てもらうということになった。



 というのも、ここまで試験勉強だけを見ても3年間酷い点数を取らせることなく、瑞希自身は常に9割以上の点数を取り続けることができており、そのことから彼女自身も凛華の親に口にしたが負担に思っておらず、「凛ちゃんの勉強は私がしっかり見ますから!」と珍しく力強く説得をしてくれたからだ。



「凛華ちゃんからじゃなくて、たまには自分から誘ってみたらどう? 最近は勉強ばかりで部屋に籠っていたし、外で気分転換でもしたらいいじゃない」


「それを受験生の私たちに言うの?」



 瑞希は受験生である娘に母親がそんなことを言っていいのかと思わずにはいられなかった。しかし、自分を気遣ってくれてのことだろうと思い直し、さらに、母の意見も確かにその通りではないかとも感じるところはあった。



 これまでもどこかに行くときや、何か行動を起こすときは凛華に誘われて自分がついて行くというようなことが多く、積極的に誘うということがなかったのではないかと考えたのだ。



「ほら、ぼやっとしてないで凛華ちゃんを迎えに行ったら? 今日は終業式だから聖奈ちゃんは朝連がないから起きているはずだけど、遅刻したら大変でしょう?」



 瑞希は母の提案について考えていたせいか、朝食を食べ終えたにもかかわらずその場に動かずにいたので母親に促されて時計を確認すると、後少しでいつも家を出ている時間になるところだった。



「あ、いけない。ごちそうさまでした」


 瑞希は慌てて食器を片付けると荷物を取り、制服に着替えてから家を飛び出した。




「おはようございます」


「おはよう、瑞希ちゃん。ちょっと待っててね」



 瑞希が凛華の家に着き、インターホンを押すと凛華の母親が出てくれて凛華を呼びに行ってくれた。



(今日はちゃんと起きてるんだ、良かった)



 瑞希は凛華を母親が呼びに行くことができたということはしっかり起きているのだと思い、凛華が門から出て来るのを待っていた。



「おはよう!」


「おはよう、凛ちゃん。今日は起きていたんだね」


「うん、聖奈に起こしてもらったからね!」


「そこは威張って言うことじゃないよ…? そろそろ自分で起きられるようにならないと…」


「私もそう思うんだけどね~、何ていうか、起こされるまでが習慣化されちゃって」




 凛華は申し訳なさそうな様子を見せるが、変えるつもりがあるとは一言も言っていないので「これからも変わらないんだろうなぁ」と瑞希は思いつつ、一緒に中学校まで登校した。



「そういえば、明日空いてる?」


 中学校に近づいた頃にふと思い出したように凛華が尋ねてきた。


「え……、う、うん、空いてるよ」



 瑞希は凛華より先にこの質問をしたかったところだが、先に聞かれてしまい答えるのに少し間が空いてしまった。そんな瑞希の様子を見た凛華は、何かあったのかと怪訝そうな表情を浮かべたが、それ以上瑞希が何も言わないので深く追及することなく、自分の言いたいことを告げた。


「それじゃあ、気分転換に明日どこか遊びに行かない?」


「遊びに?」


「そうそう。最近は勉強しかしていなかったし、クリスマスぐらいは一緒に遊びたいなって」



「うん、いいよ」



 瑞希から誘おうと思っていたことでもあったので、瑞希も素直にその提案を受け入れた。


「それじゃあ、ちょっとここから離れているけど、春日部の方に行こうよ。買い物もできるしゲームセンターやカラオケもあるし、ちょっと移動するけど映画館もあるよ」



 凛華も具体的なことは決めていないけれども、とりあえず商業施設がいろいろあるところに行こうという提案をしてきた。瑞希としては、クリスマスにそういう場所に行っては人が多くて混雑しているのではないかと思ったが、色々選択肢がある方が行動も決めやすいと思いそれに頷いた。



「それじゃあ、明日10時ぐらいに待ち合わせね!」


「うん、わかった。凛ちゃんも寝坊しないようね」



 2人で翌日のクリスマスの予定を決めると、ちょうど中学校へと着き、昇降口のところで別れてそれぞれの教室へと向かった。




 そして、適当に教室で時間を潰して、特に何事もなく例年通りに終業式を終え、教室に戻ると冬休みの過ごし方についていろいろと先生から話があった。


 隕石の飛来、そして爆発からのダンジョン発生、様々な変化が起きているところだが自分たちが受験生であることを忘れてはならないということを強く先生たちから告げられた。



 そして、3年生なので受験勉強をしなくてはならないとことで特に冬の提出課題についてはないと言われ、生徒たちは安堵したが、その後すぐに成績表を配布すると言われ教室は結局騒がしくなった。



 配られた成績表を見て安堵する者、落ち込む者、それぞれの高校へ送る成績なので多くのものが心配しているものだったが、瑞希は成績表を見ても特に思うところはなく「まぁこんなものだろう」と予想通りの成績で確認を済ませるとカバンにしまって、この後のことを考えていた。



(明日凛ちゃんと出かけるけど、その時にプレゼントを買うのと先に買うのどっちがいいかなぁ…。凛ちゃんの性格的にゲームセンターやカラオケに行きそうだし、今日の放課後に買ってきちゃおうかな…)



 瑞希は凛華に渡すプレゼントについて悩んでいた。毎年お互いにプレゼント交換を行っており、始めたのは小学6年生の頃からだが、毎年頭を悩ませていた。



 6年生の時は一緒にクッキーを作って交換をして、翌年は瑞希がスポーツタオルを、凛華は瑞希が欲しがっていた本を、そして昨年は偶然にして互いに買うものが被り手袋を交換し合った。


 その時は「考えることが一緒だね」と、笑いあって交換をしてお互いに交換した手袋をつけて遊びに出かけた。



(今年はどうしよう…。去年は手袋だし、今年はマフラー? 他に何かいいものがないかお店で探してみようかな…)


 瑞希はそんなことを考えながら先生の話や、生徒たちがざわついている声を聞き流して放課後を迎えた。




 放課後は凛華と一緒に翌日の予定を決めながら帰宅をした。そして、瑞希の予想した通りカラオケとゲームセンターが候補に挙がったが、瑞希の見たい映画が公開をされていたということもあり、映画を見て、お昼を食べてからカラオケで歌い、何か面白いものがないか買い物をしてから凛華の家でクリスマスパーティーをしようということになった。



 クリスマスパーティーも彼女たちが小学6年生の頃から始まったもので、両家で準備をして一緒に楽しんでいるものだった。場所は家が広い凛華の家が提供し、料理は凛華の母と瑞希の母が一緒に作っている。そして、両家の父はプレゼントや装飾品を用意している。瑞希や凛華、聖奈はそのお手伝いというのが役割だった。




「それじゃあ、また明日ね」


「うん、またね」



 瑞希は凛華と別れて帰宅をすると、母に用意してもらった昼食を食べて凛華へのクリスマスプレゼントを買いに出かけた。



(何があるかなぁ…)



 凛華はいろいろな店を見て回った。服屋、本屋、ショッピングモール等いろいろなところを見て回ったがすぐにピンとくるものはなかった。


(う~ん、どうしよう…)



 瑞希は適当に何かないか歩きながら探していると、たまたまではあるが目を引いた雑貨屋があったので入ってみた。



 その店は普通のお店のように思えるのだが、瑞希の他に客はおらず、どこかレトロで異国情緒のあるお店だった。



「いらっしゃいませ、何かお探しかい?」



 瑞希が店内に入って中をぐるりと見渡していると、ここで商品を売っていると思われるお婆さんに声をかけられた。



「あ、いえ、その、はい…、友人へのクリスマスプレゼントを…」


「なるほどねぇ。お嬢ちゃんはこのお店を見つけられた運のいいお客さんだ。ここにあるのはお爺さんと私が1つ1つ時間をかけて手作りしたものだからね。じっくりと見ていくといいよ」



 お婆さんはそう言ってカウンターの方へと移動をしてしまった。


(何だったんだろう…。でも、不思議なお婆さんだったなぁ…)



 瑞希はどこか不思議な感覚を覚えながらも店内の商品を見て回った。商品は見たことがないようなものが木で彫られていたり、クリスマスに合わせたのか小さなツリーが売られていたり、お人形が置かれていたり色々とあった。



(あっ…、これ、綺麗…)


 凛華はある商品に目を奪われていると、お婆さんがいつの間に瑞希の背後にいた。



「お嬢ちゃんはこれが気に入ったのかい?」


「…! は、はい。とても綺麗で…、その、惹かれるというか…」


「そうかい。これは私とお爺さんの力作だからね」


「そうなんですか?」


「ああ。これは素材を集めるのも一苦労だったし、この飾りつけもこだわったからね」


「へぇ…」



 瑞希がじっとそれを見つめていると、お婆さんがそれを手に取り瑞希に渡してきた。


「これはお嬢ちゃんにあげよう」


「え!? そ、そういうわけにはいきませんよ…! ちゃ、ちゃんと、買います。いくらですか!?」



 瑞希が購入の意思を強く示したがお婆さんは首を振って瑞希の手にそれを握らせた。


「いいの。これはきっとお嬢ちゃんの手元に来るために作られたものだからね。お友達の分を個々で買ってくれれば、私は満足だよ」


 お婆さんに握らされ、お婆さんからもちょい意思を感じたので、その行為に甘えてそれをしっかりと受け取り両手で包み込み、まじまじと見つめていると、もう1つ気になるものがあったので、そちらを見て、


「そ、それじゃあ、あ、あの、商品を買います」


 瑞希はしどろもどろになりながらも、しっかりともう1つ凛華の分も購入をしてそのお店を出た。お婆さんは終始ニコニコとして瑞希を見ていたので、不思議なお店だったと思いながらも帰路についた。




 そして、翌日。



 瑞希は凛華と予定通りに映画を観に行った。映画館はクリスマスということもあってカップルも多く見受けられたが、無事に観たい映画を視ることができた。



 瑞希の観たかった作品は女子高生を主人公とした少女漫画を原作とした実写版の映画だった。女子高生と男子高校生のすれ違いと、最終的に迎える結末がどのように演出をされているのか、彼女たちの青春の様を見て、自分たちもこんな恋愛ができるのだろうかと2人は映画を見た感想を話し合っていた。




 そして、お昼を軽く食べた後はカラオケで盛り上がり、買い物に出かけた。


「瑞希は何か見たいものはある?」


 凛華がそのように聞いてきたが、昨日のうちに買い物を済ませると同時に色々な店を回ったこともあって、特に見たいものがなかったので瑞希が首を振ると、



「それならちょっと寄りたいお店があるから付き合ってもらっていい?」



 凛華からそのように言われたので、瑞希も「うん、いいよ」と頷いた。



 凛華に連れられて着いたのは洋服屋だった。


「本当は昨日買いたかったんだけど、ピンとくるものがなくって。だから、ここで瑞希が気に入ったものをプレゼントしたいなって」



 凛華は申し訳なさそうに言ってきた。どうやら、彼女は放課後に瑞希同様買い物に出たようだが、家を出る前に成績表を見られたようで、母親から軽くお説教を受けていたようだ。



 普段の授業態度が聞いているようで話を聞いていなかったり、元気があるのはいいことだが、休み時間に友人とはしゃぎ過ぎであったりするということが担任からの一言にオブラートに包まれているが書かれていたようだった。


 そのため、買い物に行ける時間も少なくなり、短い時間では瑞希へのプレゼントを買えなかったそうだ。



「なるほどね…。だからもう少し授業に集中してって去年も、二学期が始まる前にも言ったのに…」



 瑞希は凛華の授業中の様子を中学では2年生の時だけだが、小学生のころから知っていたので変わらないだろうと思い注意していたのだが、受験生となっても変わっていなかったのかと呆れていた。



 そして、2人で洋服を見て回ったが、いまいちピンとくるものがなく、結局冬用品ということでマフラーを見て回った。今の彼女がつけているマフラーは、小学生の頃に母に買ってもらったもので、だいぶ時間も経っているので買い替えてもいいだろうと思ったからである。



「う~ん、それならこれかなぁ…」



 2人でマフラーを見て回り、瑞希が色の指定をして残ったものから選んだのは、コンを基調とした赤と緑のクリスマスカラーで柄が編み込まれているものだった。



「それならこれを私からのプレゼントにするね!」



 凛華はそう言って会計を済ませると、お店を出たところで瑞希にそれを手渡した。


「はい、プレゼント」


「ありがとう」



「せっかくだから私が巻いてあげるね」



 凛華は瑞希に手渡したが、それを再び受け取ると瑞希の首に巻いてくれた。



「ありがとう、暖かいよ」


「どういたしまして」



 そうして、凛華からのプレゼントを受け取ると、瑞希はカバンから包装された箱をとりだした。


「はい、これが私からのプレゼント」


「え~、何が入ってるんだろう…。開けてみてもいい?」



 凛華は中身が気になるようで瑞希にそう問いかけると、瑞希もうんと頷き、凛華が包装紙を剥がして開けるのを見守っていた。



「わ~…綺麗…」



 凛華が取り出したのはスノードームだった。



 瑞希から凛華へのクリスマスプレゼントはお婆さんのお店で買ったスノードームで、瑞希がお婆さんからもらったものもスノードームだった。



「昨日不思議なお店で買ったの。ニコニコしてるお婆さんがいたけど、そこの商品は全部手作りって言ってて、とても綺麗だったの」


「そっか~…」



 凛華は瑞希の話を聞いてはいるものの、その目はスノードームの中で散る雪に目を奪われていた。



 ドームの中にあるのは、雪だるまとツリー、クリスマスプレゼントが入っているだろう箱、しか置かれていないもの、その素朴さが美しく思えて、2人でしばらくそれを眺めていた。



「ありがとう! これ大事にするね!」


「どういたしまして。そんなに喜んでもらえたなら私しも嬉しいかな」



 瑞希は凛華があまりにも嬉しそうにしてくれるのでこれを送ることができて良かったと思っていた。そして、凛華がそれを丁寧に箱に戻すと、2人でもう一度そのお店を帰りに寄ってみるという話になった。




「………本当にここにあったの?」


「うん、多分、そのはずなんだけど…」




 瑞希が昨日訪れたと思われるところへと行くと、そこは何もないただの空き地で近々ここに家が建てられるという話が上がっていた場所だった。周囲に民家も並んではいるが、ここは数年前に引っ越しをしてからは空き地で何も建てられていなかったのは確かなところだった。


「う~ん、本当に瑞希の記憶違いではないの?」


「自信はないけど、ここで間違いないはずだよ。昨日ここの景色を見たから…」



「そっか…」



 2人はどこか釈然としない気持ちを抱えたものの、昨日いたお店は違う場所だったのだろうという結論で落ち着いた。



(あのお店やお婆さんも不思議な感じがしたし…、もしかしたら、それこそダンジョンみたいにファンタジーな力でも働いたのかな…)


 瑞希はそのようなことを思うが、まさかそんなことはないだろうと自分で否定をして凛華と共に凛華の家に向かった。



「メリークリスマス!」

「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」



 凛華の音頭でクリスマスパーティーは始まり、両家の母が用意したケーキやお肉を食べてパーティーは盛り上がった。そして、家族ぐるみでプレゼント交換会が両家の父主催で開かれるとそれぞれの手にプレゼントが渡った。



それから時間が経ち、大人たちがお酒を飲み始めると、聖奈は疲れたということで先に自室へ戻り、瑞希と凛華は凛華の部屋に向かった。



「いや~、今年も盛り上がったね」


「そうだね。お父さんたちもいろいろ考えてプレゼントを買ってきてくれたみたいだしね」



 瑞希が受け取ったプレゼントはぬいぐるみで、可愛くモコモコしたフクロウだったので抱き心地がとてもよかった。


 凛華がもらったのは、バスボムでこの時期のお風呂に入れたらいい香りがしそうなものだった。


「そうだね。でも、私はお風呂がいつも最後の方だから使う機会があるかわからないけど」


「それは、まぁ早く入るときに使えばいいんじゃない?」



 2人でそんなことを話していると、互いに眠くなってきたのか言葉がだんだんと少なくなってきた。そして、そんな時に凛華はふと思ったことを呟き始めた。



「今って、色々大変じゃん…? でも、来年も…、これからも…、こうして、楽しいクリスマスを過ごしたいね…」



 凛華が不意にそのようなことを言ってくるので瑞希はびっくりしたが、確かにそうだと思い、


「うん、そうだね…」



 瑞希も同意を示したところで会話は終わり、部屋には静寂が訪れた。




 中学3年生のクリスマスの夜はこうして更けていき、瑞希は不思議な体験をしたものの、互いの部屋には不思議と目を引かれるスノードームがその日から部屋の飾りとして置かれるのだった。

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