第2話
彼女を、救いたいと思った。
思っただけ。
偽物の煙草。火を点けようとして、ライターがないのに気付いた。
「そうか」
彼女に渡して、そのまま。
「新しいの、買わないといけないな」
ひとり。海岸線。同僚の車が来るのを待っている。
仕事終わり。心の底が、黒く澱んでいるのを感じる。仕事内容からすれば、軽いほうだった。心なんて。仕事には必要ない。
偽物の煙草を、口にくわえながら。海岸を眺める。
彼女に言われるまでは、幻想的で魅力的な海岸だと思っていた。デートスポットで、ボトルメールや海に贈り物をすることができて。そして、この夕陽と空。圧倒的な景色。
「そんなものか」
綺麗なものの中身が、必ずしも綺麗だとは限らない。
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