ゆめ

 「夢に見た」

 微睡みに聞こえる聞き覚えのある知らぬ声

 「夢を見た」

どんなという問いはなく。

何のという思いもない。

 「生きている事が許せなかった」

 「息している事が許せなかった」

 「生きている事が嘘だった」

それは事実。それは真実。

しかし其れ等全ては狂言だ。

 道化が嘯き誠を囁く。

「それはただの夢である」


 深く暗い水の中、水音だけが鳴り響く。

冷たく暖かい水の底。

深く、深く息を吸う。

 空気の吸えぬ此処だけど、息が吸える此処だから。

 「吐き出す息を吸い込んで」

更に深く沈みゆく。

うつらうつらと瞼が落ちる。

ふわりふわりと意識が浮かぶ。

ゆらりゆらりと身を投げた。


––––どこまでも暗く明るい水の中。

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