第41話『受け止め方』
やくもあやかし物語・41
『受け止め方』
アノマロカリスのお腹を探りまくった。
これが人間だったらくすぐったくて、とっくに降参してただろう。
アノマロカリスは縫いぐるみだから文句も言わないでされるがままになっている。
交換手さんの言い方は、俺妹の女子キャラがまだ隠れているという感じだ。
でも、人間だったら笑い死にしてるってくらい探っても出てこない。俺妹キャラは小さい縫いぐるみだけど、これだけ探ったら手触りで分かるはずだ。
あきらめかけたころ、小さな紙切れが手に触る……レシートだ。
お父さんは忙しいもんだから、他の用事のついでにクレーンゲームで取ったんだろ。
コンビニやら文具屋やらのレシート、駐車券、クーポン券……ちょっと入れ過ぎ。
ポイ捨てしないということでは真面目なんだろうけど、それを縫いぐるみの中に入れっぱにしてるのは問題だ。
外面は良いけど、家族には無頓着。いまさら思い出すお父さんの性格……でも、紙くず多すぎ。
あれ?
紙くずの中に妙なものが……メモ……手紙だ。
―― やっと見つけたよ、やくも好みの子ネコ。やくもも見つけたね、この手紙を。お金は払ってある、受け取りにいくといいよ。都合がついたらいっしょにいくんだけど、ダメだったらお母さんと行っておいで。 ――
手紙の下にはペットショップの住所と簡単な地図が書いてある。
そうなんだ! そのころ、ネコを飼いたくてお願いしてたんだ!
お父さんもお母さんも生き物を飼うことには慎重だった。だから、なかなかウンと言ってくれなくて。アノマロカリスをもらったころには諦めかけていた。諦めかけていたから縫いぐるみを集め始めたんだ。
お父さんも、こんな手の込んだことやって……あっさり言ってくれていたら、直ぐにでも引き取りにいっていたよ。
ほんとにタイミングの悪い親子だったな。
ん? なんか忘れてる……そーそー! 俺妹のキャラだ!
でも、そんなのない。まさか、アノマノカリスの中に縫い込んだ……そこまではしないよね。そんなに暇なお父さんじゃなかったし。
机の上に並んだキャラを眺める。
桐乃、黒猫、あやせ、麻奈美、バジーナ、メルル……桐乃、黒猫、あやせ、麻奈美、バジーナ、メルル……
分かった! カナカナが居ない!
桐乃やあやせと同級の来栖加奈子、メルルのそっくりさんイベントで一等賞を取った……ああ、そーか!
閃いて、机の上のメルルをひっつかむ!
……やっぱり!
メルルと思ってた縫いぐるみは来栖加奈子のコスプレだったんだ!
あらためてぬいぐるみを見ると、メルルの可愛い顔は来栖加奈子のニクソサに変わっていた。
―― いえいえ 変わったのはやくもの受け止め方ですよ🎵 ――
受話器もとらないのに交換手さんの声が聞こえた。
☆ 主な登場人物
•やくも 一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生
•お母さん やくもとは血の繋がりは無い
•お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
•お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
•小出先生 図書部の先生
•杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
•小桜さん 図書委員仲間
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