第22話『体重大事件・2』


やくも・22『体重大事件・2』    






 挨拶と食事は人間関係の基本だよ。




 おはよう さよなら ありがとう 行ってきます ただいま じゃ ども 失礼します おっす いただきます ごちそうさま


 相手や状況によって使い分けるけど、挨拶さえできていれば最低の人間関係は維持できると思う。


 学校でも家でも同じこと。


 わたしってコミュ力が乏しい。だからこその挨拶。挨拶さえできていればそのあとが寡黙でもなんとかなる。


 家では、挨拶プラス食事だ。


 家族と言うのは寝食を共にしているので、挨拶だけでは不十分だ。


 三度の食事は(学校に行ってる時は二食)必ず一緒に食べる。一緒に食べることで、とりあえずの一体感は維持できるんだよ。


 好きなラノベに『俺の妹がこんなに可愛いわけがない!』がある。


 オタク趣味をめぐっての高坂桐乃と京介兄妹のラブコメ。けして家族のコミニケーションが多いわけじゃない、いろいろ問題も起こるんだけど、挨拶と食事はきちんとしてるんだ。


 さっき書いたように挨拶してる。ケンカしてても「ごちそうさま」「いってきます」「ただいま」とかは欠かさない、食事は家族そろってるしね。そういうとこに親近感もって読み始めて、今は中古だけどDVDも持っている。


 わたしに桐乃みたいなルックスと才能と京介みたいな兄貴が居たらと思うんだ。


 思ってる間は幸せでいられるしね。


 


 で、食べ過ぎてしまう。




 残しちゃ悪いと思って食べてるうちに、それが普通になってしまった。


 お婆ちゃんが、なにくれとなく間食を勧める。お八つよ~ とか 羊羹切ったわよ~ とかね。


 さっきも言ったけど、わたしは口下手。だから、キチンと食べることで親愛の情を示すことになる。


 会話が1だとしたら、食べることが3とか5とかの感じ。




 で、前回の図書室のカウンターでの事件になったわけ。




 しょぼくれて崖道に差しかかる。


 下校はつづら折りの道と決めているんだけど、ウジウジ考えてトチ狂ってしまった。


 ペコリお化けにお辞儀だけの挨拶しなきゃ…………え?


 ペコリお化けの定位置に立っていたのは、図書室の窓際にいた女子の一人だ。




 図書室に居た時は分からなかったけど、こいつは付喪神(つくもがみ)だ。


 歳古びた道具や身の回りの品物に宿った神とか精霊、たいてい人に悪さをする。


 学校の図書室に出たということは、学校の付喪神? それとも、わたしが連れてきてしまった?


「うふふ、そんなに警戒しないでよ」


 付喪神が、そのナリにふさわしいアニメ声で話しかけてきた……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る