摂理の破壊者〜ステータスが低く見えるバグでギルドを追放されたけどオーバーフローしたステータス(4294967295)を得たのでこのクソみたいな世界とルールをぶん殴ります。今更止めてももう遅い。〜
最終話 摂理をぶん殴れ (8)ラストバトルは呆気なく
最終話 摂理をぶん殴れ (8)ラストバトルは呆気なく
レイの作戦はこのようなものであった。
まず、ブレイドがドミネアを倒す。
最もハードルが高いのは彼女も理解していた。だが、彼女はブレイドならば出来ると信じ、彼に託した。
だがそれが為せたとしてもドミネアは死なない。正確には、ドミネアが死ねばブレイドも死に、ドミネアは魔界の軍勢が恐らく再生させるだろう。
それを防ぐために、ブレイドがドミネアを倒す直前に、ストレアがバグを具現化し、ライフ共有のバグを取り除く。突然バグが具現化する事で、ドミネアの隙を生じさせ、結果としてブレイドのサポートにもなるだろうという予測もあって、タイミングはこの瞬間を狙うという事で落ち着いた。
だが、ただ殺しただけでは、ライフ共有バグがなくなったとしても、魔界の軍勢による再生という可能性は残る。
それを潰し、そしてミアとミカが二重人格か何かだとして、彼女らを救う方法として、
そうすればドミネアは再生出来ない。そしてミアとミカが分かれる。もしミカが無罪なら、ミカを救う事にも繋がるし、何にせよバグの解除にも繋がる。まさしく一石二鳥のアイデアだった。
これを実現するには、ブレイドの奮闘が欠かせなかった。
それはトマ主教とゴウのフォロー、そして人々の祈りで為す事が出来た。
まさしく勇者だ。レイは心の底から感服していた。
「これは……私が二人……違う。ミア、か?」
先程までレイと交戦していた方のミアが、もう一方のミアの方を見て言った。
「この傷……ドミネア様の体……!!まさか、そんな!!」
もう一方のミアは自分の肉体を形成しているものが他者の、ドミネアのそれである事に愕然していた。
「私が肉体の持ち主のはず!!私が神に選ばれた存在なのに!!何故私の肉体をミカが使っている!?」
ミアと思われる方が、ミカと思われる方に、取り乱した様子で叫んだ。
レイは答えを認識していたが、何も言わず、ただ「言ってやれ」という目でミカの方を見た。
「……思い出せ。私とお前、どちらが先に同居に気付いたか。
ーーやめろ。
ミアの無意識が叫んだ。
「私の時は老化し、お前の時は老化しない理由は何故か。」
ーーやめろ。
「魂牌流を形にしたのは私だ。お前は私の知識を使っただけだ。何故か。」
ーーやめて、くれ。
「お前が異物だからだ。元々この肉体は『ミカ・デュルーア』、即ち、私の物だった。お前はただ、私の肉体を借りていただけに過ぎない!!」
「違う!!私がオリジナルだ!!私が!!私が!!神に愛された女だ!!」
ミアは立ち上がりながら叫ぶと、構えを取った。
「なんだそれ。」
レイも知らない構えだったが、ミカには覚えがあった。
「それは……やめろ!!」
ミカはミアに対して叫んだ。
「ミカ!?」
「それは対象の人間のステータスをコピーし、1だけでも上回るようにする、強敵への対策となる最終奥義、
それを聞いてレイはミカが止める理由を理解した。
「それはやめとけ。自殺行為だ。」
「ははははは!!今更命乞いですか!?」
「お前のために言っているんだ!!それはステータスの一時変動ではなく、とにかく自分の肉体を対象の人間に合わせる、強制成長技!!それをやれば自身の肉体はズタズタになる!!一瞬だけで燃え尽きる、流星のようなものだ!!」
「いや、そういう意味ではなくてな?」
レイの言葉はミアには届いていなかった。
「流星で結構!!貴方達、貴方達だけは許しません……!!特にレイ、貴方の存在は、私を惨めにさせる!!貴方のステータスを借りて、貴方の力で殺してさしあげます!!」
レイはミカの肩に手をやり言った。
「放っておけ。」
降りてきたストレアもそれに同意した。
「そうよ。やらせておきなさい。」
「しかし!!」
「覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ミカの焦りとは裏腹に、ミアの技は発動しーー
「……………………ん?」
ミアは溢れんばかりの力を得たと思った瞬間、急に体が重くなった事に気がついた。
違和感がある。何か浮遊感がある。どうにも、地に足がつかない感触を覚えた。
「あれ?」
ミアはその足を見た。
無かった。
足が無かった。
「へ?」
ミアはきょとんとした顔で前を見た。
ミカが驚いた様子でミアを見つめていた。
レイとストレアが「あちゃー」という様子で頭を抱えていた。
「なあストレア。4294967295に1を足すとどうなる?」
わざとらしい声でレイが言った。
「0よ。オーバーフローするから。」
またわざとらしい声でストレアが答えた。
「0になったらどうなる?」
「全部のステータスが0なのは魂だけ。つまり魂になる。そーいう仕様よ。」
レイとストレアは実例を見ていた。
かつてコズドー鉱山にいた、いや、今もいるかもしれない、ユウという名の元魂を。
「魂になったらどうなる?」
「転生する。例えば、ゴーストに。」
そこでミアとミカは理解した。
「え。じゃあ、なんですか。今の私は、その。」
今までの勇ましい声とは全く違う、ぼけぼけとした声で、ミアは問うた。
「そういうこった。お前は今、ゴーストに転生しちまったんだよ。」
ふわふわと浮く、魂の実体物、ゴースト。
それと化したミアは嘆きの叫びを上げた。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
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