何気なく作った剣がすごい切れ味だった

「うーん」


 俺は工房で唸っていた。


「いかがされましたか? フェイ様」


 俺の近くには二人の美少女エルフがいた。ユースとソフィアだ。


「武器を鍛錬するのはいいんだけど、何を作ればいいのかなー」


 具体性が必要だった。一体何を作ればこの国の為になるのか。


「でしたらエルフ兵の為に剣を打ってくださいませんか? 以前ご指摘されましたように我が国の兵は大した武器を持っておりませぬ」


「ふーん。エルフ兵の為の武器ねー」


 兵士という事はそれなりに数が必要だろう。という事はあまり性能の高いものを作るよりは量産した方が良さそうだった。


「質より量を多く作った方が良さそうだな」


「はい。それでお願いできればと思います」


「……それじゃあ適当に作っておくよ」


「はい。楽しみにしております」


 ユースは笑みを浮かべる。



 それから俺は数日間、ひたすらに剣を鍛造していた。こうして鍛造した剣は10振りほどだ。



「出来た!」


「お疲れ様でした。フェイ様」


 ソフィアが俺を労う。


 自分で言うのもなんだけど、そこそこの出来だった。


「ソフィア、エルフの兵士さんを呼んできてくれないか? 試しに振って貰いたいんだ」


 試し斬りをして貰いたかった。


「……はい。手配いたします」


 

 平野にエルフ兵達は案内された。目の前には大木が一本立っている。


「それでは皆様にフェイ様の鍛造した剣をお渡しします」


「はっ! ありがたき幸せであります」


 数人のエルフ兵がかしづいていた。


「性能を試してみたいそうです。誰か一人、前に出なさい」


「はっ! では隊長である私が」


「これがフェイ様のお作りになった剣です」


 ソフィアはエルフ兵に剣を渡す。


「なんと美しい剣でしょうか! 素晴らしい! 今までの使っていた剣とは見違えています!」


「ただの量産品で悪いだけど」


「滅相もありません! 素晴らしいものを提供頂きありがとうございます」


「それでは試し斬りをお願いします。性能を確かめたいとの事です」


「はっ! ではっ! 参ります」


 エルフ兵は剣を構える。


「……てやあああああああああああああああああああああ!」


 声と共に剣を振るった。

 

 手応えがなかった。


 しかし次の瞬間。ドサーーーーーーーーーン! と大きな音がして大木が真っ二つに斬れたのだ。


「な! なんともの凄い切れ味でしょうか! 木がバターのように斬れてしまいました」


「フェイ様! こんな素晴らしいものを我々に作ってくださり誠にありがとうございます!」


「そうかな……俺は普通の剣を作っただけのつもりだけど」


「滅相もありません! こんな素晴らしい剣他に見た事がありませぬ! あなた様のおかげですフェイ様! あなた様はこのエルフ国の救世主だ!」


「……そ、その剣を俺にくれ!」


「馬鹿! 俺のものだ!」


「やめないか! 君たち! フェイ様の鍛造した剣は上層部で決めた者に割り振る事とする!」


「心配しないでもいいよ。エルフ兵に行き渡るように作っておくから」


「フェイ様、何と言う寛大なお心。エルフ兵を代表してお礼申し上げます」


 なんか、えらい感謝されているな。普通に剣を鍛造しただけなのに。


「俺は工房に戻るから、また何かあったら言ってよ」


「「「はっ! フェイ様! この度は誠にありがとうございました」」」


 こうして剣を鍛造して渡したらエルフ兵に滅茶苦茶感謝された。

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