第44話 柔らかな炎
「……剛、大丈夫かな」
あの戦いから元気がなくなっていた剛。
数日してちょっとマシになった気がするけど、なんとなく無理をしてるような気もする。
だけどそれについて聞く勇気もなく、私は何も出来ずにいた。
小さくため息をついてから、腕を枕にちょっと寝ようとする。
共有スペースだけど、今は皆医務室に集まっていたハズ。
つまり今ここには私一人しかいないことになる。
と、思ってたけど……
「おや?穂ノ原さん、お昼寝ですか?」
「あれ?望月さん。医務室にいたんじゃ?」
「いえ、私は別に医務室に用事はありませんでしたから」
「そうなんだ」
「よろしければ、少しお話でもしませんか?大風さんも穂ノ原さんも、あまりしっかり話せていませんでしたし」
「大丈夫だけど……どうして?」
「まぁまぁ、それも含めて恐らく話すことになりますよ。話題は……そうですね。穂ノ原さん、悩みがおありでしょう?ズバリ大風さんの事で」
「え」
見透かされてた。
「図星でしょうか。自分としてもやはり同じ組織のメンバーが悩んでいるのは気になるところですし、嫌でなければそのお話でも」
「うん……むしろ、ありがとう」
正直結構悩んでたから、こうして聞いてもらえるだけで結構楽になる。
「実は……」
私は望月さんに大体の事を話した。
ざっくり纏めるとあの戦い以来元気がない剛に対してどう声をかければ良いか分からないと。
それを聞いた望月さんは、ちょっと嬉しそうに微笑んだ。
「どうしたの?望月さん」
「ああ、すみません。ちょっとここに来る前の仲間の一人について思い出してまして。あなたにそっくりな人でしたよ」
「どんな人?」
「底抜けに優しくて、でもそれ故か特に他人との関わりとなるとちょっと心配性な人でした。辛そうな人に声をかけてあげたいのに、距離感を間違えたらどうしようと思ってどうすべきか分からなくなるところもあなたそっくりです」
「……褒めてる?」
「ええ。私にとって、昔の仲間たちと並ぶほど素晴らしいと思える人はそういませんから。そんな人を思い起こすということは、あなたが少なくとも私の目にはそれほど良い人に映ったということの証明ですよ」
「ありがとう。他にはどんな人がいたの?」
「そうですね……例えば周りを引っ張るどころか引きずり回して、それでも誰もがついていくようなリーダーや、それを唯一止められる冷静なストッパー、後はここ一番に凄く強くて大事な場面で誰よりも頼りになるような人もいました」
「ふーん……その……」
その人たちは今どうしてるの?
そう聞こうとした口を急いで閉じる。
ここにいるという事実が、起きたことの大体を物語っているから。
多分、望月さんの仲間は……
「……まぁ私からアドバイスするとすれば、案外思い切り大風さんにぶつかってみても問題ないと思いますよ。私が思うに大風さんは……いえ、これは余計なお節介ですね」
「?」
「では、私はこんなところで。これからも応援させていただきますよ、色々と。ですから何かあればご相談いただいて構いません」
「ありがとう……」
望月さんは何を言いかけたのか、気になるところだけど追及はしないでおこう。
望月さんが部屋を去った後、結局私はちょっと寝る事にした。
でも次に目覚めた私はきっとさっきまでとはちょっと違う。
そうだよね。
私は剛に助けて貰ったんだ。
その恩も返したいし、何より剛の力になりたいから。
剛本人には、恥ずかしくて言えないと思うけど。
けどいつか、そんな恥ずかしいことも言えるといいな。
私の想いも、いつか……
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