罪のない不倫
「いかかでしたか?ご気分など悪くありませんでしょうか?」
男はゴテゴテした金属製のヘルメットをゆっくり外した。
「はい…大丈夫です。しかし、不倫というのは恐ろしいものですね…」
「そうでしょうそうでしょう、浮気心というのは誰しもが持っているもの、しかしその誘惑に負け、快楽に身を委ねた先に待っているのは決まって悲劇なのです」
「ええ、あれほどの美女は見たことがありません。それが私に言い寄って来たのですから…あんなに心が躍ったことは初めてです。マグマのように情熱的な女性でした…」
「そうでしょうそうでしょう、で、その後はどうなりました」
「勘弁してください。あなたもわかってるでしょう。…妻と子どものあんな悲しい顔はもう二度と見たくありません」
「そうでしょうそうでしょう、この不倫体験ヘルメットをご使用になられた人は皆そう言われます。私どもも皆様の純愛のために仕事ができて光栄です」
「はい、ありがとうございました。絶世の美女の甘い言葉、気をつけなければいけませんね…」
「これは擬似体験ですから誰も傷付かずに不倫体験が出来るのです。くれぐれも現実では道を踏み外さぬように…」
「もちろん、肝に銘じておきます。それでは失礼します」
男はそう言うと出口に向かって歩き出した。
しかし、急に立ち止まり振り返って言った。
「ご相談なのですがそのヘルメットを売っていただけませんか?あ、いえ、それがあれば不倫の悲劇性について、〝いつでも〟勉強ができますので…」
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