第26話 崩壊していく皇太子と婚約者
「どうして、あの女の罪が許されるのよ!!」
私は、激怒して、部屋の中で暴れる。
「おやめくださいませ。皇太子殿下の婚約者様がそのようなことをやってはなりません」
「うるさい。あんたたちは、いつも口うるさすぎるのよ!! 侍女の分際で、高貴な私に口答えするなんて百年早いわ」
「しかし……」
「皇帝陛下が、私の婚約者である皇太子様の非を認めたのよ!! そんなことって許されると思う? 自分の後継者である息子と婚約者よりも、あの女の言い分を信用するなんてありえないわ」
「落ち着いてください!」
「どこが落ち着いていられるのよ!? 皇太子さまともう一度、お話をしてくるわ」
「お待ちください。予約もなく、皇太子さまに面会を求めるのは……」
「私は、彼の婚約者よ! 婚約者の間柄でそんな他人行儀なこと言われる筋合いはないわ!」
私は廊下を走って、殿下の部屋までやってきたわ。侍女たちは必死に引き止めにきたけど、そんなのは関係ない。
「殿下、失礼致します」
私が部屋に入った時、皇太子様はびっくりしていたわ。会えたのがそんなに嬉しいのね。
「どうしたんだ。こんな夜更けに?」
「ニーナ公爵令嬢の件ですわ」
「あの件は、何度も話しただろう。父上が決めたことだ。僕ではどうすることもできないんだよ」
「何を弱気なことを。あなたは将来の皇帝陛下なんですよ。にもかかわらず、あなたの意向は、無視されたんです。悔しくはないんですか?」
「悔しいに決まっているだろう。父上は、僕の言い分ではなく、フランツやニーナのほうを信用したんだ。こんな屈辱的なこと、他にあるもんか!」
そう言って、殿下は酒をあおった。
「僕はいつもそうだ。同年代にフランツやニーナのような優秀な奴らがいて、いつも比較される。立場だけが偉い皇太子なんて、陰口をたたかれていることも知っている。そのプレッシャーにいつも押しつぶされてきた。ついには、父上も僕よりも奴らのほうがかわいいと認めたんだ!!」
ああ、かわいそうに。彼は、酒浸りの日々をおくっているようね。
「わかります。殿下は、私と同じように、あの女にいじめられ続けてきたんですね。それでやっと彼女に仕返しができたと思っていたのに……信じてくれるはずのお父上にまで裏切られた」
「そうなんだ。私の味方は、もうキミしかいないんだよ、メアリ。もう嫌なんだよ。自分がどんなに情けない存在か見せつけられるんだ。みんなふたりのことばかり褒めて、一切、僕のことを見てくれない」
「私は、あなたのことを見ています。あなたを見ない人たちが悪いんです。あなたは変わる必要はありません」
「僕はどうしたらいいんだ、メアリ?」
「私に考えがあります。殿下は、私を信じてくれればいいんですよ」
私が差し出した手に、殿下はすがるように「わかった」とすがりついてきた。
ああ、かわいい。
私は、彼を助けて素敵なヒロインになるのよ。
国民全員をひれ伏させてあげるの。
その中には、あのムカつく女と辺境伯も含まれるわ。
私のやりたいことを邪魔する奴らは、みんな潰してやる!
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