第16話 ショッピング
「あー、全部かわいいですわ。ニーナ様はスタイルも抜群ですし、なんでも似合っちゃうから、余計に選びがいがありますわね」
「いくらなんでも、私を着せ替え人形代わりにして、遊んでるだけじゃ……」
「違いますわ。ニーナ様の体が素敵すぎるのが、いけないんですよ。私は、それに魅せられただけですもの。次は、この淡いピンクのブラウスとかもいいですわね。すいません、試着室借りますわね!」
「もうだめええええ」
こんな感じで、私はマリアの着せ替え人形になっていた。
立場も立場だったせいで、こういう普通の服ってあんまり着たことがないのよね。
いつもフォーマルなドレスや、学校指定の制服とかだったし……
部屋着ですら、ラフなものでも着ようものなら各方面から苦情が来ていたし……
だから、同年代の子が着るような服ってよくわからないのよね。マリアに頼んでいろいろと選んでもらっているわ。
職場で事務をするにも、ある程度動きやすい服の方がいいし……
ちょっと、多めに買っていきたいとは伝えたけど……
「それでは、12万9000ルビーになります」
なんかすごい金額になっていた。さすがに世間知らずの私でもわかるわよ。これは買いすぎじゃ……
「はい、これでお願いします!」
マリアは即決で、私の服を大量に購入した。一体、いくらお小遣いもってきたのよ……
「ちょっと、マリア……さすがに、買い過ぎじゃ……」
「大丈夫ですよ。夏にも着こなしやすいものも選んだので! それに、お兄様から20万ルビーまでは買ってよしとお許しをもらっていますから!」
「さすがに、
「大丈夫です! ニーナ様? ニーナ様クラスのヴォルフスブルク語の専門家を雇うのに必要な月収はいくらくらいだと思いますか?」
「えっ、30万くらいかしら?」
「低すぎますわ! ヴォルフスブルク語を母国語並みに操り、宮廷マナーにも通じていて、大貴族に顔がきく人材を雇うためには、月に100万ルビーは必要ですわ! 自分を安く見積もりすぎです!!」
「……うそでしょ?」
「いえ、本気です!! 正直に言えば、ニーナ様はどこの領主様も喉から手が出るほど欲しい人材ですわ。月に100万は最低の条件です。だから、これくらいの出費なんて、安いものですわ。お兄様のお仕事を頑張って手伝ってくださいね!」
責任が重すぎる気がするけど……
でも、それだけ私に期待してくれているってことよね。
がんばらないと!!
「それに、お兄様にニーナ様のかわいいお姿をいっぱい見てもらわないといけませんわ。お兄様の反応がとても楽しみですわ!」
「マリア、あんまりハードルをあげないで!!」
似合わなかったらどうしようと不安になるじゃない!
「大丈夫ですよ、どの服を着ても、ニーナ様はとてもお似合いですもの!」
ニーナは屈託のない笑顔になる。
「もう、ふたりはいつも私をそう言ってからかうんだから……」
本当に兄妹ね。反応が同じだもん。
でも、これが皇太子さまの婚約者としての私じゃなくて、本当の私の生き方への第一歩なのね。
友達と街に出て、ご飯を食べて、ショッピングするのってこんなに楽しかったのね。
私は今、とても幸せよ。
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