雪崩

 最初の村に着き、一休みした後はひたすら雪山を進む。

 太陽の光が雪で乱反射して、かなりまぶしい。

 最初ははるか上らしき場所から聞こえた、軽快な音だった。何かを弾くような音。

 イェードはそれになにか、言いようのない不安を覚えて、隊を止めて上を見上げた。

 その後、地響じひびきが聞こえた。

 凍りついた雪が、陽光に照らされて若干だけ溶けた雪が、山の一部から崩れ落ちた。

 轟音と大質量なって隊に降り注ぐ、雪たち。

 イェードが的を射抜くがごとく、その雪崩なだれの位置は隊にとって致命的だった。

 アザトを中心とする、真ん中の半分以上、およそ三〇〇人近くが生き埋めになったのである。

 隊の最前線で指揮していたイェードは無事だったが、あっという間の出来事でアザトがその身の痕跡こんせきさえ残さずに埋められてしまった。

 最初の一時間ほどはイェードが生き残りを連れて崩れた先を行き、救出に向かったが、雪崩に巻き込まれなかった隊の『頭と尻尾』以外はほぼ助からなかった。

 絶対に助からない。それだけの量の雪が滑り落ちてきたのだ。

 アザトは、他二〇〇人以上は死んだのだ。

 イェードは隊列を組み直すと、ゼロ国へと戻った。

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