対竜戦役
人類の十倍前後はありそうな成体の
暗褐色に灰色など。
集落は荒らされ、人が
派兵され集落を制圧していたゼロ国の軍隊が
イェードも戦力の半分を集落からやや離れたアザトの場所に残し、残る軍、約五〇〇人で戦いに
追加の戦力としては心もとない。イェードは自分の指揮能力を信じるほかになかった。
数十の
巨弓部隊を高速で展開しながら、現場で指揮を取っていた者から話を聞くイェード。
「成体の竜は厄介すぎます!
巨弓の矢も通さない魔力結界で覆われているのです。
それに巨大な炎を吐きます!!」
炎を吐くのは知っているが、巨弓の矢までが通らない竜を見るのは初めてだった。
魔獣イェルダントですら、巨弓の攻撃は通るのだ。たとえ魔力結界で自身を防護していても。
「矢を放ち続けろ!!
竜をこちらに近づけさせるな!!」
命令したイェードは、ファングボーンを地面に置き、剛弓を構える。
狙いは、成体の竜のうち一頭の眼球だ。
矢を放った直後、目を射抜かれた竜が悲鳴を上げた。魔力結界が乱れ、いくつかの巨弓の矢がその体を覆う鱗を貫通する。
「魔力結界を展開中は、視界が悪くなる。
その眼の付近には結界が展開されていない」
成体を一頭仕留めたかに見えたが、巨竜が前方に魔力を展開し、全ての矢を阻む。
魔力結界は赤色だが、さらに竜の全身を緑色の発光が覆う。
特に矢の刺さった傷口付近が強く輝いている。
矢が筋肉から押し出され、鱗の穴が塞がれていく。
「
イェードが驚く。治癒魔法。それも、極めて強力なものだった。
鱗に空いた穴まで塞がり、傷が完全に修復される。矢は地面へと再生した肉に押し出されて地面へと落ちた。眼球も、しっかりと修復されていく。首を振って眼に刺さった矢を落とす。
先ほど眼を攻撃した竜一頭が、ファングボーンを構え直したイェードへと近づく。
指揮官の一人が悲鳴を上げて巨弓の元へと下るなか、イェードは竜の一頭と一騎討ちをした。
イェードも筋力強化の魔法、その出力を全開にする。長くは戦えなくなるが、長期戦で不利になるのはどちらにせよ望まない。
竜は正面、特に前足を防護結界の色で真っ赤にして、イェードの首を取らんと右足を振る。
イェードの得物、ファングボーンと竜の右足との間で圧がかかる。
魔力結界と激突して、漏れた力が電圧となって火花を散らす。
ファングボーンに
前足を弾き返すと、竜の頭に一撃を見舞った。
魔力結界を貫通してファングボーンの牙が刺さり、棍棒本体がぶつかる。大きな
その巨体に、さらなる一撃が振り下ろされた。
竜にもう少し経験や知恵があればイェードの予備動作の際に軽く、一噛みするだけでイェードを仕留められていた。賭けと駆け引きに勝ったイェードは、竜を単独で叩きのめしたのだ。
三頭の竜に、四頭にまで減った仔竜たちは、この数の武装した人間と戦うのは良しとせず、故郷の
なんとか、撃退には成功したのだ。
イェードは内実共にゼロ国の軍事力の象徴となり『竜殺しのイェード将軍』と、そう呼ばれるようになった。
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