憂国(ゆうこく)の怪魔(かいま)
ここで食い止めなければ、ゼロ国が危険だ。
一〇〇〇人に及ぶ軍隊を指揮するイェードが
まだ遠い。
まだ。
まだ、
良し。
「
張りのある大きな声で、イェードは命じた。
高速の
最前線に設置された七〇基ほどの巨弓から放たれた巨大矢、全てが風の
現在のテンペストに焦りのような感情、感覚はなかった。
自分への
テンペストの経験から、軽い抵抗のあとにはごちそうが待っている。
大災害そのものの絶対強者は、敵対種を狩るべく行動を開始した。
「速い!!」
これで巨弓による狙いは付けられなくなった。
テンペストによる攻撃、それは落雷だった。
自然界の稲妻と比較して、長時間放射され、凄まじい熱を
ボルテクスがよく使用した『
そして、威力はやはり
落雷は狙いをつけるのが難しいのだろうが、当てずっぽうでも放射数が多く、感電による死者が出た。人が一瞬で消し炭になる光景は、イェードですら強い恐怖を覚えた。
耳を押さえながら、イェードは副官と話をする。
「落雷が起こったとき、風が弱まった気がする」
心を
副官も驚きながら
「い、言われてみれば……」
「あれだけの魔法だ。同時に二種類の魔法を、同じ規模では展開できないのかもしれない」
「ですが、あの大蛇は天空に居座ったままです。
どうします?」
「少しでも相手の魔法力を
命令だ。最前線の巨弓のうち、三〇基ほどをさらに進軍させろ」
遠回しに、「
時として残酷な行動が取れなければ、戦線そのものが崩壊してしまう。
イェードの狙い通り、分散させた三〇基のうちの一部が真っ先に狙われ、雷の
そこで、テンペストが下降する。
敵の数が多すぎて魔力を使いすぎたために、自身の
イェードの狙い通りにことは運んだ。
イェードは上手く言語化できなかったが、要するに物事の
アザトでも説明し
「次の落雷が起きたときが勝負だ!
イェードが宣言する。
発射角度は限界近くまで上げている。
自然のものではない
複数発が胴体に突き刺さり、大蛇が悲鳴を上げて天から落下する。
「この機を逃すな!!
狙え!」
イェードが命令し、数百もの矢が空中を飛ぶ。上空を狙い、さらに下を狙う。
地面から持ち直して上昇しようと動いたのが、テンペストにとっては
縦波のように発射される矢がちょうどテンペストに突き刺さっていく。会心の攻撃だった。
最後の足掻きでテンペストは
稲妻が横に走るなど、前代未聞の光景だった。
各部隊に直接命中はしなかったが、イェードの真横を通るなど、最後まで危険な戦いである。
テンペストが完全に動かなくなるまで矢の射出は続けられ、この戦いで使われた巨弓の矢の数は二〇〇〇発に
テンペストの死体は持ち運ばれ、
特にその人間一人ほどもある高さの首は、見事な黒緑色の
アザトはアルルにより、この大蛇の名をテンペストと名付けると同時に、
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