剛弓

 ずぶ濡れのイェードたちが、驚きをもってその村に迎え入れられた。

 幸いにも村はボルテクスのことなど知らず、無事のようだった。

 状況をその村の者たちに伝えて、石材や人材集めについても考えてもらった。

 作ってもらった大きなき火で服を乾かし、身体を温める。

 交易用の干し肉はずいぶん雨に濡れてしまったものもあったが、次にもっと交換してくれれば良い、とその村の長は寛大かんだいだった。

 その村からは体格の良い若者を三人、連れて行くことが許された。

 また、濡れた干し肉と交換で、矢をいくつか分けてもらった。またボルテクスに追いかけられては困る。

 ふやけた干し肉を噛んで食べるイェードは、ボルテクスはどういう生態なのか気になった。

 ずいぶんな力を持っているようだが、食事をするときには地上に降りてくるのだろうか。

 だが、よほど獲物が弱らない限り、そうはしないだろうとは思えた。

 そういった考え事をしていると、村の者が大きな、太い木で出来た弓を持ってきた。

「少し前に病気で亡くなった、ラックという大男が使っていた弓です」

 よろしければ、活用してほしい、と。村人はそう言った。

 イェードは大切に受け取ると、試しに二回射って、その感触を確かめた。

 イェード隊で身軽になったものにそれを持たせ、アザト村まで帰ることにした。

 ボルテクスはいずれ狩らねばなるまい、イェードはそう思った。

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