第17話 South island drive(南の島のドライブ)
僕と山田とエディは、まずはこのデンパサール市内からの距離を考えて、タナロットより先にウルワツへ向かうことにした。ウルワツまではデンパサール市内より車で2時間程度の距離であるという。
天気もバリ島の南国の太陽がサンサンと降り注いでいる。気温は35度以上になる感覚だった。が、乾季のため湿度は低く、嫌悪感はなかった。南国の解放的な空気に満たされた車内は、バリ島で今はやっているレゲエの曲が流れている。
デンパサール市内よりウルワツ寺院まではハイウエイを使って途中まで向かう。
まずはここでデンパサールとウルワツ寺院の位置関係を説明したいと思う。
デンパサールは、バリ島の首都でもある。ということで、中心部に近いところに位置する。そこからウルワツ寺院は、バリ島の最南端に位置するという。ということはバリ島を四分割するとした右下に位置する。僕は、ウルワツ寺院へは初めての訪問となる。どんな土地柄なのか非常に楽しみである。おそらく中心部から地方へ行く感じだと思うので、そうなるとバリ島の古い習慣が残っている地域であることは間違えないと思った。
バリアンのヒーリングを受けていたデンパサール市内を抜けて、ハイウエイの案内看板を見るとウルワツの文字が確認できるようになった。そこまでは40分程度の時間がかかっていた。表示にはウルワツまでの距離が50キロと評しされていた。まだまだウルワツ寺院までは、時間がかかりそうだった。
エディ「そういえばウルワツでは夕日を背にして観光客用のケチャのダンス鑑賞もできるようですが、酒井さんと山田さんはどうしますか。」
僕「今回はこの後タナロットへ行かなくてはいけないので、またの機会でお願いしたいところではありますね。今回は日程的に余裕がるので。」
山田「そうですね。今日は次の予定もありますので、酒井さんの言われる通り、また火を改めてってことのがよさそうですね。」
ハイウェイでは、渋滞もなく心地よい進み具合である。エディが車内のクーラーを止め、窓を開け始めた。インド洋からの心地よい風が車内を吹き抜ける。信号は、全くない。周りの車は、かなりスピードを出している。だけど、ここは日本ではなくバリ島である。速度規制はあるんだろうけれども、皆、守っている様子はない。そこは、また「ティダアパアパ」な習慣である。そんな雰囲気がいい感じだ。
僕たちを乗せた車は、直線のハイウェイを調子よく進んでいる。心地よい風、南国のきらびやかな日差し、乾季のさわやかな湿度の低い空気、三拍子そろっている。日本であったらサザンかチューブの曲が似合いそうな状況である。僕のテンションは、バリ島の気温のようにどんどんと上がっていく。僕の左隣に座っている山田も気分上々の様子だった。
エディは、車の運転に集中している。僕は車内から外の色鮮やかでまぶしいくらいの景色に目をやっている。景色を眺めていると、やはり神様の棲む島といわれるだけあって、何か空気感が違う感じがする。どう違うのかといわれれば説明に困るが、僕の感覚でそう感じ取れるだけだ。
僕は一人、今、向かっているウルワツ寺院へと思いをはせている。ウルワツ寺院へ到着したならば、僕へ一体どんなインスピレーションをインド洋から伝わってくるのか楽しみである。
ハイウエイを抜け、いよいよウルワツエリアへの一本道であるジャラン・ラヤ・ウルワツという通りに入った。
繁華街のクタやデンパサールとは違いローカルな雰囲気を持つエリアであった。あたりの樹々には、精霊がいるような印象を受ける。生きているという躍動感が、あたりの樹々からひしひしと伝わってくる。また、それが僕の旅情を掻き立てる。
窓を開けて車内では、路肩の木々の間からさわやかな風が車内を通り抜けていく。その風に乗って子供たちの声が聞こえてくる。通りの側に小学校があるようだった。どの国の子供の元気いっぱいである。日本では子供は風の子といわれるぐらいだから、元気がいいのは当たり前だ。小さな体に大きなスクールバッグ、おそらく教科書など教材を詰め込んでいるんだろう。今日の宿題も入っているのだろう。
自分の家へ一生懸命に向かっている様子が、なんだかとてもかわいらしい姿である。帰宅後、友達と何をして遊ぼうなど考えながら歩いているんだろうか。どの国でも、子供の澄んだ瞳には癒される。そんなたわいもないことを考えていると、ドライバー兼ガイドのエディがウルワツ寺院の駐車場へ車を止めた。
ここでウルワツ寺院の歴史的背景を簡単に説明したい。
寺院の立地は、バリ島のバドゥン半島の南西の端に位置する寺院である。海の霊が祭られているという。11世紀にジャワの僧であるウンプ・クトゥランによって建立されたといわれる。16世紀に入り高僧のダン・ヒャン・ニラルタにより、増築が行われたといわれる重要な寺院である。晩年、ニラルタはウルワツ寺院で解脱したといわれている。このようないわれのあるウルワツ寺院の入口には、ガネーシャ像が脇を固めるアーチ状の門になっている。この中では、サンゴの壁一面にバリ島の聖獣が、所狭しと掘られている。内部の小院は、バリヒンドゥー教徒しか立ち入ることがいまだに許されないという。こんな歴史的にも重要な寺院に僕と山田は、今、降り立つことができた。
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