第8話 To the hotel(ホテルまでの道のり)
僕たちは何とか迎えのホテルスタッフと落合うことがようやくできた。今回はホテルとフライトチケットは別々だったので、空港の迎には今回のステイ先のアグン・コテージのホテルのスタッフが迎えに来てくれた。
スタッフ「お待ちしておりました。ご予約をいただいているアグン・コテージのスタッフのエディです。よろしくお願いします。今回のお迎えは、お二人だけなので、このままホテルへ向かいますがよろしいですか。酒井様と山田様。こちらへどうぞ。ホテルまでのお車を用意しております。」
エディ「オーナーから酒井様のことは、よく伺っております。今回の滞在もご満足いただけるようにおもてなしをさせていただきます。よろしくお願いします。」
僕「こちらこそ、よろしくお願いします。これは日本からのお見上げです。ホテルのスタッフの皆さんで食べてください。」と僕はエディへ日本から持参したお土産を手渡した。
エディ「ありがとうございます。酒井様、スタッフも喜ぶと思います。」
僕「ところでオーナーのアグンさんはお元気ですか?」
エディ「もちろん、元気ですよ。ただ、今回酒井様が滞在期間中は、出張でジャカルタへいっておりますので、お会いできないことを非常に残念がっていました。」
僕「そうですか。それは残念ですね。でもアグンさんも元気ならよかったです。バリ島へは、いつ来ても落ち着けますからね。」
山田「エディさん。初めまして、山田です。よろしくお願いします。」
エディ「山田様は、初めてバリ島へお越しですか?」
山田「そうですね。俺は、初めてのバリ島ですよ。酒井さんからはバリ島のすばらしさはうかがっています。」
エディ「そうですか。バリ島は、癒しの島ですし、神様の棲む島ともいわれていますからね。スピリチュアルな出来事も結構あるんですよ。滞在期間中にあればいいですね。」
僕は時計を見た。現地時間で18時だった。バリ島と日本の時差は1時間である。バリ島が日本より1時間遅いということになる。今は、日本時間は19時ということだ。現地は18時ということでバリ島のサンセットの時間でもあった。
僕と山田を乗せた車はヌングラライ国際空港から出ると、まず空港の目の前の通りであるジャラン・バイパス・ヌングララ通りと合流し、ラヤ・クタ通りを左へ曲がり一直線の路を車に揺られながら、僕たちはヌングラライ国際空港を後にした。
ラヤ・クタ通りをしばらく直進する。夕方のラッシュ時間のようで、帰宅途中の人たちで道はごった返していた。そんな景色を見ながら、車は進んで行く。
間もなくすると僕たちを乗せた車はベモコーナーへ到着する。このベモコーナーの十字路を左へ曲がり、ラヤ・クタ通りへ入る。クタビーチはもう目の前である。ラヤ・クタ通りは、いつものように相変わらず観光客でごった返して混雑している。
ラヤ・クタ通りをビーチへ向かって走る。道なりに右へ曲がる。そうするとラヤ・パンタイ・クタ通りへ入る。ビーチに沿って走るラヤ・パンタイ・クタ通りはビーチの夕日を浴びている。道なりに進みこの通りを右へ曲がる。
そうするとムラスティ通りへ入る。ここまでくれば、間もなくホテルの位置するジャラン・レギャン通りへと入る。
僕と山田は、今回の滞在ホテルのアグン・コテージのあるジャラン・レギャン通りまで、バリ島の南国の夕日を見ながらの移動となった。車窓越しに、僕と山田をクタビーチに沈みかけている夕日が照らしている。この景色が、やっとバリ島へ来たという実感を僕へあたえてくれる。光景が少々眩しいがこの夕日がバリ島、神様の棲む島の世界へ導いてくれる気がした。
どの国も同じだが、バリ島のこの夕刻の時間帯は、帰宅に途に着く人たちで道はかなり渋滞している。僕たちを乗せた車が、5人乗りをしているスクーターとぎりぎりのところですれ違ったりと、少々ヒヤヒヤするところはある。クタビーチで物売りなどをして生計を立てている人たちが、こぞって帰宅のためバイクで移動している。
こういう渋滞の時は、バイクは便利だなっていつも思う。渋滞の車と車の間を、うまくすり抜けているからだ。クタビーチを左手に見ながら、道なりに右へ曲がり、僕と山田を乗せた車はムラスティ通りへと入った。ここまで来ると今回の滞在するホテルであるアグン・コテージへ間もなく到着である。
僕たちの乗せた車は、ムラスティ通りからジャラン・レギャン通りへと入り、更に右へと曲がり進んだ。ジャラン・レギャン通りは、観光客にとってレギャン地区のメイン通りだけあり、かなり混雑している。タクシーをながしながら観光客をピックアップするためである。その車がのろのろと進むためかなり渋滞する。僕と山田が滞在するホテルまで距離的にはもうすぐなんだが、車がなかなか思うように進まない。こういう時はバイクのが、車と車の間をうまくすりぬけられて便利だなと改めて思う。
山田「酒井さん、バリ島の夕日って本当にきれいですね。その美しさは、滞在中にじっくりと鑑賞するにして、街の喧騒と夕日のコントラストが何とも言えない妖艶な雰囲気を作っていますね。人間の世界と別世界が入り混じっている感じがしてきますね。」
僕「そうでしょ。山田君、この空気感が何とも言えないんだよね。」
エディ「酒井様、山田様、夕食はどうされますか。ホテルのチェックインが終わったら、レストランへ向かわれますか?」
僕「そうですね。後程Beach Walkのレストランでの食事でもと考えていますが、気分次第ですね。バリ空気でそう決めていませんね。」
エディ「かしこまりました。必要があれば声をかけて下さい。」
僕「ありがとうございます。本当、どうしましょうかね。ところで今回のルームは、スィートルームでお願いしていますが、リザーブはそうなっていますか。」
エディ「もちろん、ご希望のルームをリザーブにしておりますので、ご安心ください。部屋の目の間には、プールがございます。ゆっくりとくつろげると思いますよ。」
僕「そういえば、以前働いていらっしゃったバリニーズマッサージの女性は、まだいらっしゃいますか。いらっしゃればまたバリニーズマッサージをお願いしたいと思っているんですけど。」
エディ「まだ、働いていますよ。彼女は、ヤワンさんです。」
山田「酒井さん。良かったですね。バリニーズマッサージって足の疲れがとれそうですよね。」
エディ「山田様、もちろんですよ。ヤワンさんのマッサージは、結構好評なんですよ。腕がいいですからね。」
僕「それはそうと、明日なんですけれど、連れて行っていただきたい場所があるんです。ドライバーと車のチャーターをお願いできますか。」
エディ「酒井様、かしこまりました。明日は丁度僕が休みなので、僕でよければドライバーになりますよ。」
僕「それじゃ、エディさん、車の手配もよろしくお願いできますか。」
エディ「はい、かしこまりました。どちらへ行きたいんですか。」
僕「明日は、バリアンの予約を入れているのです。バリアンのヒーリング後に、アグン山のブサキと、天空の寺院ランプヤイン寺院です。時間は9時ぐらいにホテルを出発したいんですよね。」
エディ「かしこまりました。乗車人数は何名ですか。」
僕「僕と山田君の二人です。」
山田「ブサキ寺院いいですね。天空の寺院もぜひ行ってみたいです。そこでどんな空気を感じられるのかが楽しみです。」
そうこうしている間に僕たちを乗せた車は、渋滞を抜け、ようやくホテルへ到着した。
ホテルまでの送迎車の中で、明日の予定を早速、決めてしまった。
ノープランの僕の旅行にはよくあるパターンである。滞在ホテルのアグン・コテージへ到着するとなんだか、懐かしい感じを覚えた。今回の渡航は、友人マルチンの供養も兼ねてのため、何とも言えない気持ちが沸き上った。
ほんの数年前までは、このバリ島でいつでも会える友人と思っていたマルチンが、実際、亡くなっていると思うとなんだか切ない。命あるものは、その命の役割を終えると肉体は現世から消え去る。必ず終わることは頭ではわかっているが、実際の感情ではすんなりそれを受け入れられない。この世界には、永遠に続くものなどないことはわかっている。ただ、その状況を目の当たりにすると、本当に何ともいえない切ない気持ちになる。
そんなことを考えていると、僕と山田を乗せた車はアグン・コテージホテルのゲートを通過した。ようやく、ホテルに到着した。夕陽もすっかり暮れて、夜の世界へと変わっていた。車から降りた僕は、懐かしさでなんだか目がウルウルしてきた。
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