第7話 Arrive(到着)

着陸した機体が停止し、乗客がこぞって空港内の入国カウンターへ向かっていった。


ヌングラライ国際空港は、かなりきれいに建て直されており近代的な印象を受ける。今では、日本の羽田国際空港のような建物である。僕が初めてバリ島へ降り立った時は、アジアのローカル空港というイメージだったが、その面影は、今はまったくもってない。過去の空港とは全く違う。近代的という言葉がフィットする。ちなみにBGMはガムランの音色である。バリって感じが満ち満ちている。ガムランの音魂が、都会の喧騒で疲れ切った僕の心の奥底へ響き渡ってくる。


僕と山田は入国カウンターで手続き待ちの列に並んだ。


山田「酒井さん、ヌングラライ国際空港は、結構、近代的ですね。ハノイのノイバイ国際空港と同じ感じですね。俺、とうとうバリ島へ来ちゃったんですね。なんだかうれしいです。酒井さんと一緒なのもありますけど。」


僕「そういっていただければ、なんだか僕もうれしいですよ。でもね、僕が最初にバリ島を訪れたときは、本当にローカルな空港だったんだよね。これも経済効果のお陰なんでしょうね。」


山田「そうでしょうね。」


僕「この空港が新しくなったのは、インターナショナルサミットがバリ島で行われたのに合わせたようでしたけどね。」


山田「そうですか。他国へ国のいいところを見せようとでもしてなんでしょうね。」


僕「そうでしょうね。国の見栄もあるんでしょうね。でも、きれいな建物は気持ちいいですよね。」


山田「もちろんですね。」


僕「山田君、バリ島の空港の匂いって何か感じますか。バリ島の独特のにおいです。日本とは少々違う匂いですよ。においというとよりは香と言い換えたのがいいですね。」


山田「匂いですか?そういわれれば、なんだかお香のような、香草のいい香りがするような気がします。俺にとって落ち着く香りです。」


僕「この香りこそが、バリ島の香りなんですよ。この香りを感じるとバリ島へ来たなって思っちゃうんですよね。」


山田「酒井さんのその気持ちなんだかわかる気がします。俺、このにおい、好きですよ。なんだか落ち着く感じがします。」


僕と山田はバリ島の印象を語りながら、入国手続きの順番になるのを待った。


間もなくすると僕たちの順番となった。僕から先に手続きカウンターへ入った。いつものようなカウンターでのやり取りを空港スタッフと行い、無事にインドネシアへ入国した。その後を追って山田も入国手続きが完了した。


で、入国手続きが終わっても次の難関があった。それがバッゲージカウンターでいつ荷物が出てくるかということだ。ビジネスクラスであれば優先的に荷物が出てくるが、エコノミー席の場合は順番のためいつ出てくるのかが不明である。それとインドネシアの場合、時間の流れが、日本とは違うため、時間を気にしてはいけない。ゆったりとしたバリ島の時間で流され、待たなければならない。今回も僕の思った通り、案の定、45分も二人の荷物がそろうのにかかってしまった。まぁ、45分ならば、まだ早い方だと思った。前回の時は1時間以上待たされたからだ。


僕と山田は、荷物をバッゲージカウンターでピックアップし、セキュリティチェックに移った。そこまで来るといよいよ空港の外に出ることになる、すぐに迎えのホテルのスタッフに会えるのかは、不安ではあるが、まぁなるようにしかならいのもで、またそれも旅の醍醐味である。そのドキドキ感も南国の気温と同様に、気分を持ち上げてくれる。


空港の出口では、各旅行会社のガイドたちが、お客の名前を記載したプレートや旅行会社のロゴの入った旗を所狭しと掲げている。


僕と山田の名前が書かれたプレートを発見した。その持ち主のスタッフのところへと、僕と山田の二人は向かった。


山田「酒井さん。俺たちの名前の書かれたプレートを発見しちゃいました。これで一安心ですね。」


僕「そうだね。でも今回はツアーじゃないから、直接ホテルのスタッフが迎えに来てくれているから安心だよね。昨晩、リコンファームのFAXとメールを入れといたしね。」


山田「そうですよね。今回も何から何まで酒井さんへお任せですみません。」


僕「いいよ。そんなこと気にしないでくださいね。僕が好きでやっていることなので。」


山田「そういっていただけると助かります。」


僕が空港の出口を出たと同時に、僕には聞こえたメッセージがあった。おそらくマルチンからのメッセージだと思った。僕の名前を呼ばれた感じがした。それと同時になんだか懐かしさが、急に 僕の気持ちに溢れんばかりに懐かしさを感じた。


僕は心の中で「マルチン、ようやくバリ島へ来れたよ。」ってメッセージを送った。そうすると僕の目の前に、マルチンの姿が現れた気がした。僕にとってバリ島は、やはり何度来ても心落ち着くスポットである。それと同時に思い入れの深い場所でもある。この南国の温度感や時間の流れ、人の歩く速度などすべてが、僕に癒しを与えてくれる。


山田「ようやく空港の外へ出られましたね。バリ島ってなんだか今まで行った東南アジアとはちょっと違った空気感がありますね。」


僕「そうでしょ。この感覚が僕は好きなんですよね。」


僕と山田はそんな会話を交わしながら、ホテルのスタッフの元へと向かった。

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