【LBD〔ラブ・ボーイ・ドール〕商品化研究所】BL
楠本恵士
★完全ではないBL計画のネットモニター①
郊外にひっそりと、町工場のような外装で存在している【LD〔ラブドール〕研究所】に、 新しい助手が一人来た。
「今日づけで、博士の助手として本社から配属されてきました………よろしくお願いします」
白衣姿が初々しい若い助手は、研究所主任の二十代半ばの所長に頭を下げる。
デスクの椅子に座ってコーヒーを飲んでいた、白衣姿の若い博士は承知したようにうなづいて言った──博士の視線は新任した助手の股間に注がれている。
「固くならなくていいから、研究所と言っても正社員でいつもいるのは、所長のわたしくらいだから………あとは、ラブドールや性具の受注に応じてパートのおばちゃんや、ラブドール作りの匠の職人が来るだけだからね………気楽に固くならなくていいからね」
助手が博士に訊ねる。
「なんと、お呼びしたらいいでしょうか? 博士? 主任? 所長ですか?」
「君の好きな呼び方でいいよ………ここは、下町の孫会社みたいなもんだから………固くならないで」
「では、博士というコトで」
助手は部屋にある展示用ケースの中に飾られている製品見本の、性具の数々や数体の女性型ラブドールに目を向けて言った。
「すごいですね………最近のラブドールの精巧さは、最初この部屋に入ってきた時。本物の人間がケースの中に入っているのかと思いました」
博士は下着姿でケースの中に座っている、等身の女性型ドール数体を満足そうに眺める。
「ラブドールの技術は日進月歩だからな、今では人工知能内蔵で喋ったり歩いたりするラブドールも存在する──もう、ロボットかアンドロイドと言ってもいいくらいだ………君は新製品の男性型ラブドール【LBD】の実物を見たかい?」
「いいえ、まだ本社で渡された資料の写真でしか」
助手は、資料に付いていた裸の上半身が写っている、男性の写真を思い出す。
博士が助手の股間を見ながら言った。
「そんなに固くならなくていいから、ついて来なさい………これから実物の男性型ラブドールを見せてあげるから」
博士に案内された助手が、試作品のLBDが置かれている制作室に入ると。
部屋に並べられた台の上に、タイプが異なる二体の裸の男性が両目を閉じて横たわっていた。
裸の男性──LBDの股間は、人形のようにのっぺりしている。
「どうだ、人間と見分けがつかないだろう」
博士は、裸の男性ラブドールを並べた台の真ん中に立つと、二体のラブドールの胸を撫で回しながら言った。
「体温調整もできるから、人肌に設定するコトもできる………直立して立つコトも喋るコトもできる。こうやって触っているとセンサーが反応して乳首が勃つ………すごいだろう」
博士の説明は続く。
「ドールの表面は柔軟なスキン素材で包んであるので、触った感触は人間そのものだ。人工骨格や人工筋肉も人間の骨格位置や筋肉配置に似せてある」
博士は、助手の股間に視線をチラチラ向けながら。男性型ラブドールの脇腹にある、十センチほどのカバーを開ける。
カバーの中には、携帯電話の充電口のような部分があった。
「この部分から、スマホやパソコンみたいに充電と電子媒体へのデータ入出力ができる……そんなに固くならなくていいから」
「固くなっていませんよ、リラックスしています。LBD〔ラブ・ボーイ・ドール〕ですから胸毛や陰毛やスネ毛はないんですね………あのぅ、部屋に入った時から気になっていた疑問の質問いいですか?」
「なんだい」
「どうして、男性型ラブドールの股間には何も付いていないんですか? まるで人形の股間みたいに?」
「いい質問だ、それを答えるには男女の性興味対象の違いから説明しないといけないな……男女ともに性欲はある、だがその本質は男と女では異なる。男性はなんのために、高額な女性型ラブドールを購入すると思う」
「そりゃあ、性的な行為の代用で」
「正解だ、女性型ラブドールの購入者は大半が男性だ………ぶっちゃけ、女性は高額な男性型ラブドールを購入してまで、自己の性欲を満足させようとは思わないらしい。男のように、性行為は単純ではないからな。女性は、そこに至るまでのプロセスを楽しみ重要視する。会話とか、抱擁とか、キスとか、愛の言葉の囁きとか」
「だったら、男性型ラブドールを女性が満足するような形にすれば………女性客の需要も増えて」
「どれだけ、高度な技術が必要で一体のコストが高額になると思っているんだ。
女性の表情から感情を瞬時に読みとって適切な対応もしないといけないんだぞ………そうなると、完全なロボットだ」
ここで博士は、コホンと咳払いをして補足した。
「もちろん、LBDを購入した女性ユーザーが、やっぱり男性ラブドールの股間がのっぺりしているコトに不満を抱いた時は。
好みのオプションを別途購入して、LBDの股間に装着した完全体同士でBLをさせて楽しむコトも可能だ」
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