&α 進展しない二人

「顔役。おかえんなさい」


「おう」


「どうでしたか。在形さん」


「死んだよ。大往生だ」


「そすか。残念です」


 祈るしぐさ。


「ほう。お前、キリスト教系か」


「へえ。バチカンである程度までは習ってきました」


「そうか」


 いろんなやつが、この町に流れ着く。才能があるがゆえに。


「顔役。そういえば、学会に提出する数学の課題、どうなりました?」


「あっ。やべっ」


 まだ送ってなかった。


「どうしよ。まだ最終チェック終わってねえんだよなあ」


 学校に行ったことはないけど、勉強は好きだった。論文を書いたりもしている。


「呑み屋の予約とらないといけないんだけどなあ。どうしようかなあ」


「警察署の姉御ですか?」


「うん」


「いつ付き合うんすか?」


「おいお前。それは言わんでくれよ」


「ひとつ屋根の下で暮らしてるのに、友達のままなのがおかしいっすよ」


「しかたないんだよ。一歩踏み出す勇気がない」


「そすか。残念です」


「ああ。残念だよ」

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