第45話:拾った謎の卵は?
ヒロさんをよろず屋に送り届けた俺たちは、丘の上にある治療院へと足を向けていた。
昨日の魔獣討伐によって傷を負った自警団が集められ、エミリーさんやリムルから回復魔法を受けていると聞いたからだ。
デンもいたし重傷者は出ていないが、それでも心配ではある。
「オーガ一匹を相手に、まだまだ鍛え方が足りないな」
「っていうか、まだ一度も鍛えてないだろう」
「ギレインは我が鍛えてやろうか。うん、その方がよかろう」
「お前、いつからギレインと仲良くなったんだ?」
防衛戦で何かあったのかと思いつつも、仲良くなるのは良い事だし別にいいかと思い直す。
「……ところでな、レインズ」
「どうしたんだ?」
「……お前、いったい何を持ってきたんだ?」
「何をって……何の事を言ってるんだ?」
心当たりがないので聞き返してみたのだが、デンには盛大に呆れられてしまった。
「はああぁぁぁぁ。……その腰布、何か入れているんだろう?」
「腰布? ……あぁっ! すっかり忘れてた!」
「忘れてたのか!?」
……ヤバい。
あの時に触った感じでは結構な硬さがあったが、ハイオーガエンペラーとの戦闘で割れてたりとか、しないよな?
恐る恐る腰布を開いて中を覗き込む。
「……よかった、割れていないか」
「それで、いったい何なのだ?」
安堵の息を吐き出すのと同時に質問してくるデン。
しかし、これが何だと聞かれても俺にだってわからない。
「何かの卵みたいなんだが……デンはわからないか?」
「知らん。知らんが……」
「知らんが?」
「推測で良ければ答えてやる」
「構わない、教えてくれ」
俺には推測すらできない代物だから、間違っていたとしても可能性があるものなら助かるからな。
「それは魔獣ではなく、ドラゴンの卵だと思う」
「……ドラゴン? あの伝説の? おとぎ話とかに出てくる? …………まさかぁ」
そんな、SSSランクの魔獣じゃあるまいし。
ってか、ハイオーガエンペラーみたいにSSSランク魔獣が目の前で生まれたところを見ると、意外とSSSランク魔獣って伝説になるような存在じゃなくないか?
「今のお主は、ギレインは村長と似たような反応をしておるぞ」
「そうか?」
「我の事を説明しても、おとぎ話だのなんだのと言われておったではないか」
……あー、まあ、確かにそうだな。
ってことは、この卵もマジで伝説のドラゴンの卵って可能性があるって事か。
「オーガの群れが卵を手に入れようとしていたんだが、その行動の意味も推測できるか?」
「うむ。これが本当にドラゴンの卵であれば、こいつは聖にも悪にもなれる」
「聖にも悪にも? どういう事だ?」
デンが言うには、ドラゴンは卵の時に置かれた環境によって、生まれる個体が決まってくるらしい。
正義に準ずる者の近くに置かれたり、優しい環境に置かれれば、聖なるドラゴンとして生まれ育つ。
逆に魔獣の近くに置かれたり、人間でも野盗とか悪い感情の渦巻くところに置かれれば、邪悪なドラゴンとして生まれ育つ。
「そして、ドラゴンは生まれて最初に見た者を親として認識する。それが魔獣であれば、魔獣に従う邪悪なドラゴンの誕生というわけだな」
「……恐ろしい話だな、それは」
「お主の魔獣キラーも通用しないだろうから、奪われておればサクラハナ国は将来的に滅んでいたやもしれんぞ?」
デンの話を聞いた俺は、ごくりとつばを飲み込みながら卵を撫でる。
今まで感じた事のない気配だったが、まさかそれがドラゴンだったとは夢にも思わない。
ただし、これはあくまでも推測であり、事実かどうかは全く不明だ。
「……まあ、ドラゴンの卵だと仮定して、良い環境に置いておく事にするか」
「それが良いだろうな。まあ、ここにいれば自ずと聖なるドラゴンとして生まれるだろうがな」
それに関して言えば、俺も疑うつもりはない。
ウラナワ村の住民はとても優しく、賑やかで、温かい。
ここで生まれてくれるなら、聖なるドラゴンとして生まれ落ち、俺たちをきっと助けてくれるだろう。
「しかし、そんな大事な卵の事を忘れておるとは……さすがはレインズだな」
「う、煩いな! 昨日は疲れていたし、早く休みたかったんだよ!」
「そうは言うがなぁ。結構な重さもあるだろうに、腰に下げていて何故に気づかん」
「そ、それは…………おっ! そろそろ治療院だな!」
「誤魔化しおったぞ、こ奴」
デンのため息が聞こえた気もするが、俺は振り返る事なく治療院へと続く階段を上り切る。
そこで、真っ白なシーツを物干しざおに干しているリムルを見つけた。
※※※※
01/29 ~ 01/31 の三日間は、カクヨムコン6の受付期間までに切りの良いところまで更新するために二回更新となります。
07:00 19:00 の二回更新なので、お楽しみいただけると嬉しいです。
※※※※
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます