第5話

「いい演奏!ちゃんと伴奏してくれるんだ!安心した」


演奏し終えると、はるかちゃんが拍手してくる。


グランドピアノのある練習室は、狭く、俺の椅子のすぐ横の椅子に座るはるかちゃんからは、動くたびにふわっといい香りがする。


康平はバイオリンを静かにおろしながら感無量といった感じだ。

どうやら、俺の伴奏が気に入ったらしい。


「せっかくだから、もう少し練習してく?」

「うん!お願いします!!」


その様子を見て、はるかちゃんは立ち上がる。


「じゃあ、私は邪魔になるといけないから…」

「なんで?横で聴いてくれないの?」


立ち上がったはるかちゃんを下から覗き込む。


「俺のピアノ、もっと聴いてってよ」


怯むはるかちゃん。

そうか、こんな顔もするのか。


「はるかちゃん、お願い!僕も一緒にいて欲しい!」


俺と2人きりなのは不安なのか、康平も追い打ちをかける。

諦めたように、椅子に座り直す。


「分かったわよ…横で聴いてるから」


俺たちの微妙な関係は、こうして始まった。

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