バケツのなかみ

犬屋小烏本部

第1話天使のおしごと

今日はとてもいい天気。風も穏やかで雲もそこそこ。そんな青空に立つ、一人の天使がおりました。天使はバケツを持って視線を様々な土地へと向けています。

「今日はどこにしようかな」

呟く声はまだ高く、大人になるかならないかくらいのものです。


彼はバケツの天使。名前はつけられていません。

彼の仕事はただひとつ。バケツの中身を地上へ降らせることでした。

生まれた瞬間に神様から贈られたバケツを大事に大事に抱え、彼はバケツの中身を神様にいただきに天国へと翼をはためかせるのです。中身を注いで貰った天使は、それはそれは喜びます。大好きな神様から頂いたお仕事だったのです。

中身が入ったバケツを抱え、天使は地上の空へと舞い戻ります。彼は適当に場所を選んでバケツの中身を振りかけます。天気のように気分屋な彼は、地上のことなど気にもかけずにバケツを空にしていきます。例えば、それが誰かの真上であったとしても、彼は気にもしないのです。

だって、それがバケツを持った天使の仕事だったのですから。


「今日は何を降りかけよう」

中身が入ったバケツを手に、天使は空を飛んでいきます。

バケツの中には、神様からの地上への贈り物が入っています。贈り物の意味も知らずに、天使は空を飛んでいきます。

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