私の心の怪獣さん

@kamochan0989

第1話

私の心には怪獣さんが住んでいる


怪獣さんは

私の心のモヤモヤを食べてくれて

そうすると、スっとして

頭のモヤモヤまで取れる


友達と喧嘩しちゃった時

頼まれ事を失敗しちゃった時

怪獣さんは何時でも

心の中に居てくれて

私のモヤモヤを食べてくれた


怪獣さんは いつも笑顔で

食べてくれる


それに甘えてしまって

居たからだろう


怪獣さんが寝込んでしまった

途端に私の中には

沢山のモヤモヤが溜まり始めた


そして怪獣さんに つい当たってしまった


怪獣さんは悲しそうに

ゴメンね と 呟き

膝を抱えて 泣いてしまった


その背中を見て


私は酷く後悔する

違うの!本当は貴方が悪いんじゃないの!

私が頼りきったせいなのに!


しかし その言葉は口から飛び出ることは無かった


ある日 怪獣さんが

居なくなった


怪獣さんの特等席には

一通の手紙があった

きっと私への恨みが

書いてあるのだろうと思うと手紙を拾えない


あぁ・・・ゴメンなさい・・・ゴメンなさい・・・

私のせいだ・・・

私が怪獣さんに甘えたばかりに・・・


涙がポロポロと零れ落ちてくる


それから数日後

私のモヤモヤは

遂に限界を迎えてしまった


遺書を作り

自室の机に置いて

駅へと向かう


電車が来る

私は駅のホームから線路へと

一歩踏み出し・・・


途端に後ろから

強く引き戻された


掴んでいたのはお父さんだった


勢いのまま 自分の元へと引き戻し

強く私を抱き締める


良かった・・・良かった・・・

大丈夫か?怪我はしてないか?

何故あんな・・・

いやいや、それより

強く引っ張ってしまった

腕は痛くないか?


アワアワとしている お父さんを見て

私は、なんだか笑ってしまった


大丈夫だよ

お父さん、ゴメンね?

ぼーっとしてたみたい

もう大丈夫だから

気を付けるね


そう言ってお父さんに

抱き着く


お父さんの匂い

何だか 安心する


安心して

涙が零れてしまう


お、おい

本当に大丈夫なのか?


お父さん

今日休み取るから

今から遊びに行こうか


昔 行った遊園地に行こう

そうしよう


そう言って

有無を言わさずに

私の手を引く


そうして

遊園地でいっぱい遊んだ


お父さんはジェットコースターでは

ヘトヘトになって

お化け屋敷では

私より怖がってて


私を見ると優しく ニコリと笑う


まるで怪獣さんみたいだった


その日は、沢山遊んだ

帰りのお土産屋さんで

それを見つけた


それは

あの怪獣さんのキーホルダーだった


おっ?このキーホルダー

覚えてるか?


いつも

困るくらい大人しくて

ワガママを言わなかった

お前がコレを見た時に


欲しい欲しいと

初めてワガママを言ってな


嬉しかったなぁ・・・


それからは

何処に行くにも一緒に持って行って

学校の鞄にまで

毎日付け替えて ぶら下げてて


無くした時

すごく大泣きしててな〜

また買ってきてやるからと

宥めたは良いけど


個数限定でいつ行っても

売り切れててな〜

大変だったなぁ


買おう買おうとしている内に

お前は何時からか

キーホルダーの事を言わなくなって


お父さんも

すっかり忘れていた

ちょっと待ってなさい


そう言って

キーホルダーを持って

レジに並ぶお父さんの背中には


あの日の手紙が開いて

引っ付いていた


内容は

「また逢えるからね

君の怪獣・・・

いや・・・お父さんより」


そう書いてあった


振り返るお父さんが

笑顔で私にキーホルダーを握らせ


夢から覚めた


起きた

私の枕は涙で濡れていて


手には小さい頃無くした筈の

キーホルダーが握られていた


キーホルダーを

目の前でブラブラさせる


その先には

お父さんの遺影


今まで守ってくれて

ありがとう

お父さん


もう大丈夫だよ

私 頑張るね


心の中では

怪獣さんとお父さんが

目を見合せると


こちらを見て

一緒にニコリと笑った



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