第3話 声と生存
勇者クレオは捕らえようとしていた目の前の魔物を斬ってしまったことで苛立っていた。魔物とは言え容姿はとても美しい女性そのもの。自分が遊んで壊れたら奴隷商にでも売ってやろうと思っていたのにそれが叶わなくなったからだ。上手くいかないと気分が悪くなる自己中心の塊がこの男だ。こうなったらどうやってでももう片方の女を連れていかなくては、そう決めたがその決心は叶わずに終わることになる。
「グォォォォォォォォォォォッ!!!」
突如とても大きな音がした。それはこれまでの爆音とは違う、何かの鳴き声のようだった。
誰もが空を見上げ、そしてその姿に驚愕する。
「人間の勇者よ、これは貴様達の王による命か。」
喋った。それは喋ったのだ。
その光景に勇者さえも驚きを隠せていないようで、しばらく口をパクパクさせていた。
それは、竜。蛇のような容姿の、竜。古代龍と呼ばれた、最強の竜。
そこからは、何もなかった。
竜の登場に驚いた勇者は凄まじい早さで逃げ出し街の外を囲んでいたらしい兵士達と帰っていった。
その一部始終を見たレインは、意識が切れるように気絶した。
───────────────────
俺は、弱かった。
大事なものを、守れなかった。
仲間や家族が殺し尽くされてなお、自分は生きている。
これなら死んだ方が───。
突如、声が降る。
「だめよ。あなたが死んでしまったら、あなたを守った勇猛なるもの達は、いったい何のために死んだのかしら。あなたのために命を尽くした者達を、あなたはその魂をバカにするのかしら。」
それは、だめだ。
そうだ、自分は背負わなければならない。
失った悲しみと共に、彼らの魂を────。
目が覚めた。
そこは見た事もないくらい美しい自然に囲まれた湖だった。俺はいったい──?
「お目覚めになられましたか、レイン様。」
聞いた事のある、いや毎日聞いていた声だ。
この声は──
「おはようございます、レイン様。まずはご無事で何よりです。」
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