第208話 2020年三月前後?(9)

 すると、おさん狐さまは。売り言葉に買い言葉ではないが。


「しつこいぞ~! 瞬~! いい加減にしろ~!」と。


 夫に対して怒号を放つ。でも彼女の主である山田瞬自も直ぐに回答。と、言うか? 自身の妻であるおさん狐さまへと応戦──。言葉の暴力と言う奴で、荒々しく応戦を試みるのだ。


 こんな感じで。


「はぁ~? しっこいって~? おさんが僕以外の男に対して、いちいち艶とした声色と、甘い口調で話し回答をするからいけないのだろうー?」


 と告げる。でもおさん狐さまも、彼女の主である山田瞬に、自身を侮るような台詞を告げられれば、このまま沈黙。黙り込んでしおらしくするようなタイプの女性ではない。


 だって彼女は? 日の本の古から、昔話として語り告げられた大妖怪。それも日の本の西を治める上に、物の怪達が暮らし営む【黄泉の世界】では、領地を持つ皇女殿下さまなのだから。たかが人間風情である山田瞬。そう? いくら彼が、おさん狐さまの主であろうが容赦はしないのだ。と、思っていたら。


「仕方がないではあろう~。瞬~。妾のこの声色と口調は癖……。それも? 太古の時代より続けてきた声色と口調なのだから。そう簡単には治らない……」

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