第82話 新年早々縁起の良い? 狐と狸の化かしあい?(4)

 すると? おさん狐さまと目が合った山田瞬は瞬時に、自分自身が只今、坪田御老体と妻へと湧かし募らせている、嫉妬心を見破られたと悟るから。


 彼は面白くはない。


 だから直ぐに、自身の新妻さまである、おさん狐さまへと目を逸らして。


「さぁ~。どうですかぁあああ~。いかがですかぁああ~ 芋けんぴは新芋ですよぉおおお~!」と。


 坪田御老体に負けぬように、自身の声音をあげて──。声高く叫ぶ──。


 自身の妻である、おさん狐さまに、『瞬は凄いな~』と、褒めて頂きたいから。


 すると? 山田瞬の呼び掛けに反応をして、数名の声色が聞こえてきたよ。


 こんな感じでね。


「あっ! 芋けんぴだ~!」


「芋だ~、芋だ~。芋~」


「私あれ大好き~」


「うちも好きなんよ~」と。


 まあ、こんな声が漏れ聞こえてくる。


 と、同時に、山田瞬の口から。


「さぁ~。食べて~。食べて~。お姉さん達~。これも、これも、ほら~。三個食べていって~。遠慮しなくていいから~」


 と、声が漏れるのと同時に。自身の店へと寄ってくる女性達へと、食品トングで素早く試食を手渡していくのだよ。

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