第70話 2020年の初売り(7)

 まあ、若い山田瞬に、自分の音声と販売テクニックを絶賛された御老体は上機嫌……。


「そ、そうか~? 山田もそう思うか~?」と。


 御老体自身も機嫌良く、新年早々から自画自賛をするのである。


 まあ、そんな二人の和気藹々とした会話のやりとりの最中。


〈ギィ~。ガシャン~〉


 と、自動車の扉が開き、締まる音が、和気藹々と会話を続けている山田瞬と御老体……。


 二人の耳に聞こえてくるのだ。


 それも? 山田瞬の愛車である軽バンのスクラムから聞こえてくる。


 と、いうことは?


 スクラムから誰かが降りた?


 と、我らが思うと同時に。


「おはようございます~。いつも~。家の主人がお世話になっています~」


 と、女性の声が。


 そしてまた直ぐに。


「新年明けましておめでとうございます~。今年も家の主人共々、宜しくお願いします~」


 と、独特の甘く官能的──。この世のオスと呼ばれる生き物を虜にするような。先程まで山田瞬が嫉妬を続けてきた声色での挨拶が、和気藹々とした会話の最中の二人……ではなく。坪田御老体へと告げられる。

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