第30話 夢幻? (5)
「う~ん、これって~。夢幻なのだろうか~?」
山田瞬は、こんな言葉を独り事で漏らすのだよ。
それも? 先程迄のような、慌ただしく声を大にした興奮気味な声色ではなく。小さな声色でね。
まあ、時間の方も未だ丑三つ時と言うこともあるから。2020年の新年であろうが、近所迷惑にもなるから小声で……。
と、いうよりも?
コタツに入り座る自分へと相変わらず。縺れ甘えながら睡眠をとる。美しい妖狐の女性への配慮の為にと、山田瞬は小声で言葉を漏らす。
まあ、彼は昔から異性に対して、『良い男(ひと)』で終わるタイプの男性だから。
自分に縺れ甘えながら安堵──。熟睡をしている女性が妖狐であろうとも、荒々しく強引に起こして問い詰める行為や、彼女のうなじ……。乱れた着物の隙間から見える、豊満な乳房の谷間や、雪のように白い肌を持つ、官能的な肢体を見て確認──。男の性を発情させて、妖狐の彼女へと強引に凌辱行為……。自分自身の邪な思いを成就するようなことはしない優しい青年なのだよ。
だから山田瞬は、未だに彼女はいないし。童貞君のままでいるのだよ。
……ッて? 彼が童貞、経験者……。
まあ、どちらであろうが? この物語としては、どうでも良い事なのだから。
その話は取り敢えず置いておき、先へと進むことにする。
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