惑星発掘会社アストロオークション

にのい・しち

第1話 人望ゼロ

 宇宙船ブログ#5

 アインシュタインという科学者が相対性理論を発表してから1万年以上も経ってもいるそうです。

 1万年前なんて恒星間飛行ワープすらできない時代なのに、ワープの基礎理論はできていたんですね!


 僕が働く会社ではオークションに出す未開惑星を探すのが仕事です。

 水だけの星を見つけて競りに出せば母星が水不足の星人が競り落とし、ブラックホールを競りに出せばゴミ問題に悩む星人が競り落とします。


 今いる所は発掘部門の少年ティーン少女エイジャー・チーム


 僕らの乗船する発掘船は、全長200メートルでクルーは100人働いてます。

 この大きさの宇宙船で100人は少なですが、ほとんど人工知能で管理しているので少ない人数で充分なのです。


 銀色のボディは恒星の光を吸収して発電させてエンジンを動かします。

 詳しい話は電子書籍10冊分になるので割愛。

 形は古代のお菓子ひよこまんじゅうに、そっくり!


 これから宇宙船は500光年先にある宙域を探索します。

 何をするかと言うと、なんと! ブラックホールに落ちた惑星を引き上げサルベージするのです!


 どんな冒険が待っているか楽しみです。

 それでは次回の更新をお楽しみに!


             管理人ニモイ・エンテ


***


 とはブログに書いたけど、僕は次の仕事が終わったら、宇宙船を降りて会社もキャプテンも――――辞める。


 宇宙船の真っ白な通路を歩いてコックピットへ向かう。

 15歳になった時、本社からキャプテンを任命された。

 着任したばかりでクルーの顔と名前も一致しないのに、キャプテンの仕事は気が重くなった。


 僕が任された十代で構成されたチームは各銀河系でスカウトされてものの、その実態は超ブラックな本社が子供を使い捨てできるように、都合よく集めた集団。

 なので身寄りがない上に、ブログに書けないくらい素行が悪い。


 操舵室コックピット前の分厚い炭素性の扉で足を止めて、深呼吸してから覚悟を決める。

 踏み出すと自動ドアが開いて元気な声でクルー達へ挨拶した。


「おはよう、諸君!」


 室内はクルーが7人いて皆、作業に没頭して気が付かなかったか、わざと無視して嫌悪な態度を取ったのか。


「お、おはようございま〜す」


 女子クルーがきつ目に返す。


「キャプテン・ニモイ、遅いです。やる気ないなら船を降りて下さい」


「すみません」


 厳しい口調で萎縮してしまい、肩を縮めて中央の椅子シートへ腰を下ろした。


 僕を咎めた女子。

 膝丈の白いナース服に似たスーツを着ていて、長い金髪を電磁力リングでまとめている。

 リングを頭の後ろにかざすと静電気で髪の毛が浮き上がり、リングの中で魔法をかけられたように、まとまってお団子頭を勝手に作ってくれるヘアバンド。

 お団子になった頭に浮かぶリングが天使の輪っかに見えて可愛いと、女子に人気のアイテムだ。


 僕はこの宇宙船のキャプテンだけど、前任のキャプテンは隣にいる彼女――――インドラ。

 会社でも一目置かれる女子キャプテンだった。

 会社の役員がこのチームを一瞬で命を落とすような、本当に危険な宙域へ派遣しようとしたので、それに文句を言ったのがキャプテンだったインドラだ。


 はむかうインドラが気に入らない役員は、彼女をキャプテンの椅子から下ろして、代わりに右も左も解らない掃除係だった僕をキャプテンへ推薦した。


 当の僕は役員の指示に絶対服従の操り人形。

 役員への報告は逐一必要で1時間おきに通信を行う。

 当然、クルーは僕を嫌い人望あるインドラの命令だけ聞く。

 

 僕は副キャプテンどころか、宇宙船自体から嫌われてるのだ。

 人望も度胸もないキャプテン、最悪のキャラクターだよ。


「新任のキャプテンは宇宙に詳しくないようなので、私がノミやダニでも解るよう解説します」


 優しいようで優しくない!

 そりゃ、トップの座を奪った相手へ親切に対応するなんて、できっこないよな。


「今回の探索はオークションに出典する惑星を”ブラックホールからサルベージ”するのが任務です」


「そんなことできるの? 下手するとホールに吸い込まれるよね?」


「その可能性もあります」


「帰ってこれるかな?」


「可能性の問題です」


 可能性、可能性って、それ何も解らないって言ってるのと同じじゃん!

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