第29話 二人の関係。
――あらすじ――
アカネちゃんとのフラグ粉砕
サキさん頑張れ
いつもの三人で話していると電話が鳴り始め……?
―――
「やっぱりね、こしあんなんですよ」
:わかる。
:うむ。
:全く持ってそのとおり。
:こしあんこそ至高
:異議なし
:真理ですなぁ。
:満場一致ですね。
:そらそうよ。
:いやいや、つぶあんもいいですぞ。
:つぶあんも捨てがたいでっせ
:こしあんはちょっとくどい。
:あの豆がいいのよ
:つぶあんこそ理想。
「だめだー……これ以上やったらきのこたけのこ戦争になっちゃうよ。はーい、やめやめ。どっちも素晴らしいって事で、終わりましょ」
:せやな。
:しゃーない
:雹夜さんがそう言うなら
:まぁ喧嘩しても良いことないしな
:うむ
:どっちもいいぞー!
:喧嘩ダメ、絶対
:すまんかった
:こっちこそすまんやで
:今度つぶあん試してみるか
:次こしあん買ってみます!!
:なんと平和な世界だろうか
「うんうん、仲良しが一番ですよ。それじゃ、今日はこの辺でー。お疲れさまです」
:おつかれー。
:おつかれさまー!
:お疲れさまです!!
:おつ。次回も楽しみ
:お疲れさまですー。次はいよいよコラボかぁ
:おつかれー!コラボ楽しみだな
:なんのゲームするのか気になるな。おつー!
:はやて丸ちゃん達とのコント楽しみにしてます!!!お疲れさまです!
配信を閉じて風呂に入る。
今日はこの後予定があるので、長湯はしない。
パッパと服を脱ぎ、ササ―っと風呂場に入り、そんでシャーと洗って、ザパーンと湯船に入る。
ンギモッヂイイィィ……と心身ともに癒しつつ、名残惜しくもザバーっと湯船から出て体を再度洗って、風呂場から出る。身体をフキフキして、スッと服を着て、ブオォォォォとドライヤーを当てれば終わり。さーて、冷蔵庫からジュース取って、おっさんとゲームするぞー。
「やふー」
「おつかれさん」
「お疲れさまです」
「あれ、ユイさんもおるんか」
「うむ。暇そうだったからのぅ」
「……お邪魔でしたか?」
「いんや、別にいいけど」
「そうですか」
「ふーむ、相変わらず君達はギクシャクしているのぅ」
「そう?こんなもんじゃない?」
「私と雹夜さんは昔からこうですよ」
「うーん……まぁ、いいか。よぉし、今日も遊ぶかのぅ」
「うーい」
「宜しくお願いします」
それからしばらくおっさんとユイさんといつも通り遊んでいたんだけど、急におっさんのスマホが鳴りだした。少し待ってくれと言われ、残された私とユイさんは適当に雑談をしながら時間を潰した。そして少し経って、おっさんが戻ってきたのだが……
「すまん……ちょっと出かけてくる」
「え?どうしたん?」
「会社の上司がのぅ。明日は休みだから少し飲みに付き合えと」
「あちゃー」
「それは……お疲れさまです」
「すまんが今日はここまでじゃのぅ。悪い」
「いや、いいよ。気をつけて行ってきてね」
「飲みすぎないように気をつけてくださいね」
「うむ。それじゃお先に。おつかれさん」
「おつかれー」
「お疲れさまです」
ブチンという音と共に、おっさんの声が消える。
私とユイさんだけが残り、少しの間沈黙が流れた。
……正直この空間苦手なので、今日は終わろうかな。
「んじゃ、俺達も落ちるかぁ」
「……」
「……おーい?聞こえてるー?」
「聞こえてます。……雹夜さんは、私と2人は嫌ですか?」
「ん?いや……別に嫌ではないけど」
「……微妙な反応ですね」
「おっさんとなら全然会話続くけど、俺とユイさんじゃ話題無くない?」
「そうですけど……ほら、ゲームの話とか……?」
「お互い好きなゲームのジャンル違くない?」
「むぅ……さ、最近見たアニメの話とかどうです?」
「俺最近アニメ見てないしなぁ」
「むぅぅぅ……」
「どうした?今日は少し変じゃないか?」
「……たまには、雹夜さんとも話したいって思ったんですよ」
「俺はそうでもないけど」
(……だからモテないんですよ)
「お前言ったな?禁忌を犯したな?」
「え?き、聞こえてるんですか……?」
「よーし、そこまで言うなら付き合ってやろう。べ、別に悔しくなんてないんだからね!」
自分で言っておいてあれだけどなかなか気持ち悪いねこれ。
流石のユイさんも黙っちゃったよ。恥ずかしい。
「今のなしで。……あー、あのさ」
「はい?」
「適当にゲームしようかなって思ってるけど、見る?」
「……そうですね。お願いします」
「うい」
「ホラゲーですか……」
「うん。あれ、苦手?」
「いえ、別に……」
「ふふん?まぁいいか。始めるよん」
「はい。……あの」
「ん?」
「これ、怖いんですか?」
「んー、どうだろ。評価見ると結構怖いらしいけど」
「そうですか」
「うん」
「あの」
「ん?」
「……出そうなポイントは、事前に教えて下さい」
「うい」
ギャァァァァァァァ!!!
「ひっ!!」
「出たよー」
「《b》あ、あの!!出そうになったらって、言ったじゃないですかっ!!!《/b》」
「ごめんごめん」
「もうっ!!……次からは、お願いしますよ」
「ういうい」
「……」
「あっ」
「えっ!?」
「ごめん、なんでもない」
「えぇ……もぅ……」
ギャァァァァァァァ!!!
「うん、やっぱ出たわ」
「ちょっと!!!!」
「幽霊より視聴してる女性が怖い件」
「……それ、私の事ですか?」
「ソンナコトナイヨー」
「むぅ……」
「ごめんって。……あ、右側出てくるよ」
「……本当ですね?」
「ほんとほんと。さーん、にーい、いーち」
ギャァァァァァァァ!!!
「……ほ、本当に出ましたね」
「でしょ?オレ イイコ ウソ イワナイ」
「……そうですねー」
「何故棒読みなのか、コレガワカラナイ」
「早く進んでください」
「あ、はい」
「うーん、名作」
「主人公がただただモブに幽霊ぶつけてただけじゃないですか……」
「まさか主人公が黒幕だったとは」
「予想外過ぎて逆に反応に困りましたよね……」
「俺結構好きだよ、こういうの」
「え、そうなんですか?」
「バカゲーっぽい感じが良い」
「……まぁ、そうですね。そういう風に見たら、アリかもしれませんね」
「まぁ嘘だけど」
「ちょっと」
「んじゃ次のゲームやるか」
「ちょっと!!」
「……これもホラゲーですか?」
「らしいよ」
「らしいよって……あ、なんか出てきましたよ?」
「あれが幽霊じゃない?」
「え……あの、匍匐前進してるだけなんですけど……幽霊なんですか?」
「白いワンピースに黒髪ロングで目がクリクリしてるからそうじゃない?」
「……物凄く動き遅くて怖くないんですけど」
「せやね。……お、出入り口発見」
「え、もう終わりですか?」
「多分。ここ抜ければ……あれ、鍵?」
「どうやら鍵が必要みたいですね。どうします?ドア以外は全部フェンスですし、後ろの入り口、幽霊がガン待ちしてますよ」
「うーむ」
「ピッタリ張り付いてますし、開けた瞬間アウトですね。詰んだようですね?」
「楽しそうだね」
「まぁ、いろいろ弄ばれたので」
「言い方よ」
「……それで?どうするんですか?」
「ん?そりゃもちろん」
私はキャラクターを操作し、出入り口の手前にあった大きな木に向かって走り出した。そして、木に張り付きながらジャンプボタンを連打した。画面ではキャラクターがカクカク振動しながら、徐々に、徐々に、木を登っていく。そして最終的には出入り口と同じ高さのフェンスまで登っていき、ジャンプしてフェンスの向こう側に飛び込んだ。
地面に着地すると、画面にはゲームクリアの文字が浮かんだ。
「はぁぁぁぁぁ!?」
「はいクリアー」
「ちょっと待って下さい!!あ、ありですか!?こんなの!?」
「ゲームクリアって出てるし、ありなんじゃない?」
「……納得できない」
「こういうバグを残したゲームが悪いのだよー」
「くぅ……っ!文句が言えない……!」
「そこまで悔しがる事かい?ねぇねぇ、そこまでかい?」
「つぎ!つぎいきましょう!!」
「聞いてる?」
「な……なかなか、怖いゲームですね……」
「そう?確かに面白いけど」
「おも……雹夜さんの感性、どうかしてますよ」
「うるさいやい。……あっ」
「え?どうしました?」
「ごめん、トイレ」
「……早めに済ませてくださいね」
「ういうい」
「……ふぅ」
ギャァァァァァァァ!!!!
「ちょっと雹夜さん!!!早く!!!早く帰ってきて!!せめてメニュー画面開いて!!!!」
「は、はやくー!ずっと画面に映ってるから!!はやくぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「おまた」
「バカ―!!もうっ!!ばかーーー!!」
「もう一回トイレ行ってきていい?」
「ごめんなさい許してください」
「今日は、ありがとうございました」
ある程度遊んで、そろそろ良い時間だなと思いゲームを閉じて落ちようとした時、ユイさんがそう言った。珍しく素直やね。
「ういうい」
「正直、ちょっと意外でした」
「ん?」
「私が誘っても、きっと、断るんだろうなって思ってました」
「まぁぶっちゃけ断ろうとはしたよね」
「ちょっと」
「でもまぁ……たまにはこういうのもいいんじゃないかな」
「……そうですね」
「相変わらずうるさいから毎日は困るけど」
「私の事嫌いですか?」
「うん」
「……はぁ。それを聞いて、ちょっと安心しました」
「え……キミもドMなの……?」
「違います!!キミもってなんですか!」
「いやまぁ……ちょっとねぇ……」
「私は!!……私はただ、雹夜さんが昔に比べて変わってしまったから……」
「不安だったと?」
「……ええ」
「安心しろ。どんなに変わってもお前だけは好きになれん」
「そういう事言うからモテないんですよ」
「男にはモテてるぞ?」
「……」
「……ごめん。なんでもない。やめて。哀れみを向けないで。やめやめ!もう寝るわ!!おつ!!」
「……あの!!」
「んぁ?」
「……あのゲーム、○月○○日にサービス終了するんです」
「あれま、とうとう終わるのか」
「……だから」
「うん」
「……」
「大丈夫?」
「……龍さんと、また3人で一緒に」
「悪い。それだけはできない」
「……です、よね」
「ごめんね。おっさんには俺から話しとくよ。……それじゃ、おやすみ」
さっきまで優しかったあの人の冷たい声が消える。無音だけが残り続ける。
わかっていた。わかっていたはずなのに、何故期待してしまうんだろう。
私はただ……ただ、あの人に――――なのに。
叶わないと思っても、それでも、何度も勝手に幻想を抱いてしまう。
その度に傷付くとわかっているのに。
いつか、気付いてくれるんじゃないかって、縋り付いてしまう。
だから私は、わたしが嫌い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます