第19話 雹夜というキャラを知ろう。


 プロデューサーさん!緊急会議ですよ、緊急会議!



 「ということで今回はお二人に来てもらいました」


 「まさか雹くんが自分のキャラ設定を知らないなんて……」


 「いやー、びっくりっスよ!どおりで情報が何も出てこないわけっスねぇ」


 

 あれからおっさんと2人で話し合ったんだけど、おっさんも実は知らないという事実を私は知ってしまった。いやマジ?昨日アニ○イト行った時にVtuberさんのグッズコーナー見てきたけどさ、どれもこれも何かしら設定があって凄い凝ってるのよ。凄いなぁと思ったけど直後「あれ?」と思って帰り道の電車の中でSNS上からVtuberと検索してたらさ、皆必ず設定があるのよ。そこにきてやっと気付いたよね。「あれ?雹夜の設定って無くね?」って。うん、今更だよね。よく視聴者さんにツッコまれなかったよね。


 まぁ睡眠ボイスとか声とイラストの違和感とかで皆すっかり忘れてるんだと思います。そう考えとこう。でも流石にこのまま設定無しでいきます!はVtuberとしてどうかなと思ったので、ちゃんと設定があるサキさんと、最近何かとディスコードでメッセージ送ってくるはわわ丸を呼んだわけです。おっさんとはまた今度話すことにした。



 「ごめんね、こんな事に付き合わせちゃって」


 「私で力になれることがあるなら全然構わないわよ」


 「前回ご迷惑をかけたっスから、せんぱいに力を貸すのは当然っスよ!」


 「ありがとう。あと先輩じゃないからね」


 「そういえばサキさんとは初めましてっスよね?いやぁ、まさかあの炎上事件後もお二人が関わってるとは思わなかったっス!」


 「ふふ。そうね、私も思わなかったわ」


 「むむ!なんだか気になる反応っスねぇ……せんぱいと何かありました?」


 「秘密……かしら」

 

 「わー!気になるっス!せんぱいも隅に置けないっスね!」


 「うん、先輩じゃないからね」



 



 「で、ぶっちゃけ2人は雹夜ってどんなキャラだと思ってます?」


 「そうねぇ……まず、男の子ね」


 「ショタっスね」


 「次に……やっぱり声かしら」


 「低音っスね!」


 「後は……ドS?」


 「ゾクゾクするっスよね!!」


 「はわわ丸は一回落ち着こうか」


 「あら、はやて丸ちゃんもわかる?」


 「サキさんもっスか!?なんか身体がこう、ゾクゾクするっス!」


 「わかるわ。あの見下してる感じがたまらないのよね」


 「え?」


 「え?」


 「うん、サキさんも一回落ち着こうか」


 

 これはもしかして人選ミスというやつでは?いやそんなバカな。

 2人に限ってそんな……ねぇ?ははは……えぇ……?




 

 「とりあえずショタで低音でドS……も追加しとくか」


 「ホラー耐性もなかったかしら?」


 「あー、ホラー耐性も追加っと……」


 「あと優しいっス!」


 「……それは設定に入るのか?」


 「えー、ダメっスか?わたし的にはポイント高いっスよ!」


 「はわわ丸のポイント集めたところでなぁ……何貰えるの?」


 「愛情っス!」


 「食パンと交換なら考える」


 「酷いっスよ!?」


 「……貴方達仲いいわね」


 「そうっスか!?えへへー」


 「普通ですよー。それよりも、ここからどう設定を考えましょうかね」


 「うーん……とりあえず、真面目で優しい性格というのは追加してもいいと思うわ」


 「ほうほう」


 「臨機応変に行動出来るってのもいいと思うっスよ!」


 「インタビュー配信の事?あれはたまたまだからなぁ」


 「でもあそこまで対応出来たら十分っスよ!」


 「んー……一応保留で。今後そこを頼られたら困るし」


 「確かにそうっスね……すみませんっス」


 「いやいいよ。ありがとね」


 「男性に人気が高いとかはどう?」


 「うーん……事実だけど文面にするとなんか悲しい」


 「女性ファンも一応増えたんスよね?」


 「うん。でもねぇ、男性の方が圧倒的に多いのよ」


 「なんででスかね?」


 「とりあえずはわわ丸の先輩方で一気に増えたのは確実」


 「す、すみませんっス」


 「謝らなくていいよ。普通に嬉しいし」


 「うぅ……何も良いこと言えないっス……」


 「今SNSで調べたのだけれど、雹くんってとあるゲームのキャラみたいだって言われてるわね」


 「え、なんですか?それ」


 「あ、聞いた事あるっスよ!確か……そうそう!これっス!URL送るっスよー!」


 「どれどれ……男の子だねぇ……え、声間違ってない?」


 「まるで雹くんみたいね」


 「え、マジ?これがデフォルトの声?」


 「そうっスよ!せんぱいと同じ感じだから2つ名はこれでいいじゃん。って先輩方の間では既に決まってたりするっス!」


 「えぇ……いや別にいいけどさ。俺の知らない所で二つ名付いちゃったよ」


 「可愛い子ね。私は雹くんの方が好きだけど」


 「わたしはどっちも好きっスね!」


 「どう見ても子○さんの声が出てくるとは思えない……」





 「あれから色々話してたら話が逸れちゃった」


 「3人で話すのもなかなか楽しいわね」


 「今後も機会があれば3人で雑談したいっス!」


 「僕は別にいいですよ」


 「私も構わないわ。今後とも宜しくね、はやて丸ちゃん」


 「宜しくお願いするっス!サキさん!せんぱい!」


 「先輩じゃないからね。んじゃ、今日はこの辺で終わりますか」


 「ええ。お疲れ様でした」


 「お疲れさまでス!」


 「おつかれさまでーす」




 

 とりあえず、ショタで低音でドSで臨機応変が出来る、真面目で優しい性格のキャラらしい。うーん、本当かなぁ?追加で付け加えるとしたらニート部分かな。まだおじさんじゃないはず。大丈夫、24歳はまだ若いはずじゃ……っ!!


 おっさんから連絡あるかなーと思ったけど、特に何もなかったのでお風呂入ってランク上げしながらSNSでフォロワーさん達と会話してその日は眠りましたまる。





 

 「皆さんこんばんはー。本日も始めていきます。今日は音読ですよー」


 

 :久々の配信じゃー!

 :待ってました。

 :兄貴ー!雹の兄貴ー!

 :インタビュー配信後から配信なかったから心配した。

 :雹くーん!

 :雹夜さーん!

 :生配信は初見です!最近ファンになりました!

 :ボイス二弾まだですか!?

 :やっと配信見れたー!

 :おかしいな、スパチャが投げれない。

 :早く投げさせてくれ!待ちきれないよ!

 :来週辺りにはできるんじゃない?

 :もう投げる為のお金は確保した。

 :雹夜ー!インタビュー配信よかったぞー!

 :うちの後輩が世話になったなぁ!

 :ボイス買っちまったぞコノヤロー!

 :次何時はやて丸とコラボするんだ?

 :はやて丸寝落ちRTAあくしろ。

 


 実はインタビュー配信後から配信をお休みさせてもらってました。

 正直かなり疲れたし、あれからSNSの反応見るの怖かったからなぁ。

 なんだかんだ受け入れられてるみたいでよかったよかった。

 あとはわわ丸の視聴者さんも来てるのね。先輩方おっすおっす。


 「お待たせしてすみません。少しだけお休みさせて頂きました。急にごめんね」



 :しょうがねぇな。

 :いいよ。

 :毎日配信してるし、いいと思いますよ!

 :休むのも大事。

 :身体は大丈夫ですか?

 :無理しないようにね。

 :確かにあのインタビュー配信は大変だったよなぁ。もっと休んでもいいんだぞ!

 :本当によくやったなぁと思うわ。

 :雹くんのメンタルの強さを知った。

 :あれだけ荒れたらなぁ……

 :きつかったら途中で配信落としてもいいよ。

 :すまんかったな雹夜

 :正直反省はしてる。すまん。

 :お詫びはスパチャでするわ。



 「いやいや、大丈夫ですよ。先輩方も変に気負わないでください。来てくれるだけでも嬉しいですから」


 :天使かな?

 :優しいなぁ。

 :今後は先輩方達とも仲良くやっていきましょ

 :泣いた。

 :だから雹くん好き

 :今日の配信に来れて良かった。

 :これからは応援するで雹夜

 :ボイス二弾楽しみにしてるぞ

 :すまんな。




 「大丈夫ですよ」

 

 「さて、今日の音読ですが……「本当にあった怖い出来事」の本を読んでいきたいと思います」


 「あ、深い意味はないですからね?」



 :悪魔かな?

 :優しいなぁ()

 :今後は先輩方を敵として見ますね。 

 :泣いた。

 :雹くん好きだからやめよう。

 :今日の配信は来ないほうがよかった()

 :やっぱり怒ってんじゃねぇか!

 :お金あげるから許して。

 :すまんな……ごめんなさい。


 


 - 数分後 -




 :やめ、やめろー!

 :ママー!!ママー!!!

 :すみません、家の中から足音聞こえるんですが

 :なんか声が聞こえるんですけど

 :先輩方、今日は一緒に寝ませんか?

 :お、そうだな()

 :おい誰かはやて丸起こしてこい。

 :癒やしだ、癒やしをもってこい!!

 :聞きたくないのに頭に流れ込んでくるぅぅぅぅぅ!!

 :だめだ……今日は絶対眠れない……




 

 - 更に数十分後 -


 寝れなくなると言われて流石に可哀想なので童話の音読に切り替えました。


 

 「……おしまい。今日の作品はどうだったかな?」

 

 ( ˘ω˘)スヤァ

 ( ˘ω˘)スヤァ 

 ( ˘ω˘)スヤァ

 ( ˘ω˘)スヤァ

 ( ˘ω˘)スヤァ

 ⚠コメントはありません。



 「寝ましたなぁ……それじゃ、今日はこれで終わりますね。ではでは、良い夢を。おやすみなさい」


 

 怖い話の音読はダメっぽいですねぇ……下手したら生活に支障が出るかもしれぬ。まぁ怖い話よりホラゲーのほうがやってても楽しいからね。今後はしないようにしておきましょうか。配信も閉じたし、今日は早めに寝ようかなぁー……っと思ったところに、おっさんからのLINEが。なんだろ?



 

 【お疲れさん。今いいかい?】

 【少し話があるんじゃが】


 【大丈夫だよー。どしたん?】


 【実はのぅ】

 【設定関連の事で、絵師さんに連絡とってたんじゃよ】

 【それで急なんじゃが、今から通話できるかい?】


 【今から?別にいいけど。ディスコード?】


 【お、キミ、ディスコードやってたのか】

 【丁度よかった。そっちで通話してくれると助かる】

 

 【うーい】





 今からかぁ。正直眠かったけど、絵師さんが来るみたいだし行くしかないよな。

 ふぅ、とりあえずこれでようやくイラストを書いてくれた人に感謝できるな。

 軽く炎上したりしたし、ちゃんと謝っておこう。


 


 「ういー。おつかれー」

 

 「おぅ、来たか」


 「……」


 「えーと……ユイさん?でいいのかな?」


 「うむ。彼女がキミのイラストの生みの親じゃよ」


 「そっかそっか。えーと、雹夜をやらせてもらってます。挨拶が遅れてすみません。今更ですけど、イラストを描いてくれてありがとうございます」


 「……」


 「あのー?……恥ずかしがり屋さん?」


 「ユイちゃん、ちゃんと喋らないとダメだよ」


 「……こんばんは」


 「お、こんばんはです」


 ようやく喋った絵師さんの声は、凛としていて、でもどこか棘があるような声だった。

 何て言うんだろう、ツンデレ?ちょっと気の強そうな女の子というか……つか……この声……いや、まさか……






 「お前……サツキか?」


 「……お久しぶりです。今は、雹夜さんでしたね」




 なんてこった、あぁ……クソ面倒な事になっちまったぞ。


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