第18話 久々に遠出をしてみた。
インタビュー配信から三日後。
「うーむ……」
ベッドの上で転がりながらスマホでSNSを確認する。
SNS上では自分のフォロワーさん達がインタビュー配信の事を話していた。
「すごいよかった!」とか「雹くんの声初めて聞いたけどファンになりました!」とかとか、いやもう嬉しいよね。もしかして夢なんじゃないかなーと思って何度も頬を抓ったけど現実でした。これ以上抓ったらお餅になりそうなのでやめよう。
ところで気になる点が1つありましてね?あのインタビュー配信が一部の人の間では伝説のインタビュー配信と話題になっているらしいのよね。まぁ確かに自分なりにはよくやったと思ってますよ。ええ。でもなぁ……そこまで凄いことをやったわけではないからなぁ。「この調子で有名なVtuberになっていきましょう!」とか「人気Vtuberの仲間入りできますね!」とかも一部の人から言われているけど……そういう気持ちで始めたわけではないから何とも言えない気分ではある、うん。
応援してくれるのは嬉しいし、そりゃいろんな人と今後も出会えたらいいかなーっていう気持ちは多少あるさ。でもまぁ、やっぱり1人が気楽だし、人気になればなるほど批判する人も増えてくるわけだし。それは嫌だよねぇ。豆腐メンタルのおいらにはとても耐えきれないですたい。
という事であえてこういう話題には触れませーん。そんな事よりも今の私にはやるべき事があるのですよ。まずはお気に入りの服を着ます。ちなみに外出用の服はこれだけです。そして次に帽子を被ります。視線が怖いので。最後に部屋を出て今日はお休みの両親に声をかけまーす。
「ちょっと髪切りに行ってくるね」
― LINEにて ―
【髪を切りに行こうとしたんですよ】
【唐突やね】
【それで?】
【両親に話したら一万円ずつもらっちった】
【おぉ……キミお金持ってなかったっけ?】
【あるよ】
【おっさんからのお小遣いは貯めてたし。一応15万くらいはある】
【全部貯金しとるやないかい。それでも貰ったと】
【うん。あの子が外に出るなんて!って騒いでた】
【ゴミ出しとかちょっとした買い物は行ってたんでしょ?】
【ゴミ出しは家の前だし、買い出しも歩いて10分くらいの距離のスーパーだからね】
【今日はちょっと遠出しようかなと。髪切るついでに服とか買おうかなーって】
【なるほどのぅ】
【どれ、俺からも小遣いをやろう】
【えー、別にいいよ】
【まぁまぁ。3000人突破記念だと思って受け取りなさい】
【うーん。んじゃ貰おう】
【あとさ、ジャージで遠出しても大丈夫だよね?】
【……多めに振り込むから沢山服買ってきなさい】
【わーい】
自分の貯金から5万円。両親から一万円ずつ。そしておっさんから6万円……6万円!?いや多すぎだろおっさん……とりあえず髪切ったら沢山服買おう。あとついでに漫画も買って帰ろー。今日は動くぞー!ちなみに言っておくと、貯金のお金はおっさんが趣味でやってる動画投稿(アプリの攻略、初心者向け動画)の編集を私が代わりにやっていて、その報酬で貰っていたお金を使わずに貯めてたんだよね。おっさんにはよく「欲がないよね」と言われる。そうかな?
「入っていいのかね……?」
電車で30分。久々に来た都市部。いやぁ、見ない内に未来的な街並みになってますなぁ。あんな建物あったっけ?というか人多い。あとめっちゃ見られる。まぁ見た感じジャージで歩いてるの私だけだし、時間が時間だしなぁ。周りを見てもスーツ姿。出勤時間ですかな。それに比べてですよ、私は美容室の前でうろうろしてるジャージ姿の男。そりゃ怪しいですよね。うん。恥ずかしい。
まぁ今更視線に対する恥ずかしさなんてどうもでいいんだけども、それより、目の前に美容室があるのに入れない。こういう場所に入るほうが正直恥ずかしいし苦手だ。正直もう帰ってもいいんじゃないかなと思い始めたり。でもお金貰っちゃったし、両親に髪切りに行くって言っちゃったし。しゃーない、いっちょ頑張りますか!
「いらっしゃいま……せ?」
「こんにちはー。予約していた〇〇ですけど」
「え?あ、あぁ、はい!〇〇さんですね!こちらにどうぞ」
なんか間があったけど気にしない。
原因はわかってるけど気にしない。
「……それで、今日はどういう風にしましょうか?」
「んー……正直よくわからないので僕に合いそうな髪型でお願いします。あとできればカッコいい感じに」
「なるほど……わかりました。やってみましょう」
「お願いします」
髪を濡らしてチョキチョキと切り始める。
次々と他のお客さんが入ってきては私を見て驚く。
まぁそりゃ驚くよね。だって髪がヤ○チャみたいに長いんだもの。
10年も髪を切らずニートやってたらこうなっちゃったよ。流石に私もびっくりした。これコスプレしてたら別の意味で注目浴びてたかな。ジャージでよかったわ。
「今日はお仕事お休みですか?」
しばらく切ってから美容師さんがそう言った。
案の定聞かれちゃったね。ニートには辛い言葉ですよ。
だからと言って嘘をつく俺じゃないんだぜ。
「無職ですよー。10年間ニートやってます」
「え?」
「どうかしました?」
「え?あ、いや……なんでもないです」
それから髪を切り終えるまで美容師さんは無言だった。
ふふふ、私の勝ちだな。
ちなみに後でおっさんにこの事話したら自営業と答えなさいと説教された。
「スッキリした。したけど……うーん」
バッサリと髪を切ったわけですよ。そりゃもう清々しいほどに。でも私の思ってたカッコいいイメージとはちょっと違うんだよなぁ。いや頼んだのは確かに私だけどさ、とはいえまさか剃り込む入れるとは思わないじゃん?いやカッコいいよ?びっくりしたけど「あれ、意外とイケてる?」とか思っちゃったよ。でもさぁ……なんかすんごい避けられるのよね。気持ち悪いから避けてるって感じじゃないのよ。なんかこう……ヤバい人的な感じ?まぁいいか!
とりあえず髪は切ったので次は服ですよ、服!これはねぇ、もう予め決めてるんですよ。やっぱり黒だよね。黒いシャツと黒いズボンあればもう完璧よ!いや、これでようやく私もまともに外出れるようになりますな!とりあえずシャツとズボンを買いましょうか。
いやね?違うんですよ。
僕は別に欲しくはなかったんですよ。黒いシャツと黒いズボンがあればそれでよかったんですよ。でもね、そのね、10年間も引きこもってたらそりゃ暇になるわけですよ。だから暇つぶしに5年前から一応軽い筋トレは始めてたんですよ。でも鏡なんて部屋に置いてないし、風呂場でわざわざ見るほどカッコいい顔をしてるわけじゃないし。だから全然気づかなかったんだけど、どうやら通常のサイズの服はちょっと着れないらしいんですよ。
試着しようとしたら入らなくてびっくりしちゃったよ。というか店員さんに止められちゃったよ。「お客様には少し小さいみたいですね……」って、どう考えても見りゃわかんだろ!って感じの表情で言われちゃったよ。泣きたい。
もう仕方ないので店員さんに「僕に合う服ください。高くないやつでできれば何着か。予算は6万~8万の間でお願いします」って頼んでみた。やっぱりこういう時は専門の人に任せるのがいいかなって。でもこれがちょっと失敗だったわけですよ。店員さんのセンスは多分良いはずなんだけど、選ぶのがどれもこれも着るのが面倒な感じのが多いんだよね。ファッション系って言うの?なんか外国人のモデルさんが着るような服がめっちゃ多い。私には絶対合いそうにないんだけど、いいのだろうか。
本当ならいろいろちゃんと着てから買うべきなんだろうけど、正直もう疲れてきた。ファッションショーの感覚で次々服は着せられるし、他のお客さんの視線怖いし。もうさっさと終わらせて漫画買いに行きたい。早くアニ○イト行きたい。ということでとりあえず全部買っておいた。予算内に収まったのが幸いだったね。
久々に来たぜ……ぬるりと。
いやぁ、ここに来るとなんか安心するよね。そこまでオタクではないけど、同じ仲間が居ると考えたらすっごい安心できる。しかし久々に来たけど、今はこういう場所にもカップルとかいるんだね。昔は男ばっかだったのに、今じゃカップルとか、女性のほうが多い気がする。うーん、安心感はあるけどちょっと居づらい。必要な物だけ買って帰りますかな。
「……あれ?」
へぇー……Vtuberのグッズコーナーなんてあるのか。全然知らなかった。あ、でも企業側のやつか。なるほどねぇ、どこかに所属するとこういうグッズ展開も出来るわけだ。流石にサキさんのはないか。もし今後出るなら買ってみようかなぁ。しかしいろんな人のグッズがあるなぁ……うん?
あれ?ちょっと待てよ?
無事家に辿り着くと仕事から帰ってきた兄と両親が待っていて、皆で寿司を食べに行こうと言われた。なんかお祝いらしい。仕事で良いことでもあったのだろうか。早く行こうと皆が急かすので荷物を置いて駐車場にある兄の車まで向かった。向かう途中、私はおっさんにLINEをする。
【ただまー。そしてこれから寿司食いに行ってくる】
【お疲れさん。寿司か、いいのぅ。俺も今日は寿司にしよう】
【ところでさ、ちょっと思ったんだけど】
【ん?なんだい?】
【俺、雹夜っていうキャラの設定知らないんだけど……】
【え?】
【え?】
え?
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