第16話 伝説のインタビュー配信。
配信開始30分前。
私はスマホで自分のSNSを見ていた。
1時間前に投稿した呟き。それに対してフォロワーさんが反応していく。
「雹くんのインタビュー楽しみです!」
「緊張してると思いますが普段通りやっていきましょう!」
「雹夜さんの声を皆に聞かせてやってください!」
「既に待機してます!」
「いつものようにやっていきましょ!」
そんな、私を励ましてくれる言葉が多く返ってきた。
中には「誰コイツ?」というのもあったが、気にはならなかった。
そういう言葉は慣れている。今はただ、それ以外の慣れない言葉に照れていた。
「応援してます」
「頑張って!」
褒められたなんてほとんど無い。興味を持たれた事もほとんど無い。
返ってくるのはいつも否定的な言葉。それが私の生活だった。
今、今だけ、この瞬間だけ世界が私に優しくしていると思ってしまう。
この先には何があるのかわからない。
受け入れられるか。
拒まれるか。
私の反応が、声が、この先の未来を決めるような気がする。
だから絶対にミスなんてしてはいけない。
もう二度と失敗してはいけない。
私は変わると決めたのだ。
なんて、青春系主人公のようになれたらどれほどよかっただろうか。
こちとら10年間もニートやってんだぞ。
「変わるぞ!」という言葉一つで変われるなら最初の1.2年でどうにかなってたわい。世の中そんなに甘くはないのですよ。まぁ、甘ったれてるのは私なんだけども。
まぁ、だからこそ、いつも通りのびのびとやりますよ。
何も気負わず普段通りを皆が待っているんだから。
そして何より。
俺に
スマホのLINEとディスコードから通知が鳴る。
大事な友達の2人からメッセージが届く。
【キミの思うようにやりなさい。あ、炎上はやめてね】
【うい】
【そろそろね雹くん。大丈夫?私に何か出来ることあるかしら?】
【んじゃ、応援しててください。それだけで元気出るので】
【それだけ?】
【うん、それだけ】
【……ふふ】
【あれ、駄目でした?】
【大丈夫よ】
【応援しているわ。大丈夫、何があっても私は味方だから】
【わーい。がんばるぞー】
本当はありがとうと言いたかった。
でも、感謝するには、きっとまだ早い。
いつも通り、そっけなく返して、全部終わったら、直接ありがとうを言おう。
……さてと、そろそろだな。
仮に炎上したら……まぁ、どうにかなるでしょ!ヨシ!
--時刻は夜の20時 インタビュー配信開始--
「皆さんこんばんはっス!情報系Vtuberのはやて丸っスよー!」
「先輩達、今日も部活に来てるっスかー!?」
:待ってたぞ後輩!
:部活の時間だあああああ!!
:俺の可愛い後輩だぞ!
:俺のだぞ!!
:ごめん、俺の彼女だから。
:先輩達うるせぇぞ!!あとちなみに俺の後輩だから!
:はやて丸ーー!今日も可愛いぞーー!!
:こんな可愛い後輩を持てて俺達幸せものだな。
:尚、後輩ははやて丸1人しかいない模様。
:早く他の後輩連れてきなさい。
:大丈夫だぞ!俺達がずっと先輩として残るから!!
:早く卒業しろ。
:つか、今日の配信だいぶ人いないか?
:いつものインタビューより少し多い気がする。
:少しじゃなくね?普通に多い。
:俺の記憶だとインタビュー配信の中では一番じゃないか?この視聴者数
:男のインタビューって初だろ?なら納得。
:女性人気でもあんの?この人。
:はやて丸が男と仲良くなるのが嫌だから見に来てんじゃね?俺はそうだけど。
:今日のゲスト誰?男なの?
--雹夜の配信--
:始まった。
:これがはやて丸ちゃんの声か。可愛いな。
:でも俺らの雹くんも負けてないぜ。
:つか、視聴者やばくね?
:はやて丸ちゃんのところで6000人だってさ。
:マジかよ。
:こっちも2000人行きそうだぞ。
:昨日まで150人くらいしかいなかったじゃないか……やばいな。
:雹くん大丈夫かな……
:なんか、思ってたよりやばい配信になりそうなんだけど……
:大丈夫……だよな?
:雹兄貴を信じようぜ。
「さてさて!本日はわたしのメイン配信枠とも言える、インタビュー配信を始めていくっス!」
「いつも部活に来てる先輩方なら承知だと思うっスけど、一応確認っスよ?」
「ゲストさんに対して過激なコメントはNGっス!先輩同士で喧嘩もダメ!」
「評価をする先輩達もいるっスけど、メインは魅力を紹介する配信なのでやりすぎは退部してもらうっスよ!」
:後輩にここまで言われたらしょうがねぇな。
:まぁ、今までなんだかんだ悪い評価出さなかったし大丈夫でしょ。
:評価兄貴達の気持ちもわからなくはない。
:でもやりすぎるとはやて丸に迷惑かかるからな?
:ほどほどにだぞ(やるなとは言わない)
:一度はやて丸がちゃんと言ったほうがいいと思うけどな。
:言わないとわからんやつも多い。
:いや、そもそも言われる前に気づかない奴もどうかと思うぞ。
:おいおい、喧嘩はやめろって言われたろ。
:お前ら後輩の配信だぞ?黙って見守ってろ。
:先輩達怖いなぁ……とづまりしこと。
:今回の相手男性Vtuberっぽいし、荒れそうなのもわかる。
:つかなんで男?いらなくね?
:企業側で面白い男性Vtuber沢山いるし、もういらんやろ。
:ただでさえ需要ねぇしなぁ。
:まぁショタだし可愛い声だったら許す。
:男の娘なら。
:はやて丸ー!
--雹夜の配信--
:あの、空気が重いんですが……
:2窓してるけどあっちの空気怖くね?
:これ、インタビュー受けないほうがよかった気が……
:まぁそう焦るな。
:こっちはこっちでいつも通りの空気でやろうぜ。
:なんだかんだここの視聴者達仲いいよな。
:そりゃ、雹夜さんの声聞いてたらねぇ?
:睡魔だけじゃなく怒りも鎮めるってのも凄いよな。
:平和な配信だから安心して見られるのもいい。
:雹くん頑張って。【サキ】
「大丈夫っスね?先輩達はちゃんと守ってくれると信じてるっスよ?」
「……それでは!本日のゲストを紹介するっす!」
「今回のゲストはこちら!優しくて安心する、聞いてると心が落ち着く、疲れがぶっ飛ぶほどの安眠を得られるなどなど、様々な方面からその「声」を褒められVtuberとしての人気を徐々に高めているこの方」
「紅雹夜さんです!どうぞっス!!」
「……初めまして、こんばんは。紅雹夜と言います。本日はお招き頂きありがとうございます」
:来たぞ。今回のゲストだ。
:男か。
:開始からずっとあった男の子のイラスト可愛いと思ったら声草
:は?これ詐欺だろ
:イラストと声合ってねぇww
:ボイチェンミスってますよ
:違和感半端ねぇな。
:これがデフォルトっぽいぞ。
:マジ?声低すぎだろ。
:いや草。
:やべー新規が出てきたもんだな。
:俺のイヤホンがおかしくなったのかと思って一回外しちゃったわ。
:女性には人気ありそう。
:とりあえずイラスト変えたほうがいいっすよ
:先輩方の反応悪くて草
:これは伸びない
:ショタじゃねぇのかよ。
:こういう感じかぁ。期待してたのとはちげぇな。
:イラスト変えれば多少マシ。
:女食ってそうな声だな。
:家の人が喋ってんじゃねぇのか。
:はやて丸の声を聞かせろ。
--雹夜の配信--
:きたあああああああああああああああああああ
:雹くううううううううううううううううん!!
:今日も良い声だなぁ。
:すこ。
:よかった、いつも通りの声だ。
:聞いた感じだと緊張してなさそう?
:コメント速い。
:うぉぉぉぉぉ雹夜ぁぁぁぁぁぁ!!
:2窓してる兄貴達いる?
:ここにいるぞ。
:ここにもいるぞ。あっちちょっとやばいな。
:俺達も最初同じような感じだったけど、それよりも反応がやばい気がする。
:こっちの配信しか見てないからわからんのだが、どうなってんの?
:雹夜さんの配信を初めて見た時の俺達の反応みたいな感じ。
:それよりもだいぶやばい。
:これ荒れるかな?
:こっちは大丈夫だろうけど、あっちはワンチャンありそうでやばいな。
:えぇマジか……これって雹さん2窓して見てる感じ?
:多分してる。だから結構やばいかも。
「今日は雹夜さんにインタビューしつつ、魅力をたっぷりお伝えしたいと思うっス!それにしても雹夜さん、今日も良い声してるっスね!」
「ありがとうございます。自分ではわからないのですが、皆さん声を褒めてくれるので本当に嬉しいです」
「わたしも結構雹夜さんの声好きなんスよねー!聞いてて安心するっスよ!」
「あはは、嬉しいですね。ありがとうございます」
:良い声なのか?
:ただ低いだけにしか聞こえん。
:低音出しとけば大体どうにかなる説。
:まぁ女は好きそうだよな。
:はやて丸はこういう声が好きなのか。
:俺も低い声出してVtuberやろうかな。
:俺達の後輩が褒めてるんだから素直に褒めとけ。
:男の声聞いてもなぁ?
:女Vtuberの声聞きすぎて男性声に慣れてない。
:ここまで先輩方の嫉妬の嵐。
:おい誰だ低評価入れてる奴は。
:既に高評価よりも低評価の方が多い件。
:先輩達わかりやすいっすね。
:今の所魅力を感じないのだが。
:男に人気らしいぞ。
:は?ホモ?
:男ww女じゃねぇのかww
:あー、言われてみれば男に好かれそう。
:そっち系のVtuberか。まーた変なの出てきたな。
:なんで男に人気なの?
:知らん。
:調べたけどこいつ一回炎上してるんか。
:炎上してるのか。早くね?
:サキさん関連でやらかしたらしいぞ (削除されました)
:名前出したらあかん。
:消されてて草
:人気Vtuberに手を出したってマジ?
:おいもうやめとけよそういう話題。
:嫌だったら黙ってブロックしてろ。
:モデさんが追いついてない。
:反応してるやつは男のファンか?力抜けよ。
:コメントの流れ早いって。
--雹夜の配信--
:あかん。
:荒れてる?
:荒れ始めてますね。
:イラストと声に違和感って言われるのはわかってたけど、ここまで言われるか
:うーん、これは熱い洗礼。
:なんか見てるこっちが苦しくなってきた。
:こういう配信が見たかったわけじゃないのに。悲しいな。
:はやて丸さんが上手くフォローしてるけど……
:だめだ、あっちの配信見てられないわ。
:無理してあっち見なくても大丈夫だぞ。
:ごめん、マジで泣きそう。
:もうやめたほうがいいかもしれん。
:雹くん頑張って……
「……さて!そろそろ質問コーナーにいくっス!今日は沢山用意したので雹夜さんにはいろいろ答えてもらうっスよー!」
「あはは、答えれる範囲で頑張ります」
「それでは最初はわたし個人からの質問っス!!記念すべき1つ目はこれ!今後やっていきたい配信内容!!」
「それ終盤にやるような質問じゃ……」
「えへへー!ちょっと順番変えてみたっス!ささ、どうぞ!!」
「そうですねぇ……まずは、今回のように質問を返すコーナーはやりたいですね。最近ボイス販売させていただいたのですが、それで私に興味を持ってくれた方が沢山いまして。配信でも初見さんが増えてきました。なのでそろそろ質問コーナーとかを作って、ボイスで興味を持ってくれた初見さんでも今後入りやすい配信になっていけばいいかなと。後は、ゲーム配信の幅を広げていきたいですね。今は単発のゲーム配信が多いですが、定期的に長くやれるゲームを1つか2つやれたらなと思ってます。今考えてるのは、FPSゲームですね。有名なバトロワ系ですが、結構ハマってるので雑談しながら出来たらなと思ってます」
:まぁ普通の回答。
:ありきたりやな。
:もっと面白い事を言え。
:今日コメント荒れてんな。落ち着けよ。
:後輩のはやて丸が可愛くて仕方ないのですよ。
:うーん、普通。
:普通だな。
:これは伸びない。
:というか質問箱なんて募集してたんだな。質問した奴いる?
:多分雹夜?さんのほうで募集したんじゃね?
:俺は一応したぞ。
:存在すら知らんかったわ。
:未だに違和感がするんだが。
:一発目にする質問じゃなくて草
:流石はやて丸。可愛いぞ。
:というか、先輩方ちゃんと質問の返答聞いてたんすね。
:なんか自然と入ってた。
:声低いけど丁寧な喋りだからか、言葉はスラスラ入ってきたな。
:俺も。
:聞く気ないんだけど気付いたら内容入ってたわ。
:つまんないからか、ちょっと眠くなってきたわ。
:俺も。今日の配信はイマイチだな。
:仕事疲れだからねみー。はやて丸の声で癒やしてほしい。
--雹夜の配信--
:質問コーナー出来たらいいなぁ。
:今のうち考えとくか、質問。
:初見さんの事も考えてて偉いなぁ。いやまぁ、当たり前なんだろうけど。
:この辺も雹さんの良いところだな。だから男の俺も好き。
:今の所雹くんコメント気にしてなさそうね。
:メンタル強くて羨ましい。
:多分気にしてる所もあるだろうけど、表に出さないように頑張ってる気がする。
:せめてこっちは応援コメント送ろうぜ。
:頑張れ雹くん!
:俺達がいるぞ!!
:初見です。あっちの配信で見てましたが空気が重いのでこっち来ました。
:がんばれー!!
:いらっしゃい!ゆっくりしていけ!
:初見さんいらっしゃいませ!
:いらっしゃい。
:初見さんのコメント一気に増えてきたな。
:雹夜さん頑張ってください!
:雹夜さんFPSやってるのかぁ。参加型だったらやりたいな。
:一緒にプレイしたらドキドキして集中できなさそう。
:一番の問題は声で寝落ちだな
:参加者は……誰一人いませんでした……(死屍累々)
「……あれ、はやて丸さん?」
:ん?
:なんだなんだ?
:なんか止まったぞ。
:どうなってんだ?
:誰か説明できる?
:今何が起きてんの?
:なんだどうした?
:つか、はやて丸反応しないな。
:これどうなってんの?
:多分だけど、ゲストさんが質問答えてはやて丸が反応返すって感じじゃね?
:だよな?今までもそうだったし。
:はやて丸ー?
:機材トラブルか?
:配信は止まってないぞ。
:なにこれ、どういう状況?
:なんか寝息聞こえね?
--雹夜の--
:放送事故?
:っぽいな。
:状況わかる人いる?説明求む。
:今の状況→はやて丸ちゃんが質問投げる→雹夜さんが答える→はやて丸ちゃんが本当なら反応返す所反応しない?→雹夜さんが何度か声かけてるけど反応ない
:サンクス。
:あっち見てきた。配信は止まってないらしい。
:あとコメントでチラッと見たんだけど、寝息聞こえるとかなんとか。
:初見だけどあっち見たら寝息聞こえるって言ってました。
:あっ(察し)
:え、嘘でしょ?
:まさか……
:雹夜さんやりやがったwww
:すいません、状況わかんないんですけど、どうなってます?
:「速報」 雹夜さん質問返答ではやて丸ちゃんを寝かしてしまう。
:は?マジ?
:ごめん、あの人の声ならありえる。
:童話じゃなく質問返答で寝かせるのか……
:マジで寝落ちか。
:まだ確定じゃないから変に情報回さないようにな!
「……皆さんすみません。信じられないかもしれないのですが……はやて丸さん寝落ちです」
:草
:はい?
:おい嘘つくな。
:マジで言ってんのか?
:確かにさっき寝息聞こえたけど、マジ?
:はやて丸疲れてるのか?
:うっそだろお前ww
:いや流石に嘘だろ。
:はやて丸ー?おーい?
:あの、先輩方、やばいっす。この雹夜さんって人、声が睡眠ボイスと言われてるらしいです。
:睡眠ボイス?
:なんだそれは……
:そういえば安眠がどうとか言ってなかった?
:検索したらボイスのレビューがやばい。
:今来た。ボイス販売してるんかコイツ。
:ちょっと検索してくるわ。
:俺も。
:先に見てきたけど、こいつマジモンじゃねぇかww
:「このボイス聞いたら5分で寝れました」だとさ
:SNSの情報も見てきたけど、どれもこれも寝落ち関連だったぞ。
:催眠兵器でも持ってんの?
:つまりどういうことだってばよ……?
:結論 はやて丸、ゲストの声で寝落ちする。
:おいマジかww
:これ配信どうすんの?
--雹夜の配信--
:や り や が っ た
:いいぞ!いいぞ!!
:やっぱり逃げられなかったよ……(即堕ち
:にしても、寝るのが早すぎるw
:雹夜さんマジかwww
:いや、これ誰も予想できないだろw
:まさか質問返答で寝るなんてなぁ……
:初見ですが面白すぎて登録しました。
:実は視聴者にも既に犠牲が出てたりして。
:あー、ありえるなそれ。
:こっちの配信初めて来たけど、通常運転なのか?
:そうですよ。
:大体皆寝落ちする。
:うんうん
:通常運転と言っていいのか微妙だけど、まぁいつも通り?
:でも流石に今回はやばいな
:司会者が寝落ちだからなぁ。これ中断かな?
:どう考えても中断だろうな。この後反省会やってくれたら嬉しい。
:終わりか。まぁ、完全に荒れる前でよかったわ。
:もっと聞きたかったけどしゃーない。
(やべぇなぁ……)
これはまずい。いや、まさか寝落ちするなんて予想できる?私は出来なかったわ。
事前にやった打ち合わせじゃ問題なかったじゃないか。
……いや、少しだけ、ほんの少しだけ。
ちょっと「アレ?」と思う所はあったけどさ。
つかどうしよう。このまま終わった方がいいよな?
コメントもだいぶ荒れてきたし、ここで切ってまた次回仕切り直してやったほうがいいよな。それにここまで荒れるとは思わなかったし。はやて丸さんに申し訳ないことしたなぁ……。
とりあえず配信はここで中断する事を話して……あー、はやて丸さんどうしよう。
寝落ちしたって事は本人が起きて配信を切るか、勝手に配信が落ちるまで彼女の配信は続くんだよな?コメントもだいぶ荒れてるし、荒れてる原因も私なんだよな。
このまま彼女が起きるまではやて丸さんの配信を放置して、私は自分の配信を閉じていいのだろうか。……まぁ、下手に触れないのが正解だよなぁ。普通は。余計彼女に迷惑をかけてしまうし。
- キミの思うようにやりなさい。あ、炎上はやめてね -
(炎上しなければ、いいわけだよな)
「……えーと、今ご覧頂いてる皆さん」
「さっきもお伝えしたとおり、はやて丸さんが寝落ちしてしまいました」
「本来ならここで中断し、また別の機会でインタビュー配信をするのがベストだと思います」
「……ですが、彼女が起きるまではやて丸さんの配信を放置するわけにもいきません」
「配信上でもいろいろ混乱が起きてますし、このまま私だけ終わるのは気が引けます
「なので、彼女が起きるか、配信が途切れるまで、このまま続けていこうと思います」
:続行するんか。
:続けんの?
:正直あんまり興味ないんだが。
:なんだ乗っ取りか?
:けどこの状況でこれ言い出せたのすごいな。
:まぁ、普通なら中断だろうし。
:コメントが荒れてるしな。
:先輩方のせいっすよ。
:人のせいにするのやめろ。
:おい喧嘩するなよ。
:続けなくていいぞ。やめとけやめとけ。
:下手に事故る未来が見えますねぇ。
:何もせず配信閉じとけ。
:余計なことすんな。
:はやて丸を巻き込むな。
:やるなら別枠でやって。
:こりゃ炎上か?
:炎上したら許さねぇぞ。
--雹夜の配信--
:雹夜さん続けるんか。
:本当にやるの?大丈夫?
:うーん、流石にこれはフォローできないような……
:でもこのまま放置するのもなぁ。
:これまた炎上したらやばいぞ。
:雹夜さん!今日はやめておきましょう!
:正直やめたほうがいいとは思うけど、でも雹夜さんを信じるわ。
:雹くんの好きにやっていいよ。【サキ】
:雹さん大丈夫か?
:キミの好きなようにやりなさい。後はこっちが対処するから。【???】
「それじゃ……っと。長くなりそうだし、いつも通りの感じで進めていきますねー」
「はやて丸さんが寝てるので募集した質問に答えていきますよー。それではまず1つ目」
【雹夜さんこんばんは。私は最近友人におすすめされ雹夜さんのボイスを購入しました。最初は正直睡眠ボイスなんて信じていませんでしたが、聞いてみたらビックリするほどよく眠れました!仕事疲れも少しずつ無くなってきてて、今日は眠れないかな?なんて日も雹夜さんの声を聞くとすごく安心出来て眠れます!最近は雑談配信にもお邪魔してて、コメントは出来ていないんですが毎回凄く楽しませてもらってます!それで質問なのですが、今後ボイス第二弾を出す予定はありますか?もしあるとしたらリクエスト募集してほしいです!いろんな種類のボイスを聞きたいのでぜひお願いします!インタビュー配信、応援してます!】
「はい、質問ありがとうございます。あとボイス購入してくれてありがとね。凄く嬉しいです。実は第二弾出してほしいってDMが何件か来てました。正直びっくりしたよね。ここまで売れたり好評価貰えたりするなんて考えてなかったから、本当に嬉しい。今はまだ販売考えてないけど、皆さんからの意見を聞いてまた出せたらいいかなって思ってます。応援してくれてありがとうございます。聞いてたら、嬉しいな」
「では次の質問です」
:普通に進めてるな。
:口調もだいぶ砕けてきたし、ちょっとだけいい感じ?
:つか、よく聞くと良い声ではあるよな。
:俺も思った。
:違和感凄かったけど、今はなんとも思わないな。
:普通に聞き取りやすい。
:なんか、安心感ある声?は少しわかる気がする。
:俺ちょっと眠くなってきた。
:なんだかんだ言ってちゃんと聞いてる先輩方
:聞くというか、頭の中に流れてくるというか。
:なんかしらんが不思議な感覚するのは俺だけ?
:俺も。
:とりあえずもう少し聞いてみるか。
:炎上されたら困るしな。
:そうそう。
:さっきまで眠気なかったのに物凄く眠いんだが。
:眠くなったってコメント多くね?俺も若干眠いけど。
:睡眠ボイスの効果出てんじゃん。
:イラッとしてたんだけど何故か聞いてしまうんだが。
:ちゃんと聞けば割と良い声。
:ぶっちゃけボイスかっちった。
:ボイス買った奴いて草
:流石に買うのは草だわ
:すまん、俺もちょっと気になって買った。
--雹夜の配信--
:この喋り、いつもの雹夜さんや。
:いつもというか、ここ最近の雹夜さんの感じだよね。心開いてくれた感じの。
:やっぱり良い声だなぁ。
:あかん、眠くなってきた。
:まだ寝るな!寝るんじゃない!
:質問の内容読む時なんだけど、童話を音読してる時の感じに似てない?
:あーわかる、なんかこう、読み聞かせてる感じ?
:ただ読んでる感じじゃないよな。
:絵本読んでくれるお母さん的な。
:それだ。
:雹夜さんはママだった……?
:ボイス買った先輩方も出てきてますね……
:あっ(察し)
:ダメだったみたいですね……
:ようこそこちらの世界へ。
:今になって効果が出てきたか。
:効果とかあるんやな……
:本当に催眠兵器になってきてて草
:眠い……
「……うん、これで質問は終わりかな。時間は……もう22時になるのか。早いね」
「はやて丸さんはまだ寝てるみたいだけど、どうしようかな」
「とりあえず声かけてみましょ。《b》おーい、はやて丸さーん《/b》」
「……んにゃ……」
:んにゃ。
:可愛いかよ。
:流石俺達のはやて丸。
:猫かな?
:どっちかというと犬っぽい。
:名前的に犬でしょ。
:ちくしょう可愛いなこの後輩。
:おい雹夜!そっとだぞ!そっと起こすんだぞ!
:噛まれるかもしれないから気をつけろよ雹夜。
:はやて丸って噛むのか……いいこと思いついた。
:俺が噛んでやるからこっち来い。
:ごめん、このゲストの名前なんて言うの?
:ヒョウヤだったはず。
:ひょうやじゃない?
:ありがとう。ヒョウヤね。
--雹夜の配信--
:俺も雹夜さんに起こしてもらいたい。
:次回のボイスの1つは決まりましたね。
:起こしてくれるボイスか……絶対買うわ。
:羨ましいなぁ。
:はやて丸ちゃん可愛い。
:可愛いなぁ。
:起こす姿が正にお母さんだな。
:もうママでいいんじゃないか?
「おーい。はやて丸さーん」
「んにゅ……ふぁい……?」
「お、起きましたかね?」
「……え……あれ?」
「おはようございます。夜22時です」
「22時……?あれ、インタビュー配信……」
「配信は今も続いてますよ。可愛い寝息でしたね」
「……は、はわわわわ!や、やばいっス……っ!!これはまずいっス!!」
「大丈夫か。はわわ丸」
「大丈夫じゃないっスよ!!って、はわわ丸ってなんスか!?」
「はわはわ言ってたから丁度いいかなぁと。なんか可愛いし」
「茶化さないでくださいよー!!は、配信!!配信は大丈夫っスか!?」
:はわわ丸は草
:はわわ丸www
:おい勝手に名前つけんな。
:しかしセンスよくて草
:ごめん。正直笑ったw
:くそ、腹立つのに笑っちまった……
:はわわ丸
:起きたかはわわ丸
:可愛いぞはわわ丸
:はわわ丸www
:いいぞヒョウヤ。
:やりゃできんじゃねぇか雹夜。
:褒めてやろう
:良いあだ名を貰ったなぁはわわ丸ぅぅ!!
--雹夜の配信--
:おいずるいぞ。俺も可愛い言われたい。
:可愛いだと……?ちょっと雹夜さん?
:はわわ丸可愛い。あと雹夜さんちょっと
:一応ウケてるみたいでよかった……あと雹さんは後で反省会。
:嘘だろ雹夜さん……
:はやて丸さんに嫉妬するのは草。ところで雹夜さんちょっとこっちに来てください。
:何やってんだ雹夜さん……俺達がいるのに……
:俺は認めんぞ!!
:浮気ですか?
:ちょっとこれは許されませんね……
:反省会しましょうね?ね?
「うぅ……まさか寝落ちしてるなんて……恥ずかしいっス……あとごめんなさいでス……」
「いいよ。楽しかったし。意外とウケたから」
インタビュー配信は無事(?)終了し、今私ははやて丸さんと2人で反省会をやっていた。最初こそ荒れたが、はやて丸さんの代わりに進行した事、そしてこの私の声のおかげで、最終的には「楽しかった」というコメントで溢れかえっていた。正直、一か八かの賭けだったけど、どうにかなってよかった。けどもうこういう事はやらないぞ。心臓に悪すぎる。
「あの……わたしの配信の視聴者さんがいろいろ酷い事言って本当にすみませんでした!!」
はやて丸さんが謝る。それもいつもの語尾はなく、物凄く落ち込んだ様子で。
まぁ確かにコメントは凄かったけど、彼女が悪いわけじゃないしなぁ。
それに私は気にしてなかったし。
とは言え、自分の配信は流石に心配したけどね。皆仲良くしてくれててよかった。
「大丈夫ですよ。全然気にしてないですし、これも洗礼だと思えばアリかなと」
「本当にごめんなさいです。いつもはあんな感じじゃないんですが……本当にすみませんでした!」
まぁ、理由はなんとなくわかる。
男だし。イラストと声合ってないし。
「もう大丈夫だから。それより、今日はありがとうございました。インタビューしてくれて」
「そんな!こちらこそ全然質問出来なくてごめんなさいです……」
うん。これは無限ループになりますね。
「あーもう、終わり!この後謝るの禁止!」
「でも……」
「俺は気にしてない!配信も最後は盛り上がった!無事終了した!だから問題なし!この話は終わり!ヴェイ!!」
「……わかりました」
「あと、いつものように話してくれると助かるかな。流石に素の感じはこっちも恥ずかしくなるから」
「……わかったっス!今日はもう気にしないっス!これでいいっスか!?」
「うんうん、それでいいんですよ」
「……なんか、雹夜さんって先輩みたいっスね」
「俺が?先輩?ないない」
そもそも後輩持ったことないし。
あと年下の扱いが苦手だからなぁ。先輩って感じは流石にないでしょ。
でもお世辞言ってくれるのは嬉しい。
「わたし的にはそう感じるんスよ!なんていうかこう……頼りになるというか……うーん?」
「頼りにならないし先輩的な事言えないので多分気のせいですよ」
「そんなことないっス!わたしにはわかるっス!!」
「えぇ……」
「……良いこと思いついたっス。今度からせんぱいって呼んでいいっスか!?」
「はい?」
何言ってんだこの子は?
あれだ、いろいろ混乱してて変な事言ってる感じだ。
彼女の黒歴史を作る前に退散しよう。
「お願いするっス!」
「いやぁ、ちょっとなぁ」
「ダメっスか……?」
「うーん……保留で!んじゃ落ちます!お疲れ様でーす!」
「あっ!待ってくださいッス!せんぱい!」
「お疲れ様でーす!」
ブツリと通話を切る。
仲良くするのはいいけど、深入りしすぎると変に噂されかねないからなぁ。
それに相手が私だとはやて丸さんが可哀想だし、これでいいじゃろ。
あー……とりあえず、おっさんに謝罪の電話して、それからサキさんに通話するかぁ。今日はちょっと、疲れたなぁ……。
紅雹夜 個人勢 男性Vtuber
インタビュー配信開始前の登録者数 334人。
インタビュー配信終了後の登録者数 3500人
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