おばあちゃんロボット

文野志暢

おばあちゃんロボット

ある日、おばあちゃんは星になったとお父さんから聞いた。


わたしは、お父さんとお母さんと一緒に、おじいちゃんのところへ行くことになった。


おじいちゃんとおばあちゃんの家に行くと、おじいちゃんは背中を丸めて椅子に座っていて、おばあちゃん側で目を閉じている。


お母さんは、おじいちゃんとおばあちゃんを見て床にしゃがんで泣いてしまった。


お父さんは、そんなお母さんを支えている。


わたしは、ただただお母さんとお父さんの隣で立っていた。


ねえ、星になったってどういうこと?


ねえ、おばあちゃんはそこで寝ているよ?


お父さん、お母さん、おじいちゃん、ねえ、どうしたの?


どうしておばあちゃんが星になってしまったの?


おばあちゃんとお別れをする日。たくさんの人がおばあちゃんに会いに来てくれた。



おばあちゃんが星になってから、おじいちゃんとお母さんは元気がない。


早く元気になってほしいな。


わたしができることはなんだろう。


それからというもの、わたしは、どうやったらおじいちゃんとお母さんを元気になるかを考えた。


最初に思いついたのはおばあちゃんとまた会えるようにすること。


でも、おばあちゃんは星になったから、もう会えないって知っている。


そんなのいやだ。



あっそうだ。おばあちゃんそっくりなロボットを作れば元気になるかも。


そうしてわたしは、おばあちゃんロボットを作るのに必要なものを紙に書いた。



★必要なもの★


おばあちゃんのお洋服


おばあちゃんの髪留め


おばあちゃんが好きなおかしの箱(身体)


おばあちゃんの毛糸(髪の毛)


おばあちゃんが好きな歌(声)


おばあちゃんが好きなものたくさん



これでおばあちゃんロボットができるはず。


わたしは、書いた紙を大事に宝箱にいれた。



今日は、お母さんと一緒におじいちゃんとおばあちゃんの家に行ける日。


わたしは忘れずに紙を持って向かった。


おじいちゃんとおばあちゃんの家に着くと、お母さんはお部屋で遊んでいていいよと言う。


わたしはおばあちゃんロボットを作るために必要なものを探した。


まずはおばあちゃんの好きなおかしの箱。


おかしが残っていた箱もあったけど、わたしはおかしを別の袋にいれて箱だけ持っていく。


おばあちゃんとよく食べたおかし。おやつの時間じゃないから今は食べることができないからあとで食べよう。


次は毛糸。おばあちゃんは毛糸を編むのが好きだ。


星になってもまだやっているのかな?


毛糸置き場を見ると、編んでいる途中のものもあった。


わたしは編み途中のものはそのままにして、新しい毛糸玉を何個か持っていく。


次はおばあちゃんのお洋服と髪留め。


おばあちゃんの部屋は、お母さんとおじいちゃんがいる部屋に近いから、わたしは見つからないよう探す。


部屋の中をみると、なんだか前に見たときより、おばあちゃんの物が少なったような気がした。


わたしは、棚の中からおばあちゃんのお洋服と髪留めを持っていく。


後はおばあちゃんの好きな歌とたくさんのおばあちゃんの好きなもの。


たしか、必要なものを集めていた部屋にあったはず。



わたしは部屋の中を探した。


おばあちゃんの部屋でも思ったけど、やっぱりおばあちゃんの物が少なくなっている。


どうして、おばあちゃんの物が減っているの?


わたしは考えてみたけれど、どうしてかわからなかった。


部屋中探したことで、おばあちゃんの好きなものと曲は見つけることができた。



さっそくわたしは、見つけたものでおばあちゃんロボットを作る。


おかしの箱を組み立ててからだを作って。


おばあちゃんの好きなものをからだにいれて。


おばあちゃんの毛糸を髪の毛にして。


おばあちゃんの好きな曲をお顔にいれて。


それから、おばあちゃんのお洋服を着せて、毛糸の髪の毛に髪留めをつける。


おばあちゃんの好きなもので作った、おばあちゃんロボットの出来上がり。



だけど、わたしはおばあちゃんロボットを見ていると、からだがきゅうっと小さくなった気がして、泣きたくなった。


どうして泣きたくなるの?


おばあちゃんロボットを、おじいちゃんとお母さんに早く見せたいのに動けないよ。


おばあちゃんロボットを見ているとおばあちゃんを思い出す。


優しかったおばあちゃん。


わたしが家に行くとやさしい顔で待っていてくれる。


それから、おかしを食べたり、遊んだり、お話したりした。


おばあちゃんはもう星になってしまったから、もうできない。


いろいろ考えていたら、わたしはぽろぽろ、ぽろぽろと涙がでて、大きな声でおばあちゃんを呼ぶ。


おばあちゃん


おばあちゃん


おばあちゃん


星になんかならないでよ


わたしが、とっても大きな声で、おばあちゃんを呼んだから、おじいちゃんとお母さんが部屋にやってきた。



お母さんが、どうしたの?と聞いているのに、わたしはおばあちゃんを呼びつづける。


おじいちゃんが、泣かないでおくれ、と言っているのに、わたしは泣くのをやめられなかった。


せっかくおばあちゃんロボットを見せて、元気になってもらいたいのに、わたしが泣いていたら元気になれないよ。



わたしは、がんばって、おじいちゃんとお母さんにおばあちゃんロボットことを話すけれど、とても小さい声しかでてこない。


それでも、おじいちゃんもお母さんも聞いてくれた。


わたしはもっと言いたいことが、たくさんあるのにおばあちゃんに会いたくなって話せなくなってしまう。


そしたら、お母さんがわたしをぎゅっとだきしめてくれた。


お母さんの顔を近くで見ると、わたしと同じように泣いていた。


それから、ずっとおばあちゃんロボットはおじいちゃんとおばあちゃんの家にいた。



今日もわたしは、おじいちゃんとおばあちゃんの家に行き、おじいちゃんと、おばあちゃん、それから、おばあちゃんロボットとお話しをする。

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