第10話 ぷりんジュース、再び

 ぷりんの話を大体聞き終えた真宙は頭の中が無駄情報で満たされ、くらくらしながら無意識の内にテーブルに置いてあったピンクの液体に手を伸ばした。それから何の躊躇もなく一気に喉に流し込んだ後で、自分のやらかした行為に気付く。


「ぶっ!」


 またまずいジュースを飲んでしまったと反射的に飲み込むのをやめようとした時、舌が別の味覚情報を脳に送る。その瞬間に甘い味が口の中に広がって、更に真宙は混乱した。


「嘘? 甘い?」

「どう? さっきママさんの持ってきたジュースを飲んで調整したんだ」

「そんな事が出来るの?」

「うん」


 驚く真宙に満足げなぷりん。感心して次に続く言葉を失ってしまった真宙は、ただ目の前の不思議少女をまじまじと見つめる事しか出来なかった。


「そんなに見つめられると照れちゃうよ」

「あ、ごめん……」

「でさ、真宙も元気になった事だし、この街を案内してよ!」

「え……っ?」


 退屈だったからこの世界行きを希望したぷりんの事、展開的にそうなるのは当然の帰結だった。突然のこのリクエストに、心の準備の出来ていなかった真宙はまたしても言葉を見失う。

 ただ、期待に満ちた眼差しでじいっと見つめられてそれを拒否出来るほど、真宙のメンタルを強くはなかったのだった。

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